| IH予選が始まった。 あたしたちバスケ部は予選から見に行けるように配慮されている。 と言ってもベンチに入っている選手とマネージャーって決まってるんだけどね。 全員が固まって行動することは無く、会場は4つあるからそれぞれ好きなところを見に行って良いとされている。 「どうなんだろうね?」 「ん?」 あたしと宗は同じ会場へ行く事にした。宗がチャリの後ろに乗せてくれると言うのだ。 「や、何か緊張しない?」 宗に聞く。 「まあ、そこそこ」 返事は至ってクールだった。 「というか、が緊張してどうするんだよ」 「だってさぁ...」 高校の、しかも海南大附属高校のバスケ部としてはこの予選という雰囲気が少し怖い。 絶対に勝たないといけないチームなのだから。 スタンドから見る予選は迫力があった。1回戦だというのに。 宗に言うと 「ああ、もしかして男子のバスケ見なかったの?」 と聞かれた。 「見たけど、うーん。あんまり覚えてないよ。ウチの学校は基本男女のバスケ部は仲良しと言うほどでもなかったから。ああ、でもあたしはひとつ上の先輩に可愛がってもらってたんだけどね。可愛がってもら..たのかな?あれって...」 「なに、それ」と楽しそうに宗が言う。 「ねえ、喉渇かない?」 何だか体育館の中は熱気があるというか、喉が渇く。 「買ってこようか?」 宗が言ってくれたけど断ってあたしが自販機に行くことにした。 あたしが試合を見てるよりも宗が試合を見てる方がよっぽど海南のプラスになる。 自販機にお金を投入して、さて、何にしようかなと思っていたら、突然後ろからにゅっと手が伸びてきて勝手にボタンを押す。 誰だよ!? 振り返ると、宗くらいあるのかな?それよりも大きいのかな?つまり、育ちすぎた男の人が居た。 ジャージを着ていて、陵南のバスケ部の人だと分かる。 「こんにちは」 笑顔でそういわれた。 「こん、にちは。じゃ、なくて!さっきの!!」 そう言って彼の持っているドリンクを指差した。あたしの順番だったのに!! 「ああ、うん。ごちそうさま」 全く悪びれずにそう言う。そして、続けて 「ねえ、それ。海南の制服だよね?」 とあたしを指差してそう聞かれたからコクリと頷く。 「そっかー。オレ、陵南の仙道彰。1年。君は?バスケ部なんでしょう?平日に此処に制服で居るってコトはさ」 ニコニコとそう言う。 「海南大附属高校バスケ部マネージャー、。同じく1年」 「ちゃんか。可愛い名前だね」 何、このナンパ男... 「仙道」 そう言って近付いてきたのは、同じく陵南の魚住さん。ビッグ純とか呼ばれてたらしい。たしかに、でかい... 「ん?」と言ってあたしに気がついた。 「仙道、お前何かしたのか?」 うわー。信用ないなぁ、この人。 「ナンパです」 とにっこりと答えた。 は?自分で言った?! 半眼になって魚住さんは仙道を見る。 「すまなかった。仙道が迷惑をかけた」 「全くです!」と言いたいところだったけど、言葉を飲んで「いえ」と答えた。 「牧は会場に来てるのか?海南だろ、その制服」 「いえ、牧さんは別の会場に行ってます」 もう1度コインを入れてドリンクを購入する。 「それじゃあ、魚住さん。失礼します」 挨拶をして去ろうとしたとき、 「オレには?」 と顔を覗きこんでくるのが仙道。 ムカついたから 「失礼します、仙道さんッ!!」 と言ってスタンドに戻った。 「遅かったね。自販機いっぱいだったの?」 試合は終わっていた。思わず溜息を吐く。 「や。うん。ねえ、宗。仙道って知ってる?」 「陵南の?東京から監督がスカウトしてきたんだって。会ったの?」 あんなおめでたそうなのが、あの陵南のスカウトを受けてやってきたとは... 「会った。何か、アホだった」 そう言うと宗は首を傾げた。 「あ、飲む?」 あたしは持ってるドリンクを宗に向けて少し差し出す。 「が飲んでから。喉渇いたって言っての、でしょ?一口も飲んでないじゃない」 言われて初めて気がついた。 あまりにもあの仙道ってやつのおめでたさに唖然としてしまい、自分の喉の渇きすら忘れてしまっていたのだ。 しかし、あたしが仙道の凄さを知るのにはそう時間は掛からず、あの時ののらりくらりとした態度が余計にムカついた。 |
桜風
12.1.11
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