| 練習帰り、は前方に知った背中を見つけて自転車のベルを鳴らす。 「おひさし!」 軽く手を上げて声を掛けると、彼も軽く手を上げた。 「今日は部活休み?」 キキッと自転車を止めて降り、押して彼と並ぶ。 「んー?いや。オレはちょっと..な」 そう言う藤真を見上げて、その先に見えた傷跡で『ちょっと』の内容を察した。 「抜糸できたんだ?」 「...うん。そっちは部活?盆なのに」 「練習日じゃないけどね。どうせ家に居ても仕方ないし。学校に行けば当番の先生が居るはずだから体育館開けてもらおうって思って行ったの」 自転車の前籠にはスポーツバッグが突っ込んである。 「開けてくれた?」 「渋々ね。だって、学校以外でリングがあるところ知らないんだもん」 拗ねたようにが言う。 「そういえば、さんは?」 「田舎のおばあちゃんのところに帰ってると思うよ」 「さんは?」 「ウチは生粋の地元民。田舎がないのよねー。藤真くんは?」 「同じく」 肩を竦めて苦笑しながら答えた藤真にも苦笑する。 「田舎、憧れるよねー。毎年夏には旅行が出来るんだよ?!」 「おんなじトコロにだけどな」 藤真がそう返すと「そうか。それは..飽きるなぁ」とが唸る。 そんなの反応に苦笑して、ふと藤真がの自転車を見た。 後ろには荷台が付いている。 徐にその荷台を跨いで座った。 「へ?!」 「よし、しゅっぱつ!!」と右手を前に伸ばした。 「ええ?!何で藤真くんが後ろ??」 「オレ、病み上がりだし」 「病んでないでしょ!!」 瞬間の反論があるが、藤真はそれを笑って流して「ほら、さん。出発進行!!」という。 「ええ?!」と言いながらは自転車に跨り、漕ぎ始めた。 本当に漕ぐとは思わなかった藤真は可笑しくなって笑う。 「何..で、笑っ...るの!!藤真、重い!!ダイエットしろぉーーー!!」 あれ?敬称略だ。 何だかまた面白くなる。 「意外とって力持ちだなぁ!!」 「何か奢れぇーーーー!!」 「コンビニアイスくらいなら」 藤真の言葉には「くっそォーーー!!」と叫びながら自転車の走る速度を上げた。 暫く自転車を漕いでいくとコンビニが見える。 そろそろ疲れもピークだろう。 そう思って藤真はそのコンビニに止まるようにに声を掛けた。 は頷き、そのコンビニの前で自転車を止める。 「藤真、重い...」 「何を言うか!花形を乗せるよりマシだと思えば良いだろう?」 まあ、確かに... はうな垂れて、少し息を整える。 それを見守っていた藤真だが、意外と早くの息は整い、ズンズンとコンビニの中に入っていった。 「はい、これ」 そう言ってが差し出したのは、コンビニで売られているアイスの中でも高級なものだった。 「ちょ、お前!ダッツってどういう了見だ!!」 「コンビニで売られているアイス。即ち、コンビニアイス」 胸を張ってそう返された。 そう来たか、チクショウ... 「ってか、普通は遠慮して。ほら、こういう安い氷菓を選ぶだろうが」 「ノン!わたしはこれに見合うだけの労働をしました。寧ろ、ダッツでもお釣りが来るくらい。けど、釣りはいらねぇぜ的な粋な計らいでダッツで手を打つといっているのデース。オー、ワタシヤサシイネェ」 途中からなんか何処の国の人か分からない片言だ。 それが余計にむかつく。 「というか、オレに快気祝いを寄越せ」 「じゃあ、このアンパンで良いでしょ?」 傍のパンコーナーを見た瞬間、一番手近にあって尚且つ安価なものを手にとってそういう。 「おーまーえーなー...」 藤真が唸っていると「お客様」と声をかけられた。 「店内ではもう少しお静かにしていただけますか」 相当賑やかに騒いでいたらしい。 「すみません」と藤真が謝り「ほら、怒られた」とが言う。 「おーまーえーなー...」 藤真が唸ると先ほど声を掛けてきた店員がまた振り向いてこちらを見る。 諦めて藤真はが差し出したダッツと自分が食べる氷菓を手にとってレジへと向かった。 「あれ?アンパンは要らないの?」 の言葉に「それは今度お前に奢ってもらう」と返して会計を済ませる。 コンビニを出て、さて何処で食べるかという話になった。 先ほど注意をされたばかりなので、できればこのコンビニから離れたい。 「海辺というか波止場に行く?釣り客のおっちゃんたちに混ざって、になるけど」 「今の時間なら釣り客は居ないだろう。そうしようぜ」 海辺なら近い。 2人は並んで波止場を目指した。 |
桜風
10.10.13
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