しのぶれど 5





「何、コレ...」

は呆然と呟いた。

「よーす。!」

朝練を終わらせたバスケ部3年が掲示板を見ている生徒たちの中のを見つけて声を掛ける。

「何だよ、掲示板に何があるんだ?」

振り向かないの見ているそれを興味津々に見た藤真が

「うっそ...」

呆然と呟く。

長身4人組はと藤真の頭越しにその掲示板を見た。

そこには夜中の公園で藤真がと並んでベンチに座っており、優しく頭に触れている写真があった。

見た感じ、良い雰囲気だったりするものだから

「ええ〜?!」

「オイオイ、何だコレ??」

それぞれ俄かに信じられない様子で声を出していた。

俄かに信じられないのは一緒に居た花形も同じだったが、なんだか凄く苛立った。

振り返ったの目に入ったのは、冷たい目をした花形だった。

ドクン、と心臓が跳ねた。

はそのまま走り去っていく。

「おい、!」

走り去ったの背中に向かって藤真が名前を呼ぶが、どんどん遠ざかっていく。

振り返って見上げた先の花形の表情を見て、藤真は内心舌打ちをした。

「一志、鞄頼む」

そう言って長谷川に鞄を託しての後を追った。


「ったく、バスケ部を、舐めんなよ...」

息を切らして藤真が口にする。

左腕はの腕を掴んでいた。

は項垂れて涙を零していた。

「ちょ、頼むから泣くなよ。俺が泣かせたみたいじゃないか...」

心底困ったような情けない声を出して藤真がそういい、は頷くが涙が止まる気配は一向に訪れない。

別に授業をサボるのは構わないが、部活はそうも行かない。

辺りを見渡して、

「あそこか」

と呟いての手を引いた。


部室棟の2階。バスケ部の部室。

乱雑に色々散らばっているが、それは見慣れた光景だから藤真は気にしない。

部室の中央にある長椅子にを座らせた。

「ほら」

此処に来る前に自販機で購入したジュースを渡す。

フルフルと首を振るに無理矢理それを握らせる。

「いいから、飲めよ。少しは落ち着くと思うぞ」

藤真はに向かい合うように部室の床に腰を下ろした。

「昨日の、だったな」

「何で、あんなこと...」

悲壮感の詰まった声でそう言う。

「さあ、な。俺たちとは感覚が違うやつなんだろう。でも、まずいな...」

藤真の言葉にが僅かに顔を上げる。

「アイツ。花形。完全に誤解しているよな」

藤真の言葉に、

「もういいよ。なかったことにしたんだし。あ、でも藤真が良くないか...チームメイトだもんね。あの写真であたしと藤真が付き合ってたって花形が勘違いしたら、付き合ってたクセに知らない振りして相談に乗りやがってとかって話になるよね」

がポツリと呟いた。

「や、俺のほうこそ別にどうってことないよ。心配すんな」

そう言って頭をかく。

とにかく、花形の誤解だけは解かないと、それだけしか頭の中に浮かばない。具体的な打開策は一切頭に浮かんでこない。

ふと、窓の外から声が聞こえる。

もそれに気付いたのか、顔を上げて窓の外を見ていた。

「ああ、意外と外の話し声が聞こえるんだよ」

「あ、うん。昨日藤真部活中に部室に来たでしょう?誰かに声を掛けてた」

「え、何で知ってんだ?」

「昨日呼び出された場所が此処の裏だったから」

の言葉に、藤真は思い出す。

そういえば、昨日部室に花形を呼びに来たときに花形は驚いていなかったか?

部室棟は古いため、ドアノブを回せば音が鳴るし、誰かが入ってくることも予想がついそうなものなのに。

ということは、別のことに気を取られていた...?

何に?

の告白されているその現実に。

!」

「ん?」

「お前、昨日断ったって言ったよな?」

「うん」

「俺の声が聞こえるまでに?」

「えーと...たぶん。そんなタイミングだったと思う」

「何て断った?」

「好きな人が居るから」

「で?名前は?」

「言うわけないでしょう?」

藤真は項垂れた。

ああ、そうだよな。花形が好きって理由で断ったのを聞いたら昨日のあんな話にならないよな...

そう思いながら「あ、そう」と一言返事した。

全く以って何の進展もない...









桜風
08.10.1


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