| 牧に試合の日時を聞けば少し驚いた顔をしたけど、笑った。 試合当日までに少しくらいバスケの事を勉強しておけよって。 練習試合の当日、何か差し入れを持って行ったほうが良いだろうと思ってサンドイッチを作った。 ただ、量的に少ないから試合が終わってまた3人と食べようって決めた。 体育館へ向かうと、うちの制服以外の沢山の制服姿の女の子たちが体育館の上のベランダに立っていた。 噂には聞いていたけど... 「先輩!」 あたしの名前を呼んで駆け寄ってきたのは清田くん。 「おお、ユニフォーム貰ってる」 ジャージを羽織っている下にはユニフォームが見えている。『10』という数字だった。 「スタメンです!」 「凄いじゃん」 清田くんと話していると神くんまでやって来た。 「牧さんと信長から聞いてましたけど。本当に来てくれたんですね」 にこりと穏やかに微笑む。 「うん。あ、神くんは6番だ」 「俺もスタメンですよ」 「それは牧から聞いてたから知ってる。シューティングガードとかって所なんだよね」 はっきり言って、勉強しておけと言われたものの全く勉強をしていない。 シューティングガードが何かってのは知らないけど、以前牧が言っていた。『シュートが上手い』らしい。 「そうです。沢山スリーポイント決めますから、見ててくださいね」 そんな会話をしていたらジャージを羽織った牧が「集合!」といつもの様に声を上げる。 「じゃあ、またあとで。先輩」 そう言って神くんは集合が掛かっているベンチに向かい、 「俺、ダンク決めますから!絶対に見逃さないでくださいよ!!」 清田くんは手をブンブンと振りながらベンチに走っていった。 あたしも観客席とされているベランダへと向かう。 あ、相手チームは何処で強いか弱いか聞くの忘れた... 試合開始のホイッスルが鳴り、目まぐるしくボールが行き交う。 清田くんにボールが渡ればドリブルをしてぴょーんと飛んでそのまま直接ゴールのリングにボールを叩き付けた。 「おお、ダンクだ」と誰かが言った。 なるほど、あれがダンクか... 神くんもボールをもらってゴールまで随分遠いのにそこからシュートを打つ。 きれいな弧を描いてそれは静かにあのリングの中を通った。 これは知ってる。スリーポイントシュート。どんなに遠くからでもあの白線の外からだったら3点しか入らない。 牧は牧で。あれだけ体が大きいのに、凄く早いドリブルで相手を抜いていって、そしてきちんとゴールを決める。 凄いと思った。カッコいいとかそういうのも思った。 けど、やっぱり寂しい。 清田くんはいつもあたしの周りを跳ねて人懐っこい笑顔を浮かべている彼ではなく、自称『No.1ルーキー』らしいけど、それに恥じることない凄いプレイの連続だ。 牧は、いつも面倒見のいいお兄ちゃん的なところがあって。 ノートを貸すと必ず何かスイーツを作るように言ってくる、意外と甘党な面も持っていて。そして、その顔に似合わず優しいくせに、今の牧は相手プレイヤーに容赦なく当たり、そして自分に当たってきた選手は勝手に吹っ飛んで。『貫禄』というものすら感じる。 そして、神くん。 いつも穏やかに笑みを浮かべて、凄く優しげな雰囲気を醸し出しているのに。ボールをもらえば彼の周りの空気は静謐さの中に凛と張り詰めたものをもつ。温かいいつもの穏やかさではなく、静かな闘志。そんなものを感じさせる。 「やっぱ、見るんじゃなかった」 何だか居た堪れなくなる。 笛が鳴って前半終了を知らせた。 神奈川の王者海南は、大差をつけて勝っていた。 |
桜風
09.1.28
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