| 予告どおり神くんは部活が終わって電話をくれた。 けど、思ったよりも遅くてビックリだ。 バスケ部ってこんなに遅くまで練習してたんだ... しかし、それはあたしの誤解で。 後日、牧に聞いたところによると部活自体はそこまで遅くないらしい。ただ、神くんはいつも残ってシュートを500本打って帰るとか。 凄いな... 家の前に着いた神くんから再び着信があった。 サンダルを履いてマンションの下まで降りると爽やかな笑顔の神くんが自転車を支えて立っている。 「すみません、遅くに」 「ううん。こっちこそ、疲れてるのに態々寄ってもらっちゃって」 そう言うと神くんは首を振りながら「いえ」と答えた。 ゴマ団子を渡すと「ありがとうございます」と受け取り「あ、出来立てだ」と呟いた。 確かに出来たて。それを入れている袋も熱を持っている。 自転車のサドルに跨って「じゃあ、失礼します」と言った神くんがペダルを踏もうとして、途中で止めた。 「そうえば、牧さんから聞きました?」 「何?」 「今度、ウチで練習試合があるんですよ」 「あ、聞いてない」 初耳だ。 「良かったら見に来てください」 にこりと微笑んで神くんがそう言う。 「そうだね」 あたしの返事はYesでもNoでもない。 それが不思議だったのか神くんは首を傾げたけど聞き返す事はなく、「じゃあ、失礼します」とさっきと同じ言葉を口にしてペダルを踏んだ。 遠ざかって行く神くんの背中を見えなくなるまで見送って家の中に入った。 「練習試合があるんだって?」 翌日、牧に聞いてみる。 「おう。誰から聞いたんだ?ああ、神か」 何故に納得した表情で言い当てる?! 「うん、神くん。何で知ってんの?」 「何となくだ。来るのか?」 「分かんない」 中学の頃、あたしは1度牧の試合を見に行った事がある。 その時、選手としてコートに立っていた牧が自分が今まで知っていた牧と違って見えて、それが何だかイヤでそれ以降バスケ部の試合は見に行ってない。 別に牧に恋をしているとかそういうのではなく、ただ、何かイヤだった。 たぶん、全然変わらない自分が置いてけぼりを食らった感じだったんだと思う。 牧も、いつしか誘っても来ないあたしに試合の話しはしなくなっていた。 「が来ればうちの部員たちも喜ぶぞ」 昔のことを思い出していたら牧がそうポツリと言う。 「そうかな?」 「そうだよ」 ふぅん...名前を知っている人の方が少ないのにな。 掃除時間、中庭を掃いていたら清田くんが跳ねながらやって来た。 「先輩。今度バスケ部が練習試合をするんですよ!」 嬉しそうにそう言う。凄く楽しみでたまらないように。 「うん、聞いてる」 「見に来てくださいよ!俺、スタメンで出れるかもしれないんですよ!!」 それは凄い。きっと凄いこと。スタメンはどんなチームでも5人しか居ないんだから。 「そうなんだ?」 「はい!ね、だから」 それから延々練習試合見に来てください攻撃を受けて、そして、そうお願いしている清田くんが子犬みたいに見えてきて思わず頷いてしまった。 「本当っスか!?俺、すげー頑張ります!ダンクも決めますから!!」 そう言って居なくなった。 あれ?あたし、試合見に来るんだ?いつあるのか誰も教えてくれていないんだけど... まあ、明日牧にでも聞いてみよう。 |
桜風
09.1.21
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