| 昨日から、というか。最近気になってることがある。 というか、別のことで今現在気になっていることもある。 「ねえ、牧」 「なんだ?」 顔を上げずに牧が声を返す。 「何で態々後ろを向いてあたしの机の上に雑誌を広げて読んでるの?」 バスケの雑誌のようだ。 「ん?は俺に用事があるんじゃないのか?」 眼鏡越しに見る牧の目はいつものそれと違って見える。 「まあ、あるけど...」 「じゃあ、早く言え」 ぺらっと雑誌を捲った。 ふと目に入ったのは目の前にいる牧、が雑誌の中に。 「え、何で牧がいるの?」 「そろそろ予選が始まるからな。この間取材に来てたよ。ほら」 とあたしの方に雑誌を回して見やすいようにしてくれた。 一通り読んでみて首を捻る。 「あのさ。牧って何でこんなにべた褒めなの?」 褒め言葉しか見つからない。何、これ。 あたしが書き足そうか?『性格結構悪い』とか、『いじめっ子』とか。 5秒くらい沈黙して「帝王、だからじゃないか?」と言った。 自分で言っちゃったよ、この人。 「それは、誰かに言われるから良いのであって、自分で言うと色々と寒いよ」 牧に的確なアドバイスをしておいた。あたしは優しいと思う。 牧は小さく舌打ちをした。聞こえたよー。 そして、再び雑誌に視線を落とす。 他の部員たちのことも書いてある。6割は牧のことを書いてあったけど、残りにはスタメンのことが。 ああ、神くんもかなり褒めてもらってるわ。神くんが褒められるのは、納得だな。いい子だもん。 「それ、やるよ」 牧が言う。 「いいの?」 「おう。俺は一通り目を通したし、家に帰ればお袋がまた買ってるだろうし。それ読んでバスケの勉強しとけ」 そう言って笑う。 「はーい」と返事をして雑誌を捲る。 「で、は何が言いたかったんだ?」 「ああ、そうそう」 言いかけたところで予鈴が鳴った。 牧は自分の机の中から次の授業の教科書類を取り出しつつも、あたしの方に意識を向けて言葉を待っている。 「あのさ、差し入れの話なんだけど」 「次は冷たいデザートがいいな。最近はだいぶ暑くなってきたし」 普通にリクエストされた。 「いや、そうじゃなくて。まだ大丈夫なの?差し入れして」 牧は驚いたように振り返る。 「大丈夫って何だ?」 「ほら、予選が始まるんでしょ?」と言って雑誌をポンポンと叩く。 「ああ、まあ」と牧が曖昧に頷く。 「邪魔になんない?何か、あたしらが差し入れに行く日って休憩時間長いんでしょ?」 牧は驚いたようで目を瞠る。 「誰が言ってたんだ?」 「清田くん。ほんの少し、2・3分くらいだけど長いって」 牧の眉間に皺が寄る。 清田くん、ごめん。牧、ちょっと怒ったかも... 「そんなに気になるなら、次の休憩時間にでも監督に聞いてみるか?俺も用事があるし」 牧の提案に頷く。 高頭先生って何だか近寄りがたいというか。 あの、時々親父ギャグ飛ばすんだけど、笑えないのよ。本当、リアクションに困るって言うか... 普通に調理部部長、バスケ部監督といった感じで話をするならいいけど。それって体育館でじゃないとそんな空気にならないのよね。 そう話していたら予鈴が鳴る。 時間通りに先生が入ってきて退屈な授業の始まりだ。 |
桜風
09.4.8
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