| 鳥居をくぐると先ほど以上の参拝客で一歩進むのに随分と時間が掛かる。 「、大丈夫か?」 「少々息苦しくはありますね」とは苦笑した。 「わるい、やっぱ有名どころは...」 「来年の勉強になったと思えば、まあ、いいんじゃないの?話の種になるし」 が言うと藤真は目を丸くして、そして、何故か気恥ずかしそうにそっぽを向いた。 やっと社の前まで辿り着いた。思いのほか時間が掛かったものだ。 賽銭箱にお賽銭を入れて礼をして拍手を打ち、願い事を口の中で唱えていた。 暫くむにゃむにゃと願い事を口にしてまた礼をしてその場から逃げるように去っていく。 戻るときも時間は掛かったが、来るときほどでもない。 だが、参道はやっぱり混んでいて駅に着いたときにはかなり疲れていた。 「、大丈夫か?これ、今度にするか?」 藤真はから預かったバッグを軽く叩いてそう聞いてみた。 は首を横に振って「今日もするの」と疲れた表情と同時に執念を見せる。 「んじゃ、行くか」 電車に乗って行かなくてはならない。 電車もやっぱり混んでいて座ることが出来ず、それでもドア付近に立つことはできた。 「藤真って、やっぱり大きいよね?」 「あ?」 不意に聞こえたのは自分よりも下のほうからで、藤真としてそれは慣れないことだった。 視線を下に向けると自分を見上げていると目が合う。 「いや、何か。ほら。いつも大きな人が隣に立ってるから...」 「あー、だな。オレ単体だったら皆ビックリしたみたいに言うんだよ。あいつらがデカイだけだっての」 少し悔しそうに藤真が言う。 「大きけりゃいいってもんじゃないでしょ」 「でも、大きいに越したことは無いだろう。バスケは」 まあ、確かに高さがある方が有利だろうとは思うが、ポジションにも拠るだろうとも思う。 だが、藤真は背が高くなりたかったのだろう。 そう思ってはそれ以上は言わなかった。 電車を降りて公園に向かう。 「そういや、は何をお願いしたんだ?」 「さっきの?」 それ以外に何があるんだ... そう思いながら藤真が頷くと「初戦突破」と笑って言う。 やっぱり、バスケか。 「来年受験だろう。それに関しては?」 「そん時に足掻く。だから、バスケでお願い」 「バスケでは足掻かないのかよ」 藤真が問うと「足掻くに決まってんじゃん!」とムキになって返された。 「んじゃ、バスケだけ何でお願いしたんだよ」 「だって、わたしくじ運無いんだもん」 「...は?!」 「長年シード権を持っている貴校は知らないことかもしれませんけど?まずはくじなのよ、くじ。部長がくじを引くんだけど。これまた運が必要でしょ?くじ運は努力でどうこうできない。だから、神頼み」 「じゃあ、『くじ運を上げてください』の方がいいだろう」 「バスケ以外でくじ運が上がりますようにって思ったこと無いから。だから、的を絞ってね、初戦突破」 の言葉に藤真は呆れた。彼女は何処までも『バスケ』がいちばんなのだ。自分も大概そうだと思っていたが、彼女には負ける。 ふふ、と思わず笑いが零れた。 「なに?思い出し笑い?」 怪訝な表情を浮かべてが言うと「いや。オレ、自分が負ける日が来るとは思わなかったから」と藤真が笑いながら返した。 「この間、海南に負けたじゃない」 真顔でが返すとグサッと胸にナイフを突き立てられかのように痛みを感じて思わず胸を押さえる。 「お前、酷いな」 「だって、まるで今まで負けたことが無いように言うから...負けを知っている人は強くなれるんだよ?」 真顔で言うに藤真は思わず噴出した。 「、弱いままじゃん」 そんなはっきりと指摘されてはグッと詰まったが「まだチャンスはあるもん」とムキになって返す。 そんな話をしながら公園に辿り着く。 のバッグから断ってボールを取り出すと彼女ははしゃぎ始める。 「あ、犬みてぇ...」 藤真は心の中でそう呟き、思わず苦笑した。この直向きさは、犬だな... その後2人は日が暮れるまで1on1に興じた。 |
桜風
10.12.22
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