Sweet love 10





キツイと有名な合宿が終わって家に帰った。

けど、今回の合宿はキツイだけじゃなかった。

食事が美味かったし、海も楽しかった。バーベキューもしたし花火で騒いだ。一通り夏の風物詩は楽しめたと思う。


けど、家に帰ってからずっとモヤモヤしていた事をすっきりさせようと一大決心した。

電話を掛けてみると

『もしもし?』

と今までにないくらいの近いトコロで声がする。

電話だから当たり前だけど。

「あ、あの。今時間大丈夫っスか?」

『大丈夫っすよ?』

と楽しそうに答えるのは先輩。

「えっと、先輩は明日、何か予定ありますか?」

『今のところはまだ何も』

そんな返事を聞いて思わずガッツポーズをしてしまう。

「じ、じゃあ。明日遊びに行きません?」

頑張ってる、俺!

『デートっすか?』

デート!?

いや、確かに俺的にはそんなつもりだけど。先輩は俺とデートとかってイヤなんじゃ...

でも、否定すると自分が悲しくなりそうだ。

『ウソウソ。冗談よ。大丈夫。一緒に遊びましょう』

先輩は電話の向こうで笑いながらそう言った。

ああ、先輩にとっては『ウソ』なんだ...

あたふたした自分が少し滑稽で、ちょっと寂しかった。


待ち合わせの場所と時間を決めて電話を切った。



翌朝は今までにないくらいすっきり目が覚めた。

というか、眠りが浅かっただけなのかもしれない。

そんなことはどうでもよく、絶対に遅刻だけは出来ないから随分と早めに家を出た。

駅前に待ち合わせていた。

先輩を待っている間、何だか落ち着かない。

「早いねぇ」

突然背後から声を掛けられて驚いて振り返ると先輩が立っていた。

先輩の私服は何だかふわふわした感じだった。

「あ、や。先輩こそ」

「そうだねー。で、映画だったっけ?」

「はい」

取り敢えずありきたりに映画を見に行きたいって話をしていた。

今話題になっている映画を見るため、駅の近くの映画館へと向かう。


「うわぁ、結構並んでるね」

「そうですね。先輩、どっかで時間潰してきます?俺並んでおきますよ」

そう言うと先輩はきょとんと見上げてきて

「それじゃデートになんないよ」

と言って笑う。

そして、そのまま映画館の前に出来た列に入っていった。

さらりと言われた『デート』って言葉が耳からはなれず、どうしようもなく落ち着かない。


映画館前の行列の一部になって、そのまま動けずにいる。

隣にいる先輩は何だか上機嫌で鼻歌を歌っている。でも、少し音が外れているような...

「ご機嫌ですね」

「そう?もしかして、清田くんは楽しくない?」

聞き返されてビックリした。だって、今はただ並んでるだけで。俺はいいけど先輩は何が楽しいのか全然見当がつかない。

「俺は、楽しいですけど」

「そう。じゃあ、良かった」

先輩は尚もきょろきょろと辺りを見渡してそして鼻歌を歌っていた。


映画館の椅子に座れたのはそれから30分後の事で、炎天下の中、凄く疲れたんじゃないかって思う。

席を取って飲み物を買いに行った。

先輩は、確かレモンティが好きだとか言ってた。

それを購入して戻ると先輩はパンフレットを熱心に見ている。

先輩、どうぞ」

そう言ってさっき買ったレモンティを渡すと

「ありがとう。お、レモンティ」

と言って笑う。

「しかし、清田くんがこういう映画が好きだったとはね」

と言われて曖昧に頷いた。

正直、この映画がどんなのか知らない。

ただ、最近凄く人気があって外れじゃないかもしれないって思ったから選んだだけ。

「ま、まあ。たまにはこういうのも良いかなって」

それから約2時間後。俺はこの映画を選んだ事を後悔する。


「取り敢えずさ、ロビーに出よう。ロビーの端っこにね?」

不覚にも非常に感動してしまった俺は、止め処なく流れる涙を拭い続け、先輩に世話を焼いてもらっていた。

今の俺って凄くカッコ悪いと思う...









桜風
10.1.20


ブラウザバックでお戻りください