| が足を向けた先には、思ったとおり公園があり、バスケをしている人の姿もあった。 しかし、予想外だったのは、 「藤真くん?!」 そこに藤真がいて、プレイしていたことだった。 公園の外からその様子を眺めていたが、の足は自然と公園の中に向かい、そして、バスケットゴールが良く見えるベンチに腰をおろしていた。 藤真はの姿に気付くことなく、近所の中学生か高校生かを相手に3on3をしていた。 藤真のチームもこの近所の中学生か高校生だろう。 おそらく、藤真が彼らに混ぜてもらったのだ。 公園で遊ぶレベルよりも遥かに高い藤真のバスケは彼らを翻弄した。 だが、彼らも藤真のプレイに刺激されるところがあるらしく、一生懸命くらいついている。 (懐かしいな...) 引退してから全然ボールに触っていない。部屋に飾りっぱなしで、たぶん、埃を被っている。 部屋の掃除をするたびにきちんと磨いているが、埃なんてものはすぐに被ってしまうものだ。 使っているなら別なのだが... 「ナイシュッ!」 思わず声を出す。 シュートを決めた藤真が驚いたように振り返り、バツが悪そうに笑った。 彼らに声をかけて藤真がベンチにやってきた。 「何だ、。いたのかよ」 そう言って人一人分の距離をおいてベンチに座る。 藤真なりの気遣いだ。 男性恐怖症を完璧に克服したわけではないにはありがたい気遣いで、ほっとする。 慣れなくては、と頑張っているのだが中々にきついのだ。 「うん。今日はちょっと探検してみたいなって思ったから」 はそう言って藤真にハンカチを渡す。 「いいよ」 そう言って断った藤真はTシャツで汗を拭う。 たしかに、こんなハンカチで藤真の汗を拭うのは難しいだろう。 「タオル、持ってないの?」 「んー、まあ。俺もと一緒。散歩してたらあいつらがバスケしてたから、半ば強引に仲間に入れてもらった」 「透からサークルに誘ったって聞いてるけど、バスケがしたいならそこでやっても良いんじゃない?」 が問うと 「サークルに入ったら、やらなきゃいけないって感じになるからさ。休みづらいだろう?」 と言う。 藤真の言葉には首を傾げる。 「藤真くんって、何でバスケ推薦を蹴ったの?」 藤真は目を丸くして困ったように笑った。 「言っただろう?お婿さん候補になるためだって」 はぐっと詰まった。 そんな彼女を見て藤真は苦笑を零す。 「ま、正直なところ。バスケで食ってくのにちょっと抵抗があった..ていうか」 「神奈川の双璧の片方が...」 が零すとまた笑う。 「まあ、なー。確かに、バスケ推薦で大学入って、好きなバスケして実業団チーム持ってる会社に就職してまたバスケして...って人生もこれまた結構贅沢でそそられるんだけど」 そう言ってベンチの背もたれに体重をかけてズルッと体をずらして空を見上げる。 空はすっかり茜色だ。 「たぶん、それってちょっと俺自身が後悔しそうだったし」 「えっと。それって、さっきの..お、お婿さん候補がっていう..のと関係ある?」 『お婿さん候補』だなんて、自分で言いづらい単語である。 しかし、気になったので聞いてみた。 「んー、それとは別の話かな?」 藤真は、が困っているからそういった。そして、本心でもある。 「俺がバスケ推薦ですげー学校に行って、強いチームを持っている会社に就職して..って殆どの人が思い浮かべる俺の未来じゃないかな?」 は頷く。 凄く想像しやすい。 「それが、イヤだったってのもある」 「天邪鬼ねぇ」 「ははっ、今更」 藤真は笑った。 「なあ、は最近バスケしてるか?最近ってか、高校卒業してから」 「ううん。引退して以降、部屋のバスケットボールはオブジェになっちゃった」 「たまに、無償にバスケしたくなんね?」 を見ながら藤真が言う。 「なる」 そう言ってが笑う。 「なら、今度学校帰りにここで1on1しないか?」 藤真の言葉には膨れる。 「完敗じゃない!やる前から分かってること言わないでよ」 「やー、わかんないぞー。俺だって1年のブランクがある」 「さっきのプレイを見てて、私が勝てそうだなーなんて全く思えませんでした」 少し強い口調で言うに藤真は笑う。 (あ...) 「?」 胸を押さえている彼女の顔は空の茜色を移したように赤い。 「ん?ううん。何だったっけ?」 「...や、帰ろうか」 藤真はそう言ってベンチから立ち上がり、もそれに続いた。 |
桜風
12.8.29
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