| 長谷川からの伝言を聞いた藤真はその場で深く息を吐いた。 そして、その日の部活が始まる前、花形に頭を下げた。 表面上は和解したような雰囲気だったが、練習中も時々何処となく不協和音が鳴り響いている、そんな感じを受ける。 もうすぐインターハイ予選が始まる。 そんな中こんな状態では、緒戦突破も危うい。そう危惧する声も藤真の耳には届いている。 「だからって、どうすれば良いんだよ。俺っていつもどおりだよな?」 部室で長谷川から確認された藤真が自棄気味にそう言った。 「まあ、藤真は。あの時謝ってほぼいつもどおりになったけど...花形はやっぱり変だな」 「ったく、俺にどうしろってんだよ。もう!」 癇癪を起こしてノートを投げる。 窓の外を見下ろしていた長谷川が「花形だ」と呟く。 藤真も窓際に寄って膝をついて姿勢を低くし、窓の外を覗いた。 長谷川の言ったとおり、花形が女子と話をしている。 「ここって告白のメッカなのか?」 「俺は知らん」 藤真の問いに長谷川はあっさり答えた。 そして、聞き耳を立てる藤真を見て眉間に皺を寄せる。 「趣味が悪いぞ」 「いいじゃないか。此処で告白するってコトはそう言うことなの!」 そう言って藤真は外の気配に集中した。 藤真たちの予想通り、告白のシーンが始まる。 ったく、もこんな感じにしっかり告白すりゃこじれなかったのに... 今更言ってもどうしようもないことを思いながら聞いていると 「ごめん」 と花形の声があった。 花形がこの告白を受ければ案外丸く収まるんじゃないか?、とちょっとだけ思っていた藤真だったが、花形の言葉を聞いて少し安心した。 に「もう大丈夫」と言われたから心配している素振りは見せないようにしても、それでも心配は心配だ。 ここで花形に彼女が出来たらはまた悲しい気持ちになる。また泣いてしまうかもしれない。 「でも、さんは藤真君の彼女でしょう?」 花形の想い人をだと思ったらしい彼女がそう聞いてくる。 「違う!それは大いなる誤解で、は花形のコトが好きで好きで仕方ないんだ!!」 と声を大にして訂正したかったが、長谷川に口を抑えられてついでに頭も抑えられているために抗議ができない。 「?ああ、は藤真と付き合ってるんだろうな」 自分の口を押さえている長谷川の手をのけて 「だから、違うっつってんだろ!」 と低く唸るも、下の2人には聞こえない。 「何で、突然?」 花形が聞くと彼女は慌てて 「あ、ううん。ごめんね」 と言った。 「いや、俺の方こそ。応えられなくて...」 それ以上追求せずに花形も口を開く。 そうして2人の話は終わったらしい。 藤真は長谷川の拘束を逃れて窓際の壁に背を凭れて溜息を吐く。 「何だって、ああも堂々と勘違いできるんだ?」 「...花形も意外と思い込みが激しいからな」 溜息混じりに長谷川が答える。 「みたいだなぁ...」 藤真も呟いた。 「たぶん、お前らの不協和音ってこれが原因なんだろう?あのときの掲示板以来変だからな」 「だから、俺は元通りになっただろう?」 「まだ違和感あるけどな。なあ、花形はが好きなんだろう?」 長谷川の言葉に、 「あ。やっぱ一志もそう思う?でもなー、花形自身がそれに気付いていないんだよな。そんな中で他人がどうこう言っても頑なに拒みそうだしな...」 「とにかく、いい加減どうにかしないと。緒戦突破すら危ういってのはシャレにならないぞ?」 「分かってる!」 そう言ったものの、藤真に妙案があるわけでもなく、藤真は乱暴に頭を掻いた。 「なあ、一志」 「何だ?」 「俺、ダメダメだな...」 「俺たちと同じ年なんだから仕方ないだろう」 苦笑しながら長谷川が言う。 「早くオトナになりたい」 「急ぐこともないだろう?藤真は十分やってるよ」 「でも、部員をまとめれないキャプテンだぜ?」 と言って溜息を吐く藤真を困ったなーと思いながら長谷川は無言でその様子を見守った。 |
桜風
08.10.15
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