| 「あれ?!」 ホテルのロビーですれ違い、思わずお互い足を止めた。 「あらあら」とが目を丸くしている。 「あー、そっか」と納得しているのは藤真だった。 高校2年生のメインイベントといえば、修学旅行である。 の高校はスキーと決まっている。 スキーは自由時間はホテルの中に生徒は缶詰で、教師にとってはかなり手間が省ける良いカリキュラムだったりするのだ。 しかし、普通同じホテルに他校の生徒がいることはない。 だから、同じホテルに姉妹校とは言え別の学校の藤真たちが居る事がとても不思議だった。 思わず足を止めたに藤真は苦笑した。 のクラスメイトと思われる女子はと藤真の様子に何やらスキャンダル的な何かを期待しているようだった。 「よお、ちゃん」 こういうときに調子に乗るのが高野である。 美人の部類に入ると知り合いだと言うことを周囲にアピールしたいらしい。 しかし、そんな高野を見て花形は溜息を吐いた。 「あら?どなた?私の知り合いですか?はて、何処でお会いしましたっけ?」 真顔でがとぼける。 高野の周囲は「やっぱりね」みたいな空気が流れた。お前があんな美人と知り合いであるはずが無いだろう、と。彼の周囲のクラスメイト達の視線がそのように物語っている。 「あ、高野くんもじゃん」と言っては手を振った。 肩を落としたまま高野はに手を振り返す。何ていい子なんだ... 「でも、何で?」 一番近くに居た藤真にが問う。 「ウチが毎年使っていたホテルが、今改装中らしいんだ。で、姉妹校である貴校が毎年使っているホテルを使おうってことになって。一応ガッツリ被るのは拙いだろうからって日程はずらしたらしいんだけど、どうしても1日だけ..つまり今日だけ被ることになって。で、こうしてばったりと出会ったってワケ。まあ、ウチは本館を使わせてもらってるから接点はホントにないけどな」 「あら、大変だったわね」 「先生たちがな」 の言葉に苦笑しながら言ったのは長谷川で、長谷川が周囲から「おお〜」と尊敬の眼差しを一身に受けている。 藤真は元々規格外とされているので彼がどんな美人と会話をしていても話題にはならない。 「あらあら」 知らない女子がに向かって揶揄するように声を掛けた。 「さすが、サンね。他校にも男子の知り合いが多いこと」 決して好意的ではないその視線には目を眇めた。 藤真たちはここは退散した方がに良いと考えて回れ右をしようとしたところで「ああ、バスケ部なのよ」と応えた声がある。 「へ?!」 全く敵意の無い声が返ってきて彼女は毒気を抜かれたように間抜けな声を漏らした。 「こっちが、翔陽のバスケ部のキャプテンで藤真。で、副キャプテンが、そっちの花形くんで、長谷川くんと、高野くんと永野くん。...他にいたっけ?」 「いや、ウチの学年はこの5人だよ」 苦笑しながら藤真がの質問に答える。 「ウチとそっちは姉妹校だろう?だから、バスケの練習試合とか組ませてもらってて。それで夏にちょっとゴタゴタがあってそれ以来の知り合いかな?花形とさんは同中らしいけど」 仕方なく藤真が補足する。 嫌味を嫌味と感じないは本当に貴重な存在だな、と藤真は笑いを堪えるのに必死だ。 も少し呆れたような表情を浮かべている。 「バスケに興味あるの?見学においでよ」 が目を輝かせて勧誘を始めた。 さすがに堪えられずに藤真が笑い出し、つられてや花形、長谷川たちも笑い始めた。 「なに?」 きょとんと心から不思議そうにが首を傾げる。 「あ、いえ。バスケに興味があるわけではなくて...」 そういいながら彼女はそそくさと逃げた。 「あれ...部員獲得のチャンスだと思ったのに」 残念そうに呟くに「今更最終学年を増やそうとしてどうするのよ」とが苦笑する。 「でも、楽しいもん」 「ま、その情熱は新入生の部員獲得に注いでよ」 がそう言って宥め「だね!10人くらい居たらいいかな?」と気持ちを切り替えてに聞いていた。 ふと視線を感じてが振り返ると花形が微笑ましげに自分たちを見ていることに気が付く。 「よかったな」と彼の口が動き、はそれが読めたが、読めない振りをしてぷいとそっぽを向いた。 「って最強だよな」 藤真の呟きが聞こえた花形は「だな」と苦笑して頷いた。 |
桜風
10.12.29
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