| 藤真が帰宅の途についていると、背後から自転車のベルの音がして振り返った。 「お疲れー」 思ったとおりだ。 キキッとブレーキを掛けて藤真の隣で自転車が止まる。 「おう」と言いながら当たり前のように藤真がの自転車の荷台に跨った。 「おい、こら」とが言い、「アイス買いに行こうぜ」と言って前方を指差す。 「くっそー」とは強くペダルを踏んだ。 「藤真、重い!」 「軽い軽い。花形乗せるよりはマシだ」 「花形くんならきっと自転車を漕いでくれると思う!」 の指摘に「かもなー」と軽く返して藤真は笑う。 「藤真ー。選抜まで残るってホント?」 藤真たち、翔陽は予選で湘北に負けた。大番狂わせだ。 「あー、うん。何か、ほら。納得いかなくてさ」 苦笑して藤真がそう返した。 納得がいかないと言うよりも、まだバスケをこのメンバーでしていたいってのが正直なところだったりするが、それは言わない。皆なんか気恥ずかしい。 「そういや、今年の国体。選抜にするんだって」 藤真が先日顧問から聞いた話を口にする。 「ああ、女子もそうみたい。わたしはどの道外れてるけど」 笑いながらが言う。 「けど、男子の選抜って選手を決めるのに先生達が迷いそうだね。かなり良い選手が揃ってるじゃん。迷うくらいなら海南1本でいいじゃん」 「何をー!オレ様の華麗な活躍見たくないのか!!」 藤真が言うとは声を上げて笑った。 「見たい、見たい」と適当に返す。 「くそっ」と毒づいて海を見る。キラキラと輝いている海に苦笑を漏らした。 何か、ちっさいコト言ってたかも... コンビニでアイスを購入し、店を後にする。 「何でまたオレが奢るんだよ」 「いいじゃん。わたし、働いたし」 そう言ってやっぱりハーゲンダッツを手にしているが笑っている。 「んじゃ、久しぶりに心臓破りに行くか」と藤真が言うと「わたし、週一で塾の帰りに行ってるし。調子がいいときは制覇できるようになったよ」と軽く返されて藤真は危うく自分の持っているアイスを落とすところだった。 「何だって?!」 「ふっふっふ。藤真くん、聞こえなかったのかね?」 優越の笑みを浮かべてが言う。 「ちょ、早くそれ食え。今から行くぞ!」 負けず嫌いな藤真としては看過出来ない話だ。 を急かしてアイスを食べさせて例の坂に向かった。 「おま、これ本当に...?」 坂を見上げながら藤真が言う。 「たぶん、今日も出来るかな??」 そう言ってストレッチをし始めた。 そして、本当に一回も足をつかずに坂の上まで上がっていった。 「どう?」と戻ってきて言う。 「や、すげぇ...」 呆然と呟く藤真に苦笑しながら「が絶対に男子に言うなって言うんだけどね」と言う。 「何で?」 「ドン引きされるだろうからって。どんな脚力だよ、とか?」 それは自分も思ったが... 「ちょい貸して」と藤真はムキになってに自転車を借りて果敢にその坂に挑戦し始める。 「何でだ?お前、さっきオレを重いって言ってじゃないか」 結局藤真はその坂の半分までしか行けなかった。とりあえず、今は藤真が自転車を漕いでが荷台に乗っている情況だ。 もう日が傾いたので帰ろうと言うことになった。 「負荷がないときに比べたら重いよ。藤真ってさ、普段から自転車乗らないでしょう?」 「乗らない。何?」 「自転車って歩いたり走ったりするときと使う筋肉が違うんだよね。明日、たぶん筋肉痛だよ?」 そういえば、去年ムキになった翌日は何故か筋肉痛になった。 「オレもチャリ通しようかな...」 「バスケを続けるんだったらやめときなよ。変なところに筋肉を付けるのはマイナスになるかも」 の言葉に藤真はきょとんとした。 「お前、バスケ辞めるの?」 「選手はねー。さすがにセンスがないのに続けてもって思うから」 それは残念だなと素直に思った。せっかくシュートフォームが綺麗になったのに。 「ねえ、お腹すかない?」 「空いた。なんか食って帰ろうぜ」 「ハンバーガー食べたい!」 のリクエストに「オッケー」と言って藤真はハンドルを切った。 「ねえ、ものは相談なんだけど」とが言う。 「んー?奢らねぇぞ」と先に釘を刺すと「さすがに、それはいえない」とが笑う。 「ポテト、半分こしない?2人でひとつを買うの」 「んー?」 「うち、お小遣いが少なくてさー。大抵我慢してるんだけど...」 「ひと月いくら?」 「3000円。買い食いしなかったら充分なんだろうけど...さすがにバッシュとか買ってもらってたりするのに小遣い上げてなんて言えなくてね」 まあ、あのの食欲から考えたらその3000円でひと月ってのはきつそうだな、と藤真は苦笑する。 「いいぜー」と返すと「ありがとう」と心から嬉しそうな声が背後からした。 できればその表情も見たかったなーと思いつつも「感謝するように」と言うと は「してるしてる」と声を上げて笑った。 「青い春だよなー」 藤真が呟く。 「なに?」 聞き取れなかったが聞き返すと「なんでもない」と藤真が返した。 はいつも全力のような感じだ。 「なあ、ってかなり青春を謳歌してるよな」 藤真がいうと「人のこと言えないでしょう」とに返されて「そっか」と何となくすんなり納得してしまった。 「青春って意外と身近にあるんだなー」 呟いた藤真の言葉が聞こえたは声を上げて笑う。 「なにオッサンくさいこと言ってんの!!」 「うるせー」 気恥ずかしくてグンと強くペダルを踏んだ。 突然スピードが上がっては慌てて藤真にしがみつく。 「安全運転!」 「へいへい」 適当な返事をしながら行動が伴わない藤真には呆れ、そんな彼女の雰囲気が背中から伝わった藤真はまた笑った。 |
桜風
11.1.26
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