シタゴコロ 9





国体が終われば今度は冬の選抜だ。

「何か、ずっと大会があるよね」

「そういうもんだろう、部活って」

そうだよな、そうだったよなー...

去年も同じことを思った。

しかし、まあ。

今年は国体の関係が混成だったお陰で少しだけ楽だった。他の学校の人たちが手伝ってくれたし。

湘北のマネージャーと友達になれたし。

「そういえば、国体のときにも聞いたけど。翔陽の藤真さんたちみんな残ったんだってね」

が言うと「ああ、そうみたいだな。ま、あそこの人たちなら受験がうんたらかんたらなんて無いだろうし」と神が言う。

「けど、推薦で進学したらバスケやめられないって事でしょう?」

が言うと

「既にやめられないから残ってるんだろう?」

と返されて「そっか」と納得した。

辞めたかったら今がその辞め時なんだろう。

そうならなかったと言うことは、まだ当分バスケを続けていきたいと考えているということで...

「神も?」とが聞くと「今のところはね」と笑う。

いいなぁ、打ち込める何かがあって。

「ウチの、残ってる先輩達だってそうだろうね」

「けど、ウチは伝統的に最後まで残ってるよね?」

そう聞いたことがある。

「それは、藤真さんたちと同じく、受験でうんたらかんたらが無いからじゃないかな?宮さんくらいでしょう。ウチで大学のバスケ推薦を蹴った人は」

小柄な宮益はこの海南大附属高校では歴史に残るのではないかという変わり者だ。

バスケ初心者で、最後まで残った選手。

3年まで続けてもユニフォームがもらえるとは限らないのが海南大附属高校バスケ部だが、彼は続けて、最終的にユニフォームを手にした。

しかし、彼は夏の大会が終わって一足先に引退した。

行きたい大学があるのだとか。

「宮益さんが行きたい大学って雲の上なんだろうねぇ...」

体育館の天井を見上げてが言う。

「まあ、の場合は大抵がそうなんだろう?」と神が言い、「否定できないのが辛い...」とはうな垂れた。

「ま、勉強だけが人生じゃないってね」

「勉強もバスケもできる人が言ってもちっとも説得力無いですー」

膨れっ面でが言う。

「けど、はこの学校の授業についていけてるんだから、きっといける大学は見つかるよ」

「行きたい大学かどうかは別にして、でしょ?」

「たぶんね」

そんな会話をしていると「集合!」という牧の声が聞こえ、神は駆けていった。


そういえば、自分はこの先の進路はどうするんだろう...


全く考えていなかった。

何せ、此処にきたのは牧に会いたくて、という不純極まりない動機だったし。

しかも、大学も追いかけるかと聞かれたら、さすがにもうムリだと思う。

牧がどの大学に行くかなんて知らないが、それでもやっぱり雲の上になりそうだ。

「わたし、何がしたいのかな...」

ポツリと呟いた言葉が自分の頭に響く。

本当、何がしたいのか...

とりあえず、牧が引退してもバスケ部のマネージャーは最後まで続ける。

最後と言っても、夏の大会まで。

その後、猛勉強..はムリだろう。

今回みたいな目標がなければ絶対に出来ない。目の前に人参をぶら下げても、その人参が絶対に美味しいってわかっていないとたぶんあのときみたいに走れない。



「やあ、。久しぶりだね」

ある日の昼休憩、宮益に会った。

「宮益さん!」

嬉しくては駆け寄る。

いつも見ていた顔がひとつなくなるのは寂しいものだ。

「部活、みんな頑張ってるみたいだね」

「宮益さんは、最近どうなんですか?」

「勉強ばかりだよ。ま、自分で選んだからね。バスケ部に入部したことも、推薦を受けないことも」

笑いながらそう言う。

途端にが沈む。

「ど、どうしたの。。元気ないな?」

「ちょっと、自分の中身がいかに空虚かということに最近気付いてしまって...」

「空虚?部活に打ち込んでるだろう?勉強が苦手って言ってる割には..そこまで悪くなかったみたいだし」

「勉強は神のお陰です」とが返し、「失礼します。宮益さん、受験頑張ってください...」とトボトボその場を離れていった。

元気印だと思っていたが暗く沈んでいる。

「何かあったのかな...」

おそらく、自分に出来ることはない宮益は肩を落として歩く後輩の背中を見送った。









桜風
11.6.15


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