Sweet love 13





今年もわが海南大附属高校が選抜に出場した。

選抜は冬休みに入ってあるから、先輩とは意外と長く顔を合わせることが出来たというコトだ。


冬休みが明けて1月の調理部の差し入れのときに、

「あたし、今日で部活引退だから」

とある意味遅い引退宣言をされた。

「え、何でですか!?」

調理部の差し入れは2週間に1回。

だから、2月になっても3年は差し入れの時だけは出てくるって聞いた。

だったら、普通に考えて先輩はあと3回差し入れに来てくれる予定だったのに。

「いや。これでもかなり遅い引退だよ。けど、1月の後半から3年って登校自由になるでしょ?だから、もう引退しちゃおうと思ってね。残る子もいるけど、あたしは引退」

さらりとあっさりそう言う先輩。

先輩のいうコトには全く頷けるけど、それでも何だかすんなりと納得が出来なかった。

だからと言って、引き止めることも出来ず俺は頷くしかなかった。


そして、先輩の言ったとおり、1月の後半からは3年の校舎はシンと静まっている空間となった。

学校に行っても絶対先輩の顔を見ることは出来ない。

それが意外と思った以上に寂しくて、自分でも驚きだったりする。

「清田!」

部活でも何だか監督に叱れる回数が増えた気がして自分でもやばいとは思うんだけど、どうしたらいいのか分からず。

いっそのこと先輩の家に行って顔でも見てこようかと本気で考えたほどだ。

「こら、清田!」

「気合入れろ、清田ぁー!」

監督の怒声の後に、久しぶりに聞く声。

振り返ると監督にごめんなさいと頭を下げている先輩。

ちらりと時計を見るとあと2分で休憩時間だ。


休憩時間になってすぐに先輩の元へ行く。

「へへ、高頭先生に怒られちゃった」

先輩は笑いながらそう言う。

「ど、どうしたんスか?!」

「ああ、書類がいるから取りに来たの」

そう言いながら持ってる紙袋の中から小さなものを俺の掌に乗せる。

「あげるよ。ちょっと皆に配ってくる」

そう言って部員たちの間をちょこまかと駆け回る先輩。

俺の掌の上には小さなチョコが乗っていた。

全員に配り終わったのか戻ってきた先輩は

「バレンタイン、近いからね。最近お菓子作ってなかったし、気分転換に作らせて貰ったのよ。ちなみに、今、高頭先生にもあげたら機嫌を直してくれました」

カラカラと笑いながらそんなことを言う。

「いただきます」

「どーぞー」

口の中に入れれば微かな苦味と優しい甘味がゆっくりと溶けていく。

「集合!」

という声が体育館に響く。臨時の差し入れがあっても休憩時間はいつもどおり。

「お、神くんがキャプテンだ」

笑いながら先輩はそう言って

「じゃあね。部活頑張ってよ、スーパープレイヤー清田信長選手!」

と俺の肩を叩いて慌てて体育館から出て行った。


たぶん、次に先輩に会えるのは卒業式だと思う。

何だか凄く焦る。



卒業式の日の朝、俺は何だか落ち着かなかった。

「清田、呼び出し」

さっきから何度かクラスのやつに声を掛けられてそのたびに教室の入り口を見れば俺が期待した人ではなくて、申し訳ないけど落胆していた。

卒業式ってこんなに感動するものだとは思わなかった。

「や、つか。何でお前がそんな号泣なんだ?」

隣に座ったクラスのやつが心底呆れたようにそう言う。

俺が知りたいよ、そんなことは!


バスケ部は、毎年卒業式のあとの最後のホームルームが終わった後バスケ部専用の体育館でもう1回卒業式をするらしい。

卒業式なんて大げさなものじゃなくて、ただ、今までお世話になりましたって花束を渡して卒業する先輩たちに「頑張れよ」と言われる。

それが恒例行事らしい。

体育館へ向かう途中に見かけた背中。反射的に駆け出していた。

先輩!」

振り返った先輩は卒業証書が入っていると思われる筒を振った。

「何となく久しぶりー」

「お久しぶりっス!先輩は、結局進路どうなりました?」

聞いていいものかどうか悩んだけど、聞いておきたいってのがある。

「大学進むよ。勉強は嫌いだけど」

そう言って笑う。

その笑顔は何だかすっきりしてるもので、凄く俺も安心して。

だから、勢い余って

「俺、先輩が好きです!」

とうとうそう口走ってしまった。廊下のど真ん中で。

先輩はというと、あんぐり口を開けて驚いている。

うわ、何だ俺!

もう一度先輩を見るとまだあんぐり口が開いている。

「や、あの!これ...」

じたばたしてる自分は凄くみっともない。

「あ、ああ。冗談?ドッキリ??」

先輩がそう言うから何だか冗談扱いされるのがイヤで

「冗談とかじゃないっス。本気です!あの、えっと。や、だから...大学行っても頑張ってください!先輩に会えなくなるってかなり寂しいですけど」

と早口に捲くし立ててしまった。

そして、居た堪れなくなって「じゃ、失礼します!」と回れ右をする。

けど、上着の裾を引っ張られて振り向けば、先輩は

「ありがと、清田くん」

と言って笑ってる。

それが、今までに見たどの笑顔よりも優しくて明るくて、俺はそのまま先輩の笑顔に見惚れてしまった。









桜風
10.2.10


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