シタゴコロ 3






今年のインターハイ予選が始まった。

新入生もそれなりに脱落したものの、活きが良いのが残ったので今年は賑やかだ。

ひとりで10人分くらい騒ぐ1年の清田信長。

しかし、彼は1年で海南のスタメンをもぎ取った才能溢れる将来が楽しみな選手でもある。

先輩!」

たったか駆けてくる清田を待った。

傍までやってきた清田は「チャッス!」と挨拶をする。

「元気だねぇ...」

の家には大型犬がいる。名を『小十郎』という。

似てる。凄く似てる...

初めて清田を見たときにそう思った。

そして、その日の部活の休憩時に神がそばまでやってきた「清田って言ったっけ?似てるよね、小十郎に」と苦笑しながら言った。

そうか、やっぱり自分の気のせいではないのだなと安心したものだ。


「で、どうしたの?」

「あ。さっき先輩が買いだしに行くって聞いたんで」と言う。

確かに、今から買出しだ。

「うん、そうだね」

「付き合いましょうか?」と言われて笑った。

「練習しなさい。1年でスタメンって凄いけど、あっという間に攫われちゃうよ」

はそう言って正門へと向かっていく。

席を外すことは顧問に話をしているので問題ない。

休憩時間のために用意しているドリンクも他の1年に話をしているので心配する必要が無い。

しかし、まあ。

去年も思ったがやっぱりもうひとりマネージャーがいると助かるだろうな、と溜息を吐いた。

こうやって買出しに行く。

それが終わって戻ってきたら大量のボトル。

それを洗って、タオルも洗って...

考えれば考えるほど、この買い物に行く時間のロスが勿体無いと思ってしまうのだ。

学校近所の雑貨屋に向かった。

雑貨屋と言ってもオシャレなものではなく、日用品が並んでいるほんとに雑多なものを売っている雑貨屋だ。

海南大附属高校のバスケ部は代々そこにお世話になっている。

がマネージャーに就任したとき、そこでマネージャーの心得を習った。

最初は「何だ、これ...」と思ったが、実はそこの元看板娘はバスケ部のマネージャーだったらしく、本当に詳しくてためになった。

荷物を持ってえっちらおっちら歩いて体育館へと戻る。

ああ、これってもしかしてまたくたびれたペンギンかしら?

そう思っては苦笑した。

牧に迷惑をかけてしまったことは反省すべきであろうが、しかし、その後も一緒にコッペパンを食べたのだ。

至福であった。


「締まりのない顔してるぞ」

体育館に戻ってくると、既に全体練習が終わっていた。

「あれ?」

「監督、今日は用事があったから全体練習は早めに終わったんだよ」

神が答える。

そんなこと、言ってたかな...?

首を傾げているに「監督、に言い忘れてたって言ってたから聞いてなかったんじゃない?」と神が心を読んだかのように的を得た答えを口にした。

「あ、そうなんだ?」

心の中を読まれても気にしないようで、はあっさり納得し、本日の買い出しをそこに置いた。

「それ、持とうか?」

「助かるわー」

ニコニコと笑ってが言う。

「少しは遠慮したら?」と笑いながら神が言って、の持って帰った買い物袋を運ぶ。


「ねえ、くたびれたペンギンってどう思う?」

一緒に帰っていると突然にそういわれた。

いつも一緒に帰っているわけではない。マネージャーの仕事で遅くまで残るときには神の自主練の終わりを待つこともある。

今回は、終わりを待ったパターンだ。

突然のの言葉に神は「は?」と返す。

何だ、突然。

「ね、どう思う?」

繰り返し言われた。これは答えないと永遠ループだ。

「まあ、哀れなんじゃない?」

神の言葉に「何で!可愛いとかないの?!」とが必死に言う。

「いや、だって。くたびれたペンギンだろう?貧相に見えるんじゃないのかな?」

ずーんと沈んだを見てやっとその質問をした意図が分かった。

「牧さんに言われたの?」

「うん。この間地理のキッシーにえらい荷物を持たされたときに。手伝ってもらったの」

「ふーん...まあ、手伝ってもらえたなら良いじゃん」

と神が言うが「貧相かー。哀れかー...」とは肩を落としている。

しかし、どうせ明日の朝にはけろっとしているだろう。

これはの長所だと思う。只管沈み続けることをしない。

本人曰く「飽きる」だそうだ。

「俺、のそういうところ好きだよ」

不意に神に言われて「ありがとう。わたしも宗一郎のどこかは好きよ」と返されて笑う。

本当、彼女は変わらない。









桜風
11.5.4


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