Sweet love 6





合宿当日。

俺はいつもよりも早く起きて張り切って集合場所の学校へと向かった。

しかし、集合時間よりもかなり前に着いたつもりなのに、結局沢山人が居て、そして、先輩は牧さんと一緒に居た。

メモ帳というかノートを取り出して2人で確認しあっている。

そんな中に割って入るなんて真似はできずに、俺は大人しくその様子を見ていた。


バスが来て、それに乗り込む。

目的地に向かう途中も、牧さんと先輩は隣同士で色々話していたし、途中で監督たちに呼ばれたら2人揃って監督と先生の座っている座席の横で話をしている。

でも、牧さんは急ブレーキ対策なのか、はたまた背が高いからか先輩の後ろから体をかぶせている。

左手は前のシートを、右手は監督のシートの背凭れに腕をついて、囲いを作り、その中に先輩は居て、バランスを取るためにか牧さんのジャージの袖を握っている。

山道を走るからかなり揺れるけど、そんな揺れにまったく動じない牧さんは流石だけどちょっと悔しい。

「そんな目で見るなよ」

声のトーンを落として外を見ながらとなりの窓際に座ってた神さんが声を掛けてきた。

「な、何のことっスか!?」

先輩を見ていたことがばれたのかと思って誤魔化したら溜息を吐かれた。

「バレバレだからな、信長」

呆れたように神さんがそう言う。


またもや誤魔化そうと口を開いたところで急ブレーキが掛かった。

お陰で俺は前の座席のシートにデコをぶつけ、更に舌も噛んだ。

先輩は!?

そう思って見てみると、牧さんが全く動じることなく、ただ、急ブレーキの反動で先輩はバランスを崩してしまったのか、牧さんに抱きとめられている。

でも、2人は照れるとかそういうのは全く無くて、そのまま監督たちと話を再開させたようだ。

「あれで付き合ってないってどうなんだ?」

不意に後ろから声がした。

「宮さん!?」

「あの2人は仲が良すぎるだろう。もう高3だぜ?」

もっと後ろに座っていたはずの武藤さんも呆れたように言う。

確かに、ただならない、周りが割って入れるように雰囲気ではない。

「まあ、お陰で牧君も色々楽が出来てるんじゃないの?」

そう言ったのは、調理部の3年の人。宮さんの隣で窓際に座っていた。

「確かにな。神は今も告白ラッシュが続いてるけど、牧はとの関係を誤解してそういうのが減ったもんな」

通路を挟んで隣に居た高砂さんまでそう言う。

というか、今居る3年が何でこの席を囲ってるんだ?!

「俺も減らないかなー...」

神さんの呟きが耳に入った武藤さんが「贅沢者め!」と神さんの頭を小突いた。

神さんは無言で頭を擦っていた。

「清田君。ポッキー食べる?」

調理部の先輩がそう声を掛けてきたから1本貰って、同じく声を掛けられた神さんも貰ってた。

ポリポリと何だか寂しいな、と思っていたら「、ポッキーいる?」とその先輩が声を掛けて「いるー」と言いながら先輩がやって来た。

「あ、仲良しだね」

俺と神さんが並んでいるのを見て先輩は笑顔でそう言い、俺の頭の上ですらりと伸びた白い腕を伸ばしてその3年の先輩からそれを受けとった。

「先生たち何て?」

「ああ、確認してただけ。あとで話すよ。牧はいる?」

そう言いながら先輩はさっき手にしたポッキーをカプリと咥えた。

「俺はいい」

前の方の自分の席に座ろうとしていた牧さんがそう答えて「そういえばそうか」と先輩が頷いた。

「え、牧さんは嫌いなんですか?」

「チョコがね、あんまり好きじゃないのよ。毎年2月はあたしが太ってる」

そう言って笑う。

2月といえばバレンタイン。全国の女の子たちからも届くといわれるそれは、牧さんも例外ではなく、寧ろ一番多いとか。

「意外っスね」

「そう?あたしはお菓子を食べる事の方があの顔に似合わないと思うよ?」

さすがっス、先輩。

牧さんをそんなさらりと否定できる人なんてそうそういないと思う。


「ああ、海が見えてきた」

窓の外を眺めていた神さんがそう呟く。山の中をずっと走っていたけど、また海に出たんだ。

「ホントだ、海だ」

調理部の先輩も楽しそうな声をして言う。

「じゃあ、あとちょっとか」

先輩はそう言って前方の自分の席へと向かった。

そこは、牧さんの隣。

先輩が当たり前のようにそこへ戻る後ろ姿がやけに印象的だった。









桜風
09.9.16


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