Sweet love 2





バスケ部合宿の話を聞いた翌日の部会で議題にすると、意外な事に賛否両論だった。

結局人数としては、家で都合を聞く時間が欲しいという子たちもいたから来週のバスケ部への差し入れの部活動の日までに回答してもらう事にしてその日は解散した。


帰るべく学校の正門をくぐって外に出たら、バスケ部は外周に出ていたようで戻ってきたところだった。

部員たちから口々に挨拶されてたじたじのあたしに牧が苦笑する。

「どうだった?」

「保留。まだ予定とか親に聞いてみないとって子が居たしね」

「何の話っスか?」

興味津々に清田くんがあたしと牧を交互に見る。

「ん?合宿の話」

「合宿って、俺たちのですか?」

神くんも足を止めてその場に残っていたようで話に加わる。

「そう」

どういうことだろうと、神くんと清田くんの視線が牧に向いて説明を求めている。

「毎年、夏休みの後半にある合宿で地元の婦人会の方たちに世話になってたろう?」

「みたいですね」

と神くんが頷く。

「それが、今回は都合がつきそうにないから急遽調理部に頼もうという話が顧問の間に出てな。ただ、人数が人数だから、調理部の過半数の参加が見込まれたらっていうことで、今日の部会で話したらしい」

「それで、保留、ですか」

今度はあたしを見て神くんが聞いてくる。

「うん、そう。家族での行事があるならそっち優先にしちゃった方がいいもん」

先輩は予定はないんですか?」

「8月16日から1週間でしょ?残念な事に無いねぇ...牧の宿題写すくらいかな?これって合宿中にも出来るんでしょ?」

「まあ、一応。夜には勉強の時間も設けてあるからな。だが、夏休みも始まっていないのにもう写す気満々なのか?」

溜息混じりに牧が言う。

そりゃ勿論!

あたしは笑顔で深く頷いた。

牧は腰に手を当ててふかーいため息を吐いた後、「何か、凄く難しそうな美味いものでも作ってもらう事としよう」と呟いた。

任せなさい!何だって作るよ!!

「でさ、そろそろ戻んないと。牧たちだけになってるよ?」

あたしが言うと牧たちは振り返った。

「そのようだな」と牧が言って苦笑した。

「じゃあ、先輩。また」と神くん。

「気をつけて帰ってくださいよ」と清田くん。

「はいはい。皆も部活頑張ってね!」

小さくなっていく3人に手を振って見送った。


その翌週のバスケ部への差し入れ、今学期最終日。

清田くんのリクエストでババロア作って持っていく。

いつもの如く、高頭先生に挨拶をした。

「で、どうだ?」

「ギリギリ過半数です。お手伝いさせていただきますよ」

と言うと「それは助かる」と先生は頷いた。

「じゃあ、また日を改めてミーティングをしておこう。少しくらい形が見えているほうがやり易いだろう?」

「そうですね。夏休みに入るまでに、1度でいいので顔合わせも兼ねて会合がほしいですね。バスケ部の合宿なんてどんな感じか全く分かりませんし」

あたしが言うと「わかった。先生と話してみよう」と高頭先生が頷いた。


先輩!」

清田くんが跳ねながらやって来た。

「ごちそうさまでした!美味かったっス!!」

「清田くんのリクエストだもんね」

そう言いながら空になったカップを受け取る。

「合宿、どうなりました?」

「僭越ながら、調理部もお手伝いさせていただきます」

頭を下げると

「本当っスか!すげー嬉しいっス!!」

と清田くんが凄く嬉しそうに笑う。

そんなに喜んでもらえるとは思ってなかったから、ちょっとビックリしたけど、清田くんの笑顔につられて笑顔になる。

「今度バスケ部と会合持ってもらうんだ。あたしたち3年はともかく。2年・1年はバスケ部と面識ないしね。参加するからには一応、面識があった方がいいでしょ?」

そう言うと「なるほど...」と唸る。

そんな感心するような事を言ったかな?

「部長の顔だ」

不意に背後から声を掛けられて振り返ると、神くんが空になった容器を持っていた。

「あ、頂戴」とそれを受けとる。

「で、部長の顔って?」

「さっき、監督と話してたとき。先輩は部長の顔でしたよ。今、信長と話してるときもかな?」

小さく首を傾げながら神くんが言う。

前に神くんが言っていた。あたしもいろんな顔を持ってるって。

「かっこ良かった?」

「凄くしっかりした人のように見えました」

...ん?それってつまり

「いつもは抜けてそうな顔をしてるって事なのかな?」

ちょっと拗ねて聞くと

「違いますよ。そうだなー、いつもは『春』って感じですけど、部長の顔をしているときは『冬』って感じですかね?ほら、春はこう暖かくて、ほわほわした感じだけど、冬はピーンと張った空気って感じがありませんか?」

何だかきれいな喩えをされたような気がしてちょっと照れる。


そして、ふと目に入った時計を見ていつものように部員たちに声をかけたおいた。

「今学期はこれで差し入れ終了です。次は2学期だよ」

神くんと清田くんに言うと

「でも、その前に合宿があります」

「楽しみにしてます!」

それぞれ答える。

「精一杯サポートさせていただきます」

と敬礼をしたら2人ともそれを返してきて、それが可笑しくて3人で笑った。


あ、そろそろ牧が「集合!」って言うなと思ったから部員たちを急かして体育館から出た。

ウチの部員たちが出て行って丁度牧の声が体育館に響く。

部長の顔、か...

体育館の外から見る牧の顔はいつでも部長の顔だと、今何となく思った。









桜風
09.8.19


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