| の提案を採用して波止場でアイスを食べることにした。 「ひと口寄越せ」 そう言って無心する藤真に「仕方ないなぁ」とは顔をしかめる。 「半分こにしようか」 「お?太っ腹!」 そう言った瞬間、藤真はハタと気づいて「オレが奢ったんじゃんか」とセルフツッコミをしていた。 その様子がおかしくては声を上げて笑う。 「そういやさ」とアイスの交換を終えた藤真が思い出した。 「んー?てか、氷菓って後で食べる方が不利だよ。これ、水だよ。色が付いた甘い水」 文句を言うに笑って「心臓破りの坂って何処?」と聞いた。 「心臓破りの?ああ、わたしが通ってるところの?」と確認すると藤真が頷く。 「んーと、説明するのって苦手だから..この後行く?藤真の用事がなければ、だけど」 「いや、オレは暇だから良いけど。は疲れてないのか?」 彼女は部活をして帰っているところだ。今日は練習を休んだ自分とは違う。 「ああ、うん。大丈夫。自主練だからねー。じゃあ、さっさとそれ食べて」 に促されて藤真はとろりと溶けているアイスを掬い、隣のを見ると彼女は既に水と化した元氷菓をそのまま飲んでいた。 たしかに、順番は逆の方が良かっただろうな、と藤真は少し反省をした。 先ほどアイスを購入したコンビニにもう一度戻ってゴミを捨てて藤真がサドルに腰を下ろす。 「あれ?」 「オレが前で良いよ。ほら、後ろ乗れって」 促されては素直にそれに従った。 「うっはー!早い早い!!やるね、藤真!!」 男女の筋力の差か、それともバスケ名門のエースと弱小バスケ部のエースの差か。 どちらかは分からないが、藤真の漕ぐ自転車はかなり早い。 「後でなんか奢れー」 先ほどに言われた似たようなことを言ってみた。 「はいはい。コンビニのアンパンね」と返されて藤真は笑う。 のナビで彼女が『心臓破りの坂』と称しているその坂の前に辿り着いた。「すげぇ...」 「破られそうでしょ?」 笑いながら言うに笑い事でもないだろう、と藤真はこっそり思う。 坂の距離もあるが、その傾斜角度が何とも... 「ってこれに挑んでるのか?完走したことは??」 「今の脚力じゃムリみたい」と笑いながら返した。 「どのくらいまで行ける?」 藤真に聞かれては少し唸る。 「調子が良くて..半分かな?普通は3分の1が限界..かな?」 肩を竦めて返したは自転車の前籠に載せていた自分の荷物を手に持つ。 藤真が不思議そうにその様子を見ていると「挑戦してみたいんでしょ?」とが言う。 藤真はニッと笑い「わるいな」と返して再びサドルに跨った。 「」 顔を上げると藤真が心配そうに見下ろしていた。 「大丈夫か?」 「んー?」 「お前、日陰にいろよ」 日陰にいたつもりだった。 だが、日が傾いて日陰が日陰ではなくなっていた。その中ではうとうとと寝ていた。 藤真が気づいたときには何だか、顔色が良くなかった。 慌てて声をかけてみたら寝ていたようだ。 何でこの暑さの中で寝られるのかが分からない。 「ちょっと待ってろよ」と言って藤真が自転車と共に消えた。 うーん、どうやら熱射病にかかっているのか?良く分からないけど、ぼうっとするし気分も悪い。 水分がきっと足りないんだろうなぁ...バッグの中には水筒がある。練習中に一々何かを買いに行くのが面倒なので鞄に入れているのだ。 バッグを開けようと思ってファスナーに手を伸ばしたが、上手くそれが掴めない。 んー、困ったぞ? 「」 キキッと自転車のブレーキの音が聞こえて顔を上げると汗だくの藤真がいた。 「ああ...」 自転車を固定して前籠に数本入れていたポカリを一本とってプルトップを上げる。 「ほら、飲め」 「ありがとう。あとでお金返すね」 「良いからさっさと飲めって」 そう言って押し付けられては震える手でそれを受け取る。 「ったく。お前意外と危なっかしいなぁ...」 「あー、それにも時々言われる」 力なく笑いながら言うに「笑い事じゃねぇよ」と毒づいて藤真は空を見上げた。 そろそろ空が茜色に染まり始めてきていた。 |
桜風
10.10.20
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