| インターハイの予選が始まった。 の学校は勿論シードなんてものではなく、一回戦から試合がある。 新入部員は目標の10名には届かず、その半分もいない。4名だ。 「でも、上出来でしょ」と言ったのはだ。自分とが抜けて新入部員4名。プラス2名だ。まだまだ『部』として存在しうる。 これだけ弱いのに『部』でいられるのだから、とは合格点を出していた。 「よう」と会場で声を掛けられてが振り返ると新入部員は小さく黄色い声を漏らした。 声を掛けてきたのは藤真だった。 「あれ?男子の1回戦の偵察じゃないの?」 「時間が空いたからなー。応援してやろうと思って」 笑って言う藤真に「それはそれは」とが返す。 「初戦突破できるように見守ってやるよ」 「神頼みしてこれだったからなー」 笑ってが答えた。 同じブロックにはもっと、自分たちの実力と同程度の学校があったのにもかかわらず、何故か『ベスト8は堅い』といわれているそれなりに実力があるという学校との対戦となっている。 相変わらずのくじ運だった。 「まあ、練習したんだろう。死ぬほど」 「あ、あれはもう止めてってお願いしたの。潰れるのが先のような気がして」 が言うと藤真は苦笑した。 「ま、悔いのないようにな」 そう言って藤真はスタンドに向かった。 試合は珍しく終盤まで接戦だった。 いつの間にか他の会場に行っていたチームメイトも観戦に来ていて一緒に声援を送る。 「行けるんじゃね?」 高野が呟く。 たちの動きは悪くない。 体力バカのが相手チームのフォーメーションをかき乱している。 はその性格からか、相手の裏をかくことが得意なようで、隙をついてはシュートを決めていた。 たちのチームが1点勝っている。このまま守りきったら目標の初戦突破だ。 時計を見ると残り30秒。それだけあれば相手チームも逆転は可能だ。 藤真はグッと拳を握った。 守ることを考えたら点が取られる。 とはそれが分かっているようだったが、2年以下がどうにも気を抜いてしまったようで、残り10秒のところで相手チームのエースのシュートにより逆転を許してしまった。 「!」 速攻のパスが通り、はシュートを打った。 今まで見たことないくらい、綺麗なフォーム。 シュートを打った後、は目を瞑った。 藤真も目を瞑る。遅かった。 ボールが手から離れたときには既に試合終了のブザーは鳴っていた。 綺麗な弧を描いてボールはリングをくぐり、そして喜びに沸いていたのは相手チームだった。 は腰に手を当ててを見た。も苦笑している。 「お疲れ」とが言い、「だねー、受験生だ」とが笑った。 ガッカリしているチームメイトに声を掛けて整列をさせた。 「お疲れ」 声を掛けられて振り返ったとの表情を見て藤真たちは苦笑した。 負けたというのに、清々しいにもほどがある。 「ま、最後のあれが決まってかなりご満悦ですよ。師匠に合わせる顔くらいは保てたかな、とね」 笑って言うに「まあまあだったな」と藤真が返す。 「下の子達は?」 としか居ない。 「次の試合が無いから、まだ更衣室で泣いてるわ。私たちは結構すっきりしたから先に帰る事にしたの」 今日のこの会場の最後の試合だったから、次にその更衣室を使う学校がないのだ。 「冷たすぎないか?」 藤真が言うと 「良い?獅子はね、わが子を千尋の谷に落として...」 「わが子じゃねぇだろう」と藤真。 「誰が獅子なんだ?」と長谷川。 2人にそう突っ込まれては笑った。 「いいのよ。だって、次はあの子たちが頑張らなきゃいけないんだし。要らない人が口を出すような反省会はしないの。これ、ウチの伝統」 が言うと「反省会自体、殆どなかったけどね」とが笑う。 「次は、藤真たちだね」 が言う。 「おう。任せろ」 不敵に笑って藤真が応えた。 |
桜風
11.1.19
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