Sweet love 8





沢山の部員に囲まれている清田くんを発見して、あたしもその輪に入ってみることにした。

「あ、先輩。先輩は酒、強いんスか?」

と清田くんの隣に座るとすぐに聞かれた。

「ううん、弱い」

「本当すか?」

と疑わしそうな冗談めかした目で清田くんが聞いてくる。

「ホント。2回くらい家で飲んだけど、結局気がついたら朝だったって落ち付きよ」

いつも目が覚めると空が白んでいた。

ついでに、側には「まだ飲んでるの?」と聞きたくなるさんが必ず居た。

「清田くんは?」

聞き返してみた。

「俺、スか?いや、飲んだ事ないんで。あ、でも強いと思います。親父が凄く強いし、姉ちゃんもザルだって言ってたから」

「あれ?清田くんってお姉ちゃんが居るの?」

「はい!すっげー意地が悪いんスけど。一応、ひとり」

憎々しげに顔を顰めて清田くんが言う。

先輩は、一人っ子ですよね?」

聞かれて頷きかける。

確かに、あたしは一人っ子。けど、

「まあ、一緒に育ったって意味でのきょうだいなら居るよ」

と言うと首を傾げる。

「あそこの黒いの」

牧を指差して言うと「ああ、なるほど」と清田くんが頷いた。


「そういえば、清田くんも今回が最初だよね。合宿1日目はどう?」

「このゴールデンルーキー清田にかかれば、こんな合宿、余裕っす!」

と自信満々に親指を立てて答えたけど、

「嘘吐け。途中でへばりかけて牧さんに怒られてただろうが」

とバスケ部の誰かに言われて

「ちょ、待ってください。何でその事言うんすか!!」

と清田くんは慌てて彼の口を塞ぐ。

「い、今のなし!」

「もう聞いちゃったよ」

そう言って笑うと「ああああーー!!」と頭を抱えていた。

楽しい子だな。


少しお酒の空気に酔ってしまい、外の空気を吸いたくなって部屋を出た。

建物から外に出て側のベンチに腰掛ける。

先輩、みっけ!」

そう言って駆けて来るのは清田くん。

「どうしたんすか?突然居なくなったから心配で探したんスよ?」

そう言ってすとんと隣に座った。

「うん、あの部屋の空気がさ。アルコール、充満してた感じしない?」

「そうっスか?」

腕組みをして首を捻る清田くん。

「あたしは何となくそう感じて。で、外の空気を吸いたいなって」

「なぁんだ、水臭いっすね」

ベンチの上に足を乗せて膝を立てて体育座りをした清田くんが呟く。

「ん?」

「誘ってくださいよ。一緒に出て行ったのに」

拗ねたように言う清田くんが少しだけ可愛い。

「ごめんね。楽しそうに飲んでたからさ」

と答えると

先輩が居ないと、あんま楽しくないっす」

やっぱり拗ねたように口を尖らせて呟く。

困ったなぁ...やっぱりちょっと可愛いぞ?

「ごめん、ごめん」と返事をして空を見上げると月が出ていた。

周囲に街灯が少ないこの土地で見る月はかなりはっきり見えて、いつも目にするそれよりも大きいように感じる。


...お、重い。

右肩が重くなり、首を巡らせると至近距離に清田くんの顔があって驚いたけど、その表情はあどけなく、規則正しい寝息をたてている。

「全然強くないじゃない」

小さく噴出してしまった。

清田くんの顔はアルコールのお陰で赤く染まっており、そして静かに寝ている。

そういえば、清田くんがこんなに静かなのって初めてのような気がする。

しかし、清田くんがあたしに体重を預けて眠ってしまっているので動く事ができない。


仕方ないな。

折角だから、至近距離で清田くんを観察しながら起きるのを待つことにしよう。

起きたとき、どんな反応をするかな?

取り敢えず、平謝りしそうだなってそう思うとなんだか楽しい。










桜風
10.1.6


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