| 翌日、偶然教室へと向かう渡り廊下で清田君とであった。 昨日は何故か牧がいつも以上に厳しくて練習が大変だったとか。 ああ、うん。ごめん。 私が口を滑らせたからだろうな、と思いつつ「頑張ってね」と言ってみると「はい!」と大きな声で返事をされて驚いた。 部室として使っている調理室のゴミ箱を見れば、今日の掃除当番はサボったのか、まだゴミがあり、その中に生ゴミがあったものだから、捨てに行く事にした。 「手伝う?」と声を掛けてくれた友人に「大丈夫」と声を掛けてひとりダストボックスへと向かう。 途中からそれが重くてガコンガコンと引きずりながら向かう。体育館の裏が近道で、そこを通ろうとしたら女の子の声がして足を止めた。 告白かな?と思って回れ右をしたところで、丁度風向きが変わったのか、その女の子の声があたしの耳まで届き、『清田くん』という単語があったため、思わず足を止めてしまった。 しどろもどろに、何か言っていたけど、やはり聞こえる言葉は一部の単語で、『ごめん』とか『好きな人』とか。 ああ、バスケ部の伝統というか、伝説はちゃんと1年生の清田くんにも受け継がれているんだな、と感心する。 牧もあれで中々モテてたし。現在進行形で神くんもモテモテだ。 しかし、まあ。取り敢えず、今来た道を戻って、そしてダストボックスへ行こうと思ったら、「あれ、先輩」と背後から声がしてあたしは油の切れたブリキのオモチャの様なぎこちない動きで振り返った。 「もしかして、聞いてました?」 凄くバツが悪そうに清田くんが言う。 「すみません...」 素直に認めると苦笑いを浮かべて「わざとじゃないんでしょ。いいっスよ」と頭を掻きながらそう言う。 「ゴミ捨ては体育館裏を通ったほうが近いっスもんね」 「そうなんだけど...ホントにゴメンね?」 「持ちますよ」とあたしの言葉に返事をしないで清田くんがゴミ箱を持ってくれた。 「ありがとう」 「今日は部活ですか?」 バスケ部と違って週1回か2回しか部活動のない調理部。 「うん、部会があってね」 と返事をすると「そうだったんですか」と返事があり、「次のおやつは何ですか?」と聞かれた。 「冷菓。まだ具体的に決めてないんだけどね。牧が、冷たいのがいいって。体冷えるかな?」 「いや。大丈夫っスよ。そんなやわな鍛え方してません」 と清田くんは言ってニカッと笑う。 神くんの笑顔は月の光みたいだけど、清田くんは太陽みたいに笑う。 並んでダストボックスへ向かって、その間ずっと清田くんはゴミ箱を持ってくれていた。 あたしが重くて引きずっていたそれは清田くんが持つと軽そうに見えて、やっぱり男の子なんだな、と改めて思う。 「清田くんって、結構モテるんだね」 さっきのことを思い出して言ってみた。 清田くんは困ったように笑う。 「まあ、そう、ですかね?...聞こえてたんですか?」 「途切れ途切れで。漂う雰囲気で告白とかかなって思ったんだ。でも、何で断っちゃったの?」 「聞こえなかったんスか?」 「うん。『ごめん』とか『好きな人』とか。くらいしか」 そう答えると清田くんはポリポリと鼻の頭を掻いて 「好きな人がいるって断ったんスよ」 と教えてくれた。 清田くんが好きになる人ってどんな子だろう?凄く可愛らしくて、愛らしい子なんじゃないかな?守ってあげたくなるような。 そう思って聞こうと思ったけど、やめた。 人の大切な想いは軽々しく聞くものじゃない。 昔、牧にそう言われたことがある。 牧の言いつけを守るなんて、あたしは牧の娘か!? そう思うと可笑しかったけど、牧は間違った事は言わない。だから、あたしも牧の言葉を信頼してるし、悪い事じゃないと思う。 その話はそこでお終いにして、牧の鬼キャプテンぶりを聞きながらダストボックスへの道のりを盛り上がった。 |
桜風
09.4.22
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