Sweet love 14





冬の選抜大会の予選が始まった頃、は大学の推薦試験を受けたらしい。

選抜出場が決まった日に、は試合を見に来ていて、帰りにそう言った。

「あとは結果待ち」

そう言ったは少しすっきりしたようで、心からの笑顔だった。

「家政科か?」

「そう。短大だけどね。それ以外どうも行く気にならないしさ。専門と悩んだんだけど」

「学校は何処だ?」

聞くとくるくると視線を彷徨わせた後、

「受かったら教える」

そう言ってイタズラっぽく笑った。


それから約2週間後にが態々家までやって来て1枚の紙切れを見せた。

それは、俗に言う合格通知で、しかも、その大学は東京にあるという。

「家を出るのか?」

まさか、と思った。

まあ、が家を出たがっているのは薄々気付いていたが。一応隠していたみたいだから知らないフリをしていたし、こんな突然知らされるとは思わず、多少なりとも動揺した。

「うん、家から通うの大変だしね。これからさんにみっちり家事を教えていかないとね」

俺の気も知らないで、は楽しそうに笑った。

それでも、大人になることをあれほどまでに拒んでいたはあっさり推薦入試を受けたってのに驚き、やぱりさんは凄いと思った。

伊達に34年も生きてない。


本当は選抜大会が終わってから返事をすると言っていたが、俺の方も大学を決めた。

大会前に返事をして、それで俺の進路は決まった。

大会が終わり、が家にやって来た。

「お疲れ様」と言いながら持ってきたのはブッシュドノエル。クリスマスのケーキだ。

「何で、今更クリスマスなんだ?」

後数日で来年となるのに。

「え、だって。牧は今年クリスマス出来なかったでしょう?」

が言う。

それなら去年だって、その前だってそうだと思ったが、まあ、チョコレートケーキだが美味いからいいかと思った。

「そういえば、神くんから聞いたけど、牧も大学決めたんだって?」

「ん?ああ、まあな」

まさか、自分が言う前に誰かの口からの耳に入るなんて思っていなかったため、俺は一瞬動揺してしまった。

いつ話そうかと考えていた真っ最中だったのだから。

「何処の大学かまでは、聞いてないのか?」

確認すると「うん」と頷く。

「何処なの?」

改めて聞かれた。

「東京だよ」

努めてあっさりそう言った。

の目は見る見るうちに大きくなっていく。それは、そのままその目が零れ落ちるんじゃないかと心配するほどに。

「何で?何で!?何で!!」

本当にさんと母子だなと思う。息が続く限り『何で』を繰り返していたが息を継ぐタイミングで

が東京に行くから」

と答えた。

再びは暫く言葉を失った。










桜風
09.11.4


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