スローテンポ 6





「まあ、ここまで大ごとになるとは思わなかったけどな」

遠い目をして花形言う。

それなりにギャラリーが集まっていた。

「ねえ、藤真くん大丈夫..かな?」

「まあ、勝負強かったからな。ウチのエース様は」

苦笑して花形が返した。



あの後、バスケで勝負をするという話になった。ある意味健全な勝負方法だ。

その日は藤真がバッシュを持ってきていなかったので勝負は翌日の花形の所属しているサークルが体育館を借りている時間を使って1on1勝負となった。

相手はバスケ留学をしていた長身の、体格から見ておそらくパワー自慢の選手だ。

それに対して、藤真はどちらかといえばテクニカルな選手だ。

しかも、バスケは此処最近していないと言う。

が心配するのも無理はない。

ちなみに、審判は、花形の所属するサークルの先輩がしてくれる。

一番公平な立場だろうということで彼に頼んでみたら快諾してくれたのだ。かなり面白がってくれている。

ちなみに、この勝負で負けたほうはの前にそのツラを見せない、ということになっていた。


「てなわけで、テメーは二度とにそのツラ見せんなよ!あと、翔陽バスケ部舐めんな!!」

両手と両膝をついている男を指差して藤真が言う。

彼は自分の敗北が信じられないのか、ブツブツとなにか呟いていた。

「凄い...」

花形の隣に立っているが呟いた。

この試合は藤真の圧勝だった。

(バスケ留学をしたっていうのは本当だったのかな?)

「たぶん、本当だろうけどな」

が考えていたことに答えるように花形が言う。

「え?」

「たぶん、だけどな」

「そう..なの?」

「動きは悪くなかった。ただ、ウチのエース様がそれより上だったってことさ。パワーだけじゃ藤真は倒せない」

少しだけ誇らしげに花形が言う。

「でも、藤真くんってブランクあるって言ってたのに」

が言うと花形は苦笑した。

「バスケバカがバスケをせずにいられると思うか?1年も」

「誰がバカだ!」

ペシンと尻を叩かれ、花形は顔を顰めた。

「ったく、本人が居ないところで『バカ』とは何だよ」

「褒め言葉だよ」

「あの、藤真くん...」

が藤真を見上げると彼はにこりと微笑んで

「もう大丈夫だからな」

と優しく頭を撫でた。

「うん」と頷いてふとは気付く。

(藤真くんは怖くない...)

じっと見上げると藤真は居心地が悪そうに視線を逸らした。

そして、彼は審判をしてくれたバスケサークルのメンバーや、代表に挨拶に行く。

貴重な練習時間を貰ったのだ。

そこで藤真はなにやら勧誘にあっていたが、申し訳なさそうに断っていた。

「何でやらないんだろう、バスケ...」

「勉強が大変なんだと」

心持ち、声を潜めて花形が教えてくれた。

まだ一般教科ではあるが、元々大学のレベルが高い。

高校時代の藤真の成績だったら、ここに進学するといえば教師陣は大反対しただろう。

実際、大反対された。

顧問にバスケ推薦を受けてくれとも言われたが、それも断ってがむしゃらに頑張って何とか滑り込んだのだ。

「透は」

「ん?」

「藤真くんが、バスケをやめてるのってどう思う?」

「勿体ないけど、価値観なんて人それぞれだし。まあ、半年後にはサークルに入ってるかもな」

苦笑して言った。

「何で?」

「あいつはバスケバカだから」

「誰がバカだ!一度ならず二度までも!!」

今度は尻を蹴っ飛ばされた。









桜風
12.9.19


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