| とうとう3年が引退することになった。 冬の選抜の最後まで残った彼ら。 彼らの背中を見て後輩たちもがむしゃらに頑張った。 キャプテンは神が指名された。 それは既に分かっていたことなので誰も異を唱えない。 前キャプテンの牧が挨拶をし、新キャプテンの神が挨拶をする。 これで引継ぎが終了した。 後輩たちに別れを惜しまれている中、牧は周囲を見渡した。 ウチの元気印のもうひとりがいない。 清田と並べられていると知ったら彼女はそれなりに衝撃を受けるかもしれないが「ま、仕方ないよね」と結局笑って受け入れそうだ。 しかし、その笑顔が見えない。 「たぶん、体育館裏ですよ」 不意にそう言ってきたのは神だ。 彼はよくこちらの考えを読んだかのように的確なことを言ってくる。 実はエスパーなのではないかと思ったことがこれまでに何度もあるほどに的確なのだ。 「そうか」と言って牧は体育館裏に向かった。 神の言ったとおり彼女は体育館裏にいた。 こんなに寒いのに。 「」 声を掛けられて振り返ったの顔を見て牧は驚く。 「どうした?どこか痛いのか??」 は涙を流していた。 「違います」 少し慌てたが牧はハンカチを差し出した。 「とりあえず、涙を拭いたらどうだ?」 「あ、ごめんなさい」とそっとそれを受け取った。 「あの、洗って返します」 「気にするな」 苦笑して牧はそう返した。 「ありがとうな、」 牧の言葉には首を傾げた。 「お前がマネージャーで良かった」 そんな牧の言葉にの涙がまた流れ出す。 何か拙いことでも言っただろうか... 内心慌てる牧の前では首を横に振った。 「違います」 「何がだ?」 「わたし、良いマネージャーじゃなかったんです」 「そうか?凄く頑張ってくれたじゃないか」 やはり彼女はそれを是としないらしく首を横に振る。 牧は困った。 「わたし、」と彼女が話し出す。 「わたし、牧さんに会いたくて海南に入ったんです」 「は?」 思いもよらない言葉に牧は声を漏らした。 「どういうことだ?」 彼女はこの学校に入りたいと思った試合、そして、ここに入るまでのプロセスと入ってからのことを話した。 神だけが知っている彼女の本当の気持ちだ。 「だから、わたし。動機が不純で、そうやって褒めてもらえることなんてないんです。下心ありありのマネージャーでごめんなさい」 頭を下げる。 牧は頭を掻いた。困ったな、と。 「動機がどうであれ、がマネージャーとして奔走してくれたのは事実だし、俺にとっては良いマネージャーだったよ」 「そう言ってもらえると、凄く楽になります」 ぐすっとはまたべそをかく。 「は意外と泣き虫だったんだな」 そう言って牧は彼女の髪を梳く。 「なあ、。下心なら俺にもあるぞ」 きょとんと自分を見上げるに苦笑した。涙の跡で酷い顔だ。 「どこかで聞いたことがあるんだがな?下心があるから恋なんだと」 ぽかんとした顔は変わらない。 「だから、俺はに下心がある」 きょとんとしていた顔が段々赤くなり、「ええーーー!!」と言いながらその場を熊みたいにグルグルと回り始めた。 どういう反応だ、これ... 牧はちょっと困った。困ったけど、彼女のこの素直な性格も好ましい。 「あの、えっと。わたし、この学校には物凄い執念があったから入れたのであって、実は先ほどお話したとおりあまり出来のよろしくない頭をしているのですが...その頭で考えた結果...」 そこまで言って牧を見上げてパクパクと口を動かす。 「俺は、が好きだってことだ。答えは合ってたか?」 牧の言葉にはぺたりと崩れた。 「お、おい。?!」 「ビックリしました。わたし、正解だった...」 呆然と呟くにやはり牧は苦笑した。 これからちょっと手がかかるかもな、と楽しくなる。 「ほら、立ち上がれ」 牧が差し出した手に、は恐る恐る手を重ねる。 グイと力強く引き上げられてそのまますっぽり牧の胸に納まってしまった。 「とりあえず、あまり神と仲良くするな」 「へ?神とは幼馴染ですよ?」 「俺が面白くない」 真顔で言われてはニヘラと笑う。 「はーい」 「ああ、ホントに手がかかる...」 「神さん?どうかしたんスか?」 「ううん、何でもない。さ、練習でも始めようか」 神が周囲に声をかけて練習を始める。 それから少しして戻ってきたは呆れるくらい幸せな顔をしていて、その顔を見た神は苦笑を漏らした。 |
桜風
11.6.29
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