シタゴコロ 6





予選リーグの初戦の湘北戦。

正直、何度かひやりとした。

しかし、結果を見れば我が海南大附属高校の勝利だった。

神の言ったとおり、シューターとしての三井は何だか神を髣髴とさせたが、フォームは絶対に神の方が良いとは確信した。

だって、神には『きれい』って言えるけど、三井には言えない。


2戦目は陵南だった。

事実上の決勝とまで言われた試合を制したのはやはり海南大附属高校。

しかし、この試合は本当に接戦だった。

延長戦にまでもつれ込んだのだ。

寿命が数年くらい縮まったかもしれない。

帰り道、が呟いた。

「やっぱ、仙道君は天才なの?」

「『天才』って言葉。俺はあまり好きじゃないね」

神がそういった。

確かに、神は努力の人だ。が尊敬するところである。

「そうだねぇ。きっと努力をしているんだね」

「そこまでは言わないけどね」

「どっちよ」

半眼になってが抗議する。

「さあ?どっちでも良いだろう」

まあ、確かにどっちでもいい。

海南は本日の試合で全国への出場権をほぼ手にした。

次の武里戦で負ければこれまた別の話となる。しかし、武里に悪いが、負けると言う不安が全く無い。

湘北と陵南は試合の数日前からドキドキしたが、今は既に広島で行われるインターハイへの移動やらホテルやらの手配が気になって仕方ない。


が気にしている通り、武里には快勝した。

そして、インターハイ予選大会が終了し、ベスト5とMVPが発表された。

ベスト5の中に神が入っており、さらに、MVPは牧だった。

脳内では踊る。

幼馴染と好きな人が評価されるというのは嬉しいものだ。

しかし、神奈川は全国へは2校いけるのだが、もう1校はあの翔陽を下した湘北高校だった。

監督を欠いての最後の試合に、彼らは勝った。

手に汗を握るとはこのことだ。

も一応神のお陰もあってルールは覚えた。全部かどうかは分からないが、大抵のホイッスルの理由が分かるようにはなった。

これまではぽかんとすること多々あったから随分と成長した。

遠征の準備をしていると監督に呼ばれた。

どうしたのだろう、と思って職員室に行く。

「湘北のマネージャーがお前に相談したいそうだ」

「何をですか?」

「あそこは全国初めてだろう?一応、そのエントリーやら色々な手続きだ」

なるほど、と納得した。

「監督が療養中だからな、マネージャーも忙しいみたいだ。明日、こちらに来るそうだ」

「分かりました。じゃあ、その時間ちょっと抜けますね」

がそう言い、監督が頷いた。


「監督の用事、何だったんだ?」

体育館に戻ると牧に聞かれた。

「まさか、赤点?!」と神が不安げに言う。

「死ぬ気で勉強してるから大丈夫」と神に返して「湘北のマネージャーさんが明日来るみたいなんです」と牧に答える。

「湘北のマネージャー?」

「全国が初めてだから確認したいことがあるみたいで」と言うと彼らも納得した。

「そういえば、安西先生は大丈夫なんだろうか...」

「そうですね、心配ですね...」

牧の言葉にも頷く。


翌日、湘北のマネージャーがやってきた。

同じ年のはずなのに、この落ち着き様...

は軽くへこんだ。

これくらい大人っぽかったら...

「あの...?」

「あ、はい。えっと書類の関係で良いんですよね?」

「ええ」と答える彼女はとてもてきぱきとしていて...

「ありがとう、助かったわ」

一通り彼女の質問に答えたは何とか終わったと胸を撫で下ろした。

自分を頼ってきたのに、それに応えられないとか避けたかったから彼女の疑問が全部自分の分かることで良かった。

「いいえ。お互い、全国でも頑張りましょうね」

が言うと「ええ」と彼女は微笑む。

いいなぁ...

その笑顔も大人っぽい。

握手を交わして彼女と別れた。


体育館に戻ってはボトルを洗う。

洗いながら漏れる溜息は止め処ない。

先輩、どうしたんスか?」

清田が寄ってきた。

「うん。ちょっとへこんだの」

「湘北のマネージャーに何か言われたんスか?」

「ううん、凄く良い人だった。わたしよりも全然しっかりしてるし、落ち着いてるし...」

先輩もしっかりしてますし、落ち着いて..る...スよ?」

後半はちょっと清田も疑問符がつくらしい。何とか最後まで言ったが自信が無いようだ。

「いい子だね、清田くん」

いい子いい子と頭を撫でながらまた溜息を吐いた。









桜風
11.5.25


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