| IH予選が始まった。 と言ってもシード校であるオレの学校、陵南の初戦はまだだけど... 一応、部活動という事で、試合を見ることを認められている。 授業をサボれるのは嬉しいけど、一緒に来たのが、魚住さん。 結構マジメな人だ。 魚住さんは嫌いじゃないし、好きか嫌いかで聞かれたら好きだ。魚住さんがキャプテンになったら陵南はもっと強くなると思う。 今のキャプテンに不満があるわけじゃないけど、多分、器は魚住さんの方が大きい。 「喉、乾いたんで何か買ってきますけど。魚住さんはどうですか?」 聞いてみると 「いや、俺はいい」 と返事があった。 「じゃあ、ちょっと行ってきます」 そう言ってスタンドから降りた。 階段を下りてホールの一角の自販機を目指す。 オレの用のある自販機の前に女の子がいる。 あれは、確か海南の制服? 女の子で海南の制服を着てるってコトは、海南バスケ部のマネージャーかな? 此処は男子の会場だし。 興味が湧いて、静かに近づいた。 『王者』と呼ばれる海南のマネージャーを務める子ってどんな子だろう?単純な好奇心。 彼女は自販機にコインを入れて悩んでいた。 何を飲もうかと考えているようで。 ちょっと楽しそうだからボタンを押した。 オレが飲みたかったもの。 彼女は怒った表情で無言のまま振り返った。 「こんにちは」 笑いながら挨拶をしてみる。意外とオレの好みの顔をしていてちょっと嬉しかったり。 「こん、にちは。じゃ、なくて!さっきの!!」 そう言ってオレの持っているドリンクを指差した。ああ、やっぱり怒ってるんだよね? 「ああ、うん。ごちそうさま」とお礼を言う。 そして、さっきから気になっていた彼女の着ている制服、というか、彼女の通っている高校のことを聞いた。 「ねえ、それ。海南の制服だよね?」 彼女は静かに頷く。 「そっかー。オレ、陵南の仙道彰。1年。君は?バスケ部なんでしょう?平日に此処に制服で居るってコトはさ」 彼女は感情が顔に表れやすいのか、何となく何を考えているのかが分かる。そう言うところは可愛いなぁ... 「海南大附属高校バスケ部マネージャー、。同じく1年」 「ちゃんか。可愛い名前だね」 半眼になって、睨まれた。 さて、次はどういう会話をしようかと考えていると「仙道」と呼ばれた。 この声は、魚住さん。 お楽しみの時間はこれでお終いってことだ。 ちゃんは初めて魚住さんを見るようで、ぽかんと魚住さんを見上げていた。 「ん?」と言って魚住さんがちゃんに気がついた。 「仙道、お前何かしたのか?」 うわー。オレってそんなに信用ないのかな〜? 「ナンパです」 とにっこりと答えた。 オレの答えに思いっきり呆れながら魚住さんが溜息を吐く。 そして、ちゃんに向き直って 「すまなかった。仙道が迷惑をかけた」 と頭を下げた。 「牧は会場に来てるのか?海南だろ、その制服」 牧紳一。王者海南のエース。居るのなら会ってみたいと思う。 「いえ、牧さんは別の会場に行ってます」 ちゃんはそう言ってもう1度コインを入れてドリンクを購入する。 「それじゃあ、魚住さん。失礼します」 挨拶をして去ろうとした。だから、 「オレには?」 と顔を覗きこんでく聞いてみる。 ちゃんのこめかみがヒクヒクしている。 「失礼します、仙道さんッ!!」 と言って早足でスタンドに戻っていった。 「お前な、他校の生徒に迷惑をかけるな」 魚住さんが呆れながらそう言うけど、その言葉は右から左へ流れてる。 「ちゃん、か」 何だかこっちでの生活も楽しくなりそうだ。 |
桜風
12.1.18
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