| ある日、大学の構内を歩いていると「?」と声を掛けられて振り返る。 彼女は目を丸くした。 「やっぱ、。覚えてるか、俺。幼稚園のときに...」 彼が何かを言っているが、は駆け出していた。 「透!」 彼が次の時間に取っている講義がある教室のドアを開けて名前を呼んだ。 「どうした、」 彼は同じ学部の女の子と話をしていたが、名前を呼ばれて顔を上げた。 相手の女の子は凄く不愉快そうに顔を顰めている。 「あ、ううん。何でもない、よ。ごめんね」 そう言っては踵を返した。 「え、おい。?!」 彼女の背中を追おうとした花形を、「花形くん」と少し責めるような声音で今しがた話をしていた女子が呼ぶ。 「あ、ああ。うん。悪い...」 そういえば、こっちも途中だった。 闇雲に走っていると「!」と手をつかまれた。 「どうした?」 先ほど、花形からメールが入っていた。 『を探してくれ』 ただ、それだけ。 何かあったに違いないと思った。 というか、何故花形本人が探さないのだろうか... 「ふ、藤真くん...」 今にも泣きそうな表情のに非常に戸惑ったが、それでもこの手を離せず藤真は構内のカフェに向かった。 テラスの隅っこなら彼女も静かに落ち着けるかと思い、彼女にアイスミルクティーを買って渡した。 「ごめんね」 しょんぼりしていうに「いいよ」と藤真は笑って見せた。 正直、心の中はそれどころではない。 (花形ぁー!) 詳細を何も聞いていないからどうしていいのか分からない。 探せといわれて探した。凄く心配だから、一緒に居る。 今の藤真の状況はそれだけだった。 「なんか、あった?」 聞かなきゃ始まらない。 腹を括って藤真が問う。 「う..ん」 何とか彼女は頷いた。 「俺が、聞いても大丈夫?花形、呼び出すか?」 花形の名前を出した途端、彼女は慌てて首を振った。 「わかった。あいつは呼ばない。だったら、話してくれないか?」 遠慮がちに藤真が言う。 「幼稚園のときに、同じクラスだった男の子が..この学校に居たの」 (『幼稚園のときに同じクラスだった男の子』といわれてもかなりざっくりして...あっ!) の言葉を鸚鵡返しに心の中で繰り返してふと思い当たった人物がある。 の男性恐怖症の、諸悪の根源。 (ミミズのやつだ...!) 藤真は、の顔を覗きこむ。 目が合ったはビクリと反応した。 やっと克服しかけていたのに... 藤真は吐きたい溜息を飲んで、とりあえずからもう少し距離を置いた。 「ごめん...」 が謝る。 「いいよ。あのさ、前に花形から聞いたことがあるんだけど。今、言ってたのって...」 (『ミミズ』はどう考えても禁句だよな) 「の、その..男性恐怖症の原因になったっていう...?」 は驚いたように藤真を見つめた。 (ビンゴ...!) 「何..で?」 「高校んときに、花形から聞いたから」 「そう..なんだ...」 そのままは黙り込んでしまった。 (困ったなぁ...) 藤真は心底困る。 とりあえず、既に授業の始まっている時間であり、途中で教室に入室するよりはサボった方がマシだと思ってが落ち着くまで一緒に居ることにした。 |
桜風
12.9.5
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