Sweet love 9





あの後、俺は寝てしまったようで。

目を覚ますと何だかいい匂いだなって思って顔を上げると至近距離に先輩の顔があって。

「あ、起きた?」

と言った先輩の声がこれまた今までにないくらい近くて思わず飛びのいた。

全然良く分からないこの状況。

けど、俺が先輩に体重を預けて寝ていたってのだけは分かって。

「すみません!!」

頭を下げるとなんだか少し気持ち悪い。

「あ、やっぱり謝った」

先輩は楽しそうにそう言う。

顔を上げると先輩は笑っていて

「清田くん、キミもお酒が弱い人同盟に加入しなさい」

と言われた。

ああ、俺ってば自分では気付かなかったけど、酔っ払ってて、そして先輩を見つけて安心して寝たんだ。


先輩が立ち上がる。

「部屋に帰ろうよ。もう解散してるかもしれないし」

そういわれた。

「はい!」と返事をして先輩と並んで歩く。

「あの、肩...」

俺が凭れていたから凝ったんじゃないかと思って聞くと

「ああ、うん。凝っちゃった」

と明るく言って笑われた。

「すんません!」

「いいよー。清田くんの寝顔激写できたし」

と言って携帯を軽く振る。

「え...?」

「待ち受けにしておこうかと思って。可愛いよー」

「や、ダメっす!やめてくださいよ!!」

そう言うと一層面白うそうに笑って、「嘘だよ」と言う。

「へ?」

「ウソだよ。写真は撮ってない。眺めてたけど」

イタズラっぽく笑って先輩は跳ねるように歩く。

「ちょ、もう!」

子供のように伸びやかな性格をしていると思う。

正直、牧さんと同じ年とか思えないってのが先輩の印象だ。

部屋に帰ると屍累々...

先輩はこの部屋に戻らずに途中で別れて自分の部屋に帰っていった。

俺も部屋に帰ろう...



翌日、夕飯を食べ終わって皆が勉強会をしているときに俺はこっそり抜け出して体育館へと向かった。

何となく、まだボールを触っていたかった。

見つかったら怒られるんだろうなって思いながらも体育館に電気をつけて、そしてシュート練習。

「こらー!」

ガラ、と体育館のドアが開いた途端そんな声を掛けられた。

ビクッと体が震えて思わずボールを落としてしまう。

振り返ると凄く満足そうな笑顔を浮かべている先輩。

「ビックリした?」

「もの凄く...」

心臓が止まるかと思った...

「勉強しなくて良いの?」

そう言いながら先輩は体育館の中へと入ってくる。

先輩こそ」

「あたしは、牧がいるから大丈夫だよ」

それは『牧のノートを写すから大丈夫だよ』という意味で言ったのは知ってる。けど、なんだかズキリと胸が痛んだ。

「そう、っすね」

さっき落としてしまったボールを拾いながら相槌を打つ。

「ねえ、ダンクしてみて」

突然のリクエスト。

「いいっすよ」

センターラインからドリブルで助走をつけてダンクをした。

目を輝かせて先輩はパチパチと手を叩きながら「すごーい!」と賛辞をくれる。

「凄いね。清田くんって」

なんだか悪い気がしない。

先輩は、バスケ得意なんスか?」

「ぜーんぜん」

首を左右に振りながらそう言う。

「シュートとか全然ダメだし。神くん凄いよね。あんな遠くからスポッて輪っかの中に入れるんだから」

またしても胸が痛くなる。

「今度神くんに教えてもらったら入るようになるかな?」

「お、俺が!」

思わず声が出た。

「俺が教えてあげますよ!」

先輩はきょとんと首を傾げて、やがて笑う。

「ホント?そうだね、ゴールデンルーキーの清田くんに教えてもらおっかな?」

そう言ってすぐ側までやってきた。

あ、あれ?

「宜しくお願いします」

え、今からの話だったのか?!

「あ、はい」

「えーと、そうですね。まずは」とか説明しながらありえないくらい緊張している自分に呆れる。

何だ、俺!

目の前の先輩はキラキラと目を輝かせて俺の説明を聞いている。

神さんに先輩を取られるのがイヤで、思わず口から出た言葉だと言うのに、それがすぐに実現して。

そうなったらそうなったで動揺している自分がいて。

本当に何なんだろう、俺。

先輩は俺が説明したようにレイアップを練習し始めた。

暫くして、

「ねえ、清田くん」

と声を掛けられる。

「はい」

「疲れた」

苦笑いを浮かべてそう言う。

アレからあんまり時間が経ってないのに、と思ったけど。文化系一直線の先輩にはこれくらいの運動でもキツイのかも知れない。

俺自身、そろそろ切り上げないといい加減バレるかもしれない。

「じゃあ、今日はもう上がりましょうか」

ボールを片付けてモップをかける。

それは、先輩も手伝ってくれて。しかも何故か楽しそうに。

「またバスケ教えてね」

そう言って笑う先輩に「はい!」と勢いよく返事をしてしまう。

牧さんや神さんと違って。俺はバスケくらいしかないんだから、それで頼られると凄く嬉しい。









桜風
10.1.13


ブラウザバックでお戻りください