君の隣で 5





IH予選が始まった。

と言ってもシード校であるオレの学校、陵南の初戦はまだだけど...

一応、部活動という事で、試合を見ることを認められている。

授業をサボれるのは嬉しいけど、一緒に来たのが、魚住さん。

結構マジメな人だ。

魚住さんは嫌いじゃないし、好きか嫌いかで聞かれたら好きだ。魚住さんがキャプテンになったら陵南はもっと強くなると思う。

今のキャプテンに不満があるわけじゃないけど、多分、器は魚住さんの方が大きい。


「喉、乾いたんで何か買ってきますけど。魚住さんはどうですか?」

聞いてみると

「いや、俺はいい」

と返事があった。

「じゃあ、ちょっと行ってきます」

そう言ってスタンドから降りた。


階段を下りてホールの一角の自販機を目指す。

オレの用のある自販機の前に女の子がいる。

あれは、確か海南の制服?

女の子で海南の制服を着てるってコトは、海南バスケ部のマネージャーかな?

此処は男子の会場だし。

興味が湧いて、静かに近づいた。

『王者』と呼ばれる海南のマネージャーを務める子ってどんな子だろう?単純な好奇心。

彼女は自販機にコインを入れて悩んでいた。

何を飲もうかと考えているようで。

ちょっと楽しそうだからボタンを押した。

オレが飲みたかったもの。

彼女は怒った表情で無言のまま振り返った。

「こんにちは」

笑いながら挨拶をしてみる。意外とオレの好みの顔をしていてちょっと嬉しかったり。

「こん、にちは。じゃ、なくて!さっきの!!」

そう言ってオレの持っているドリンクを指差した。ああ、やっぱり怒ってるんだよね?

「ああ、うん。ごちそうさま」とお礼を言う。

そして、さっきから気になっていた彼女の着ている制服、というか、彼女の通っている高校のことを聞いた。

「ねえ、それ。海南の制服だよね?」

彼女は静かに頷く。

「そっかー。オレ、陵南の仙道彰。1年。君は?バスケ部なんでしょう?平日に此処に制服で居るってコトはさ」

彼女は感情が顔に表れやすいのか、何となく何を考えているのかが分かる。そう言うところは可愛いなぁ...

「海南大附属高校バスケ部マネージャー、。同じく1年」

ちゃんか。可愛い名前だね」

半眼になって、睨まれた。

さて、次はどういう会話をしようかと考えていると「仙道」と呼ばれた。

この声は、魚住さん。

お楽しみの時間はこれでお終いってことだ。


ちゃんは初めて魚住さんを見るようで、ぽかんと魚住さんを見上げていた。

「ん?」と言って魚住さんがちゃんに気がついた。

「仙道、お前何かしたのか?」

うわー。オレってそんなに信用ないのかな〜?

「ナンパです」

とにっこりと答えた。

オレの答えに思いっきり呆れながら魚住さんが溜息を吐く。

そして、ちゃんに向き直って

「すまなかった。仙道が迷惑をかけた」

と頭を下げた。

「牧は会場に来てるのか?海南だろ、その制服」

牧紳一。王者海南のエース。居るのなら会ってみたいと思う。

「いえ、牧さんは別の会場に行ってます」

ちゃんはそう言ってもう1度コインを入れてドリンクを購入する。

「それじゃあ、魚住さん。失礼します」

挨拶をして去ろうとした。だから、

「オレには?」

と顔を覗きこんでく聞いてみる。

ちゃんのこめかみがヒクヒクしている。

「失礼します、仙道さんッ!!」

と言って早足でスタンドに戻っていった。


「お前な、他校の生徒に迷惑をかけるな」

魚住さんが呆れながらそう言うけど、その言葉は右から左へ流れてる。

ちゃん、か」

何だかこっちでの生活も楽しくなりそうだ。









桜風
12.1.18


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