Sweet expression 7





2週間に1度のバスケ部差し入れの日がやって来た。

この日は何故か皆派手になる。前日に美容院へ行く子が多発している事にも呆れてしまうんだけど...


先日、牧たちに聞いた他の運動部の件は部会で話したけど、予算的な問題で却下ということで、今年度はそのスタンスを貫く事になった。

それはともかく。

部員たちの話し声の中に妙に何度も聞く名前があって驚く。

いや、これも予想していたけど。

「神くんって彼女いるのかな?」

「今のところそんな噂ないよ」

「他校とかは?」

「それも2年に聞いておいた。てか、アンタも狙ってんの!?」

まあまあ。根回しが利いています事。


休憩を知らせる牧の声が聞こえて皆我先にと体育館の中に入っていく。

一番最後に入って高頭先生にご挨拶。

「お、今日は軽羹か」

「ええ。お口に合えばいいのですが」

いつもどおりの社交辞令。

振り返ると神くんの周りにウチの部員数名が集っている。神くんは相変わらずの笑顔だったけどやっぱり少し困っているようだった。

おーい、他の人にも配りなよ...

まだ受け取ってない部員たちに配って歩いていると

先輩」

と背後から落ち着いた声が聞こえる。

「ああ、ごめんね。さっき、ウチの部員たちが」

声を掛けてきたのは神くんで、先ほどの部員たちの事を謝っておいた。

「ええ、まあ。大丈夫ですよ」

苦笑いを浮かべて神くんが答える。全然大丈夫でなかっただろうに...


神くんと会話をしながら、周囲を見渡す。ちゃんと全員に配ったのかな?

「俺、次はカップケーキがいいです」

不意に神くんがそう言う。

神くんを見上げるとドリンクを飲んでいた。

「ん?」

「2週間後、カップケーキがいいです」

もう一度繰り返す。

ああ、なるほど。

「ん、オッケ。助かるのよね、そうやってリクエストをもらえると。意外と男の子ってお菓子だったら何でもいいとかいう感じだし」

あたしがそう言うと

「まあ、腹に入れば、とかそういう感じなんだと思いますよ」

と神くんが答えた。

「だろうね。カップケーキか...ドライフルーツ入ってるのがいいんだよね?」

「はい」

「嫌いなものは?」

「ないです」

「んじゃ、まあ。作ってみるわ」

「楽しみです」と神くんが微笑んだ。


時計を見るとそろそろ時間だ。

「はい、みんな。そろそろ時間だからね!!」

部員たちに声を掛ける。

神くんも体育館の中の時計を見て「なんだ、もう時間か」と呟いていた。

「ねえ、神くん」

「はい」

「神くんって自転車通学だよね?家、遠いの?」

「近くはないですよ。自転車で40分くらい掛かります」

そうか、結構遠いな。

「どうしたんですか?」

「ウチの方向って神くんの家の逆?」

聞いてみると

「いえ、帰り道ですよ」

と返事があった。

「じゃあ、今日の帰り寄れる?この間約束したやつ。今日作ろうかなって思って」

そう言うと神くんはにこりと微笑んで「部活が終わったら電話します」と言った。

「リクエストは?」

「ゴマ団子がいいです」

「了解」

あたしが返事をしたところで「集合!」と牧の声が響く。慌てて体育館から撤収。

1度振り返ると神くんも振り返って微笑みながら会釈をする。

あたしもそれを返して調理室へと向かった。


ゴマ団子。

ゴマは家にあったし、団子の粉もある。後は、餡か...間に合うかな??

今日は片付けたら部活も終了。

急いで家に帰ってゴマ団子製作のために時間を取らないと。









桜風
09.1.14


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