| 昼休憩に、よたよたとくたびれたペンギンのように歩く女子生徒の背中を見掛けた牧はそちらに向かった。 「ったく、キッシーも容赦ないよね。こんなか弱い乙女にこの荷物」 そう零している声が聞こえた。 苦笑して「大丈夫か」と彼女が抱えている荷物の半分以上を持ってやる。 「ありがとう」と彼女は言い、自分を見て3秒固まった後に「ございます」と付け足した。 「何処に持っていくんだ?」 気にせずに牧が言うと彼女は「あ、えと。教材室に返しに行くところです」と答えた。 彼女、と並んで教材室を目指す。 「ところで、何でがひとりでこれだけの荷物を持ってたんだ?」 日直なら男子とセットだろう。 「あ、名指しされたんです。地理のキッシー..岸本先生って牧さんは授業受けたことあります?」 「いや、俺は違ったな。そうか、名指しか。友達は手伝ってくれなかったのか?」 それは当然抱くであろう疑問である。 しかしは困ったように笑った。 「わたしがモタモタしてたから置いてかれて。ついでに岸本先生に捕まったんです」 なるほど、と牧は頷く。 「ということは、は学食か?」 「はい。でも、諦めました。売れ残りのコッペパンを買って教室で食べます」 一番人気の無い購買で売られているパンの名前を口にして力なく笑う後輩に「そうか」と牧は相槌を打った。 少し無言で歩いていると「あれ?!」とが声を上げる。 「どうした?」 「牧さん、お昼ご飯は??」 「俺もコッペパンだな」と牧が答えては「ぎゃー!」と叫ぶ。 ついでに手に荷物を持っていたことを忘れていたのか、それをどさっと落とした。 「おい、どうした?」 「ま、牧さんもコッペパン。こ、ここ..こんなの手伝っていただかなくても良いので、今からでも走ればきっと学食の食券売り切れまでに間に合います。行ってください!!」 蒼くなっていうの勢いに押されそうになった牧だが「別に気にしなくて良いぞ」と言う。 「気にします。気になります!!うぎゃーーー」 意外と賑やかだな... 目の前で蒼い顔で百面相をする後輩を見ながら何だか感心してしまう。 「良いから、ほら。行くぞ」 「いえ、それくらい頑張って持てます。任せてください。こう見えてわたし、バスケ部のマネージャーなんです」 知ってるよ、と心の中で突っ込みつつ牧は教材室へ足を向けた。 「ちょ、ま..、牧さん!学食は逆ですよー!」 自分の落とした荷物を回収しながらが声を掛ける。 牧はちらと振り返ったが気にせずにそのまま足を進めて最終的には教材室にそれらを収めた。 少し待っているとやっぱりよたよたとくたびれたペンギンみたいに歩いてくるが追いついてきた。 「牧さん...」 「ほら、それも貸せ」 そう言っての持っている荷物を受け取って教材室に収める。 「あ、あの。ほんとに何と言って良いやら...」 の言葉に苦笑して「くたびれたペンギンみたいなのが歩いていたらやっぱり気になるだろう、普通」と言う。 「くたびれたペンギン?!」 頓狂な声を上げるを笑い、「ほら、購買に行くぞ」と声を掛ける。 「あ、はい!」 はそう返事をして牧の隣に立つ。 「しかし、神と一緒にいないと違和感があるな」 「ああ、神とは今年のクラス替えで別になったんですよ。お隣だから体育とかの合同授業では一緒になりますけど」 幼馴染だと聞いている神と。この2人は本当に感心するほど仲が良い。しかし、基本的に何故か苗字で呼び合っている。 偶に、神が彼女のことを名前で呼んでいることを目にするが、が神のことを名前で呼んだ姿を見たことがない。 「そうだったのか」 「はい。わたしもちょっと神とクラスが分かれたのは辛いですけど」 の言葉に牧は複雑な表情をした。 しかし、彼女は牧の顔を見ずに前を向いて話をしているので彼の表情を見ることがなかった。 |
桜風
11.4.27
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