君の隣で 7





翔陽のIHの初戦は快勝した。

そして、その後の海南の試合を見て驚いた。

何で、お前がそこに座ってんだ...


現地解散となった今日の試合。

俺は体育館の外で待つことにした。

「帰ろうぜ」

と高野が声を掛けてきたが、

「悪いが先に帰っててくれ」

と返した。

なのに、皆は帰らずに俺と一緒に体育館の外に立っていた。

ぞろぞろと出てきたのは先ほどの試合で圧勝だった海南で。

最後尾に俺が待っていた人物が出てきた。

隣に並んでるやつとは凄く仲良さそうに笑いあっている。

1年か?

それはともかく。



声を掛けた。

彼女は振り返り、「げ...」とか言った。慌てて口を塞いでたけど、聞こえたよ。

「久しぶりだな」

と言って近づけば、無言で俺が近づいた分下がる。

「何で、海南バスケ部のジャージを着てるんだ?」

また1歩近づけば、は1歩下がる。

「逃げんな」

「逃げます」

ムカつく!!

「宗、荷物お願い」

と言って隣にいたやつに荷物を押し付けては駆け出した。

俺が駆け出すと同時だった。

「待て、こら!」

相変わらず走るのだけは速い。

「待ちません!!」

「何で海南の、バスケ部のマネなんてやってんだ!!」

「マネというものにちょっと興味があったんです!」

マネに興味があっただと!?ふざけんなよ!!

「お前、俺が何回翔陽に来いって電話したと思ってんだ!」

「たぶん3回くらい!」

「この俺が3回も電話したんだぞ!」

「光栄です!」

そんな憎まれ口を叩いているだったが、運動不足なのか、足元が怪しくなっている。

「うわ」

こけそうになったの腕を慌てて掴んで引き寄せる。

「だから、逃げんなっつっただろ?」

息を整えながらそう言った。

「だって、藤真先輩ってば凄く怒った顔をしてたじゃないですか」

不満そうにが俺を見上げてそう言う。

まあ、確かに怒ってたよ。

「そりゃ怒るだろう?女バスが無いから翔陽はイヤなのかと思って諦めたら同じく女バスのない海南に行ってんだから。だったら翔陽で良いだろう。海南よりは遠いけど、の家からはそんなに遠くないし。中学のときも、お前全然海南の話してなかっただろうが」

「いや。ホントはあたしも海南に行く気は無かったんですよ」

だったら、何で海南に通ってんだよ...

「どういうコトだ?」

「うちの父の母校が海南だったんですよ。で、中3の進路希望調査のとき、父が、『海南、受けるだけでもしてくれないかなぁ』って言うから。取り敢えず、第3希望の欄に『海南大附属高校』って書いたら、担任にプッて噴出されてちょっとムカついたんですよね」

「まあ、お前言うほど成績良くないもんな」

寧ろ、良いか悪いかで分けたら悪い方だったような...

は不満そうに俺を見上げた。

「で、受験して合格して。仕事中だけと父にメールで合格したことを報告したら、その日のうちに社長にまで自分の娘は母校に通うことになったと宣言して回り、更に母は、海南の女子の制服は可愛いと言って大喜びをしてしまったため、海南以外に通うことは困難となりました。だって、高校行かないって言ったら結婚させられるところだったんですよ!もうめぼしいの見付けてるからって言われて。だったら、高校に行くしかないじゃないですか!?」

「相変わらずだな、おじさんたち」

誰かの呟く声が聞こえた。

「ひとつ聞くぞ。他の志望校は?」

「湘北と翔陽です。因みに、翔陽が第2志望でした」

何で俺の居る翔陽が2番目なんだよ...

「翔陽には合格したんだろう?」

「落ちました」

一瞬時間が止まる。

だって、普通は逆だろう!?

「言いたかないが。普通入試のレベルが高いのは海南だろう?」

「皆そう言うんですよねぇ。でも、海南に受かって翔陽に落ちました」

「お前、もしかして裏口か?」

「あたしも一瞬そう思いましたけど、住宅ローンが残っている我が家にそんな余裕はないな、と」

これ見よがしに深ぁ―い溜息を吐いてやった。もう終わったことなんだよな、コイツの受験なんて。

「まあ、仕方ないか」

「はい!もうどうしようもありません」

笑顔で応られてムカついた。両方のほっぺをむにーんて伸ばしてやる。変な顔。

「お前のその爽やかな笑顔がムカつく」

口を伸ばされているから上手くしゃべれるはずも無いのに

「ふふぃふぁへふはいっへ。はいはははふひふひふはいほふへふへ」

が言った。

「はぁ?」

何を言ったのか気になって手を離したら、は2・3歩下がって

「藤真先輩って。相変わらず理不尽大王ですね」

と言って、いつでもダッシュできるように構えた。

けど、

「だろ?良く分かってんな」

と言うだけで追いかけない。

何だ、良く分かってんじゃないか。つまり、にはそれ相応の覚悟があるってことだよな。

「悪い、待たせたな。行こうぜ」

待っていた仲間に声を掛けて帰る。

「藤真って、好きな子を苛めるタイプだろう?」

一志にそういわれて言葉に詰まる。

「さあ、な」

適当にごまかしたつもりだけど、たぶんごまかしきれていない。

それでも、困ることは無いから、まあ、いいかって思う。

少し振り返ればがまだ俺のほうを見ていた。

の表情は見えないけど何となく想像できて、少しだけ可笑しかった。









桜風
12.2.1


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