Sweet heart 1





時々バスケ部仲良し3人組に混じってあたしも一緒にお弁当を食べる事になった。

先日の練習試合の差し入れは神くんがひっそり一人で全部食べたのだが。それは牧や清田くんに知られると騒がれそうだからナイショにしようと2人で約束をした。

それでも、ちょっと悪かったかな?と思ったから次の週にまたサンドイッチを作ってきて牧と神くんと清田くんも誘ってお弁当を一緒に食べたのがこのお昼の始まりだった。


結局、皆の頭の中には『あたしがいる=何か差し入れがある』となっているようで、その空気を肌で感じてしまうものだから、結局何か作るようになってしまう。

なんだか、黄色いくちばしを大きく開けたひな鳥にご飯を持ってくる親鳥の気分だ。ひな鳥が親鳥よりも明らかに、非常に大きいのが滑稽だ。


「そういえば。信長は昨日、進路調査票悩んでたけど、出せたのか?締め切りは今朝のHRだったんだろう?」

ごちそうさま、と手を合わせた神くんが既にデザートに手を伸ばしている清田くんに聞く。

「へ?ああ。まあ、1年なんで適当に書いて出しても怒られないと思って。一応、海南大って書きました。神さんは?」

ああ、そうか。この時期の進路希望は全学年で行われるんだったな...

「俺も、まだ思いつかないからそのまま海南大。先輩たちは?3年生も進路希望調査あったんですよね?」

そう言いながら本日のデザートに手が伸びて「いただきます」とあたしにひとこと言う。

「まあ、俺も今のところそのまま上がろうと思っているからな。は?」

「可愛いお嫁さん!」

実際そう書いた。

そう書いて早々に出したら担任に放課後呼び出されて更に反省文まで書かされた。

何故だろう??

神くんと清田くんはデザートを食べる手が止まって清田くんにいたってはあんぐりと口が開いている。

牧は慣れたもので、と言ってもクツクツと肩を震わせて笑っている。

「何で皆そんな反応するの?」

「あ、いえ。だって、学校の進路希望調査って。その..進学するか、そうでないかとか。そういうことを調査するものじゃないですか」

神くんが慌ててそう言う。

「でもまあ、は3年間それを書き続けたらしいぞ」

まだ笑いがおさまらない牧が神くんに言う。

神くんは元々大きな目をしているけど、更にそれを大きくして「本当ですか?」と聞いてきた。

「うん。進路じゃない?あれだよ。ステキな人が現れたらもう結婚できるんだよ?十分ありうる進路でしょう?」

だって、あたしは牧たちと違って結婚できる年齢なんだから。

「まあ、そうかもしれませんけど...」とぎこちなく言って神くんはデザートをゆっくり口に運ぶ。


「なあ、。前々から言いたかったんだがな」

やっと笑いがおさまった牧がデザートに手を伸ばしながら声を掛けてきた。

「なに?」

「進路希望を書くのに『お嫁さん』、なら分かる。だがな?『可愛い』というのはその人の持って生まれたものが必要となると思わないか?」

...えーと。つまり?

「牧はあたしに喧嘩を売ってる、と?」

確認するとフッと笑って、

「まあ、本人の自覚があるなら、まだマシだな」

と言った。

「ちょ、牧!それ食べたらダメだよ!!あたしに失礼なことを言う人にあげるデザートはありません!!」

手を伸ばしても牧には届かず。さらに牧は立ち上がってそのまま美味しく頂いている。

一生懸命手を伸ばしても牧の腕を掴んで体重を掛けてもその腕が下りてくることはなく、結局あたし特製のデザートは牧の胃袋に納まってしまった。

この身長差。この体格差。敵うはずがないか...


「美味かった。ごちそうさん」

ニヤリと笑って牧が言う。

「信じらんない!」

プイとそっぽを向けばその先には神くんがいて、苦笑いを浮かべていた。

まあ、彼の前でもうカッコつけようがないんだけど。どんどん変な先輩と化していっている様な...

そこのところは不本意だなぁ...

恥ずかしくて、さっきまで自分が座っていた場所に戻って残りのお弁当をつつく。

先輩ってお弁当も自分で作ってるんですか?」

デザートを食べ終わって再びごちそうさま、と手を合わせた神くんが聞いてきた。

「ん?そうよ。料理好きだしね」

そう答えて最後に取っておいた果物を口に含む。

「じゃあ、やっぱりいいお嫁さんになるんじゃないですか?」

神くんの言葉にあたしは嬉しくて、そして勝ち誇ったように牧を見た。

「ほーら!」

「俺は1度もが嫁に向いてないとは一言も言ってないぞ。『可愛い』がつく事の問題を提起したんだ」

「尚悪い!」

牧を指差して言ってもはははと笑うだけで謝罪の言葉がない。

まあ、今の牧が口にするとしたら全く心が篭っていない「悪い悪い」くらいだろうけど。










桜風
09.4.1


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