| 午後の授業は大き目の講義室だった。 はいつも一番前の席で受講する。机を広く使えるのだ。 (何でみんな後ろなんだろう...) はいつも不思議に思っていた。 前に居る方が、講義の内容が分かりやすい気がする。少なくとも、聞き逃しは少なくなると思う。 白板に書かれる字だって、人によっては物凄く小さくて、後ろからは到底書き写せないものだってある。 ちなみに、良く一緒に居ることが多い同期には良くノートをコピーさせてもらいたいと言われる。 やだな、と思いつつ仕方ないので了解しているのだがやはり何だかモヤモヤする。 「不機嫌だな」 背後から声を掛けられた。 振り返ると花形が苦笑している。 「寄ってくれ」 言われては椅子をひとつずれた。 花形も前のほうが良いと思っている人で、一緒の授業を受けるときには自然と隣に座ることになる。 「何で分かったの?」 「俺を誰だと思ってるんだよ」 花形がどこか誇らしげに言う。 「花形透様」 が言うと 「が俺に『様』をつけると、どこか恐怖心を煽られるな。というか、何か悪いものでも食べたか?」 と花形は真顔で言った。 「なによ、失礼ね。お昼は学食よ」 つんとして言うと花形は「わるかった」と笑う。 「あのね、」と先ほどの話をしようと思ったら教授が入ってきた。 「後で」 「ああ」 の言葉に花形は頷き、講義に集中した。 「で?さっきの」 授業が終わると花形が話を促してきた。 も花形も今日の授業はこれがお終いだった。 「うん、あのね」 そこまで言ってふと我に返る。 友人の自分が不愉快になったのだ。親友の花形のほうがよっぽど嫌な気分になるだろう。 「ごめん、何でもない」 「気持ち悪いから話せって。物凄く焦らされた挙句に何でもないと言われる方の身にもなれ」 花形が溜息混じりに言う。 「気分を害したらごめんね」 そう前置きをしては先ほどの昼食時の話をした。 「ふーん」 花形が声を漏らす。 「やな気分になった、よね?」 覗うようにが言う。 「まあ、多少は」 「ごめん」 「や...てか、そうか...」 花形はなにやら納得している。 「透?」 何に納得しているのか分からず、が花形の名を呼んで話を促すが 「や、何でもない」 と返された。 「なによー。さっきは私に気持ち悪いから、って言ったのに」 「言ったなぁ」 さらりと同意した花形に膨れっ面を向けると 「ははっ、不細工だぞ」 と笑顔で言われ、席を立った花形はの頭をガシガシと撫でて「じゃあな」と講義室を後にした。 も仕方なく講義室を後にする。 この後、特に用事もないしどこか寄り道して帰ろうかと考えながら学校を後にした。 いつもはまっすぐ駅ヘ向かうが、今日はちょっと寄り道をしようと思った。 大抵まっすぐ駅に向かっていたので今回の寄り道はちょっとした探検だ。 大学は住宅街の中にある。 歩いているとボールが地面を跳ねるような音がした。活気のある声も聞こえる。 自然との足はその声の方へと向かったのだった。 |
桜風
12.8.22
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