シタゴコロ 7





全国大会ではやはり湘北高校が大番狂わせをした。

あの秋田の山王高校を下したのだ。

しかし、その次の試合でボロ負け。

おそらく、山王高校で死力を尽くしてしまい、次の試合への力が残っていなかったのだろう。

そして、海南は準優勝だ。

惜しい試合だった。悔しかった。

当分この悔しさは残るな、とは意外と冷静に分析をした。

しかし、自分以上に悔しいのはきっと選手達彼らだ。

神奈川常勝と言っても全国は中々難しいものだ。


インターハイから帰って数日休養があったが、その期間中には宿題を済ませるべく図書館に通った。

家にいたらテレビだとか雑誌だとか色々と誘惑するものが多いのだ。

だから、それらを断つために家を出る。

そして、昼間に頑張って分からなかったところがあれば夜に神に聞きに行く。

神もそれは了承してくれたので、厚意に甘えようと思っている。

じゃないか」と睨み殺さんばかりに問題集と格闘している最中に頭の上から声が降ってきた。

顔を上げると牧がいる。

は目を丸くする。咄嗟に口を押さえたので図書館で非難のまなざしを向けられることは無かった。

「ここ、空いてるのか?」

「はい、たぶん...」

の前の席の椅子を引きながら牧が言い、が頷いた。

自分が此処に座ってから目の前に誰かが座った様子は無い。

「宿題か?」

「はい。牧さんは、もしかしてもう終わったんですか?」

「多少は残ってるが、目処はついたな」

やっぱり凄いなぁ...

は溜息を吐く。

自分なんて、この問題集とにらめっこを始めて数時間経つがまだ半分も終わっていない。

「数学か?」

「ええ。頭が沸騰しそうです」

泣き言とは珍しいな、と思いながら牧がの手元の問題集を覗き込む。

懐かしい数式が並んでいる。

そしての手元のノート。白い。

「教えてやろうか?」

「へ?!」

「此処だと声が出せないから、近くのファミレスでどうだ?」

逡巡の後、「お願いします」とは頭を下げた。

自分の残念な頭をさらすのはちょっと恥ずかしいが、宿題が終わらないのは拙い。


場所を移動して牧に数学を教えてもらう。

さすがだ、とは唸る。

分かりやすい。

こんな残念な頭でも凄く分かりやすい。

アレだけ呪文にしか見えなかった問題が意味のあるものに見えてきた。

これは、今日は神を頼らなくても良いかも...

「どうだ?」

「凄く分かりやすいです!」

満面の笑みで言うに牧も笑顔になる。

「そんなに喜んでもらえると教えがいもあるな。は数学が苦手なのか?」

牧にそう聞かれて思わず「得意な教科なんてありません」と言いかけてその言葉は飲んだ。

「数学は..得意ではないですね」

「そうか。分かると面白いんだがな、パズルみたいで」

「それ、神も言ってます。神は意地悪な問題が大好きだって。解いた時の爽快感が何とも言えないって笑ってました」

の言葉に牧は少し複雑な表情を浮かべた。

「そうか。神も...よく、神に教えてもらってるのか?」

「ええ、神はもう『幼馴染として生まれたのが運の尽き』だと諦めてるみたいです」

笑いながらが言う。

「そうか」と牧は相槌を打ったが、やはり複雑そうな表情を浮かべていた。









桜風
11.6.1


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