| 「ないって」 戻ってくるなり、は首を傾げてそういう。 「体育館の隅とかに落ちてないかな」と呟きながら翔陽がベンチサイドとして使っていたところに視線を向けていると「わるい」と謝られた。 「え?」 「いや、バッグの底に入ってた」 猛然と抗議されるかと思い、構えていると「あ、そうなんだ。見つかってよかったね」と軽く返されて肩透かしな状態だ。 「へ?」 「見つかったんでしょ?何か、態々戻ってきたのに無駄足だったねぇ」 あの勢いっていつ、どんなタイミングで発動されるのだろう... 読めない、と思ってを見た。 彼女は面白そうな表情を浮かべて肩を竦める。 「それで、さ。さっき、肘が開きすぎって...」 目をきらきらと輝かせてが藤真に詰め寄る。 何だ?どうした?? 「うちの顧問って、バスケ経験のない人だから教えてくれる人が居ないのよ。時々、体育の先生を無理やり体育館に連れてきてコーチしてもらってたんだけど、最近は放課後を見たらみんな蜘蛛の子を散らしたかのように一目散に逃げたり、途端に仕事が忙しくなったりするのよね」 ああ、なるほど。 「あ、えーと。うん」 藤真は本腰を入れてのコーチをすることにした。 「いやぁ、気が合うバスケバカね」 熱血指導を行う藤真とそれを嬉しそうに受けているの姿を体育館の隅で座って眺めながらは呟く。 「いつもあんな感じか?」 花形が聞くと 「あんなに熱心に教えてくれる人が居ないから、いつも以上に熱血よ」 と苦笑して答える。 なるほどなぁ... 「で?とどうなりたいのかしら、藤真くん」 「さあ?今のところは『面白い』というところなんだろうな」 花形が答え、 「いや、でも。藤真が『面白い』って興味を抱く女子がこの世に存在するとは思ってなかったよ」 と高野と名乗る男子が付け加える。 「へえ?モテモテ顔なのにね」 「あいつの最優先はバスケだから」 「なるほど。男子版ってことですか」 うんうんとは頷く。 「あー、さんって黙ってたら可愛いよな。目がくりっとして活発そうな、いかにもスポーツが得意って感じだし。そういう感じの子が好きな男子、多いよな」 永野と名乗る男子の評価を聞いては「チッチッチ」と人差し指を揺らす。 「はバスケが絡まなかったらいい子なのよ?さっきの親切なお嬢さんっぷり見たでしょう?」 確かに、親切だった。練習を中断させてまで職員室へと足を運んでくれたのだ。 の話に皆は何となく納得した。 「さて、」と言っては立ち上がる。 「、そろそろ上がろう?」 「え!いや、あとちょっと!!」 こんなチャンスはめったにないのだ。 「あとちょっとってどれくらい?何分??」 「えー、あー...」 「先生、新婚さんでせっかくの休日を学校に出てきたんだから、いい加減に帰してあげないと」 の言葉には「うう...」と唸り「30分!」と答えた。 それでも、30分は結構長いぞ? 花形たちはそう思ったが 「先生に言っとく」 とは頷き、「ちょっと職員室に行って来る」と声をかけて体育館を後にした。 が声をかけてから15分後には練習をやめた。 「あと15分あるぜ?」 汗だくではあるが、物凄く達成感を感じているような晴れやかな表情の藤真が言う。 「片づけがあるから。わたしたちが帰らないと先生も帰れないし」 わたしもまだまだ練習したかったけど、と言って片づけを始める。 既に制服に着替えていたもそれを手伝い、何となく藤真たちも手伝った。 「体育館の鍵は私が返しておくから、は着替えてきな」 に言われては礼を言い、部室へと向かった。 「なあ、藤真」 「ん?どうした??」 「結局、お前何がしたかったんだ?」 ずっと熱血指導をしていただけだ。 「え?あ..あれ??」 藤真の反応に一緒に残っていた花形たちは苦笑をしたり溜息を吐いたりそれぞれの反応を見せた。 |
桜風
10.9.22
ブラウザバックでお戻りください