君の隣で 8





今年の神奈川のIH予選は我が海南大附属高校の優勝で幕を閉じた。

やっぱり高校バスケの決勝リーグともなるとさすがに迫力があるなぁって思う。

あの理不尽大王の藤真先輩もかっこよく見えるし、そしてあんなナンパ男の仙道すら凄い選手に見えるんだから不思議だよね...


「宗、これ」

翌日はいつもどおりに学校がある。

あたしは教室で家から持ってきたものを宗の机の上に置いた。

「何?」

「お母さんが、宗にって。お弁当。ほら、いつも夜送ってくれてるしさ。そのお礼にお弁当を作ったみたい」

「え、悪いよ...」

「いやいや、寧ろ残さずに食べてね。今日、一緒に食べない?」

そう言うと躊躇いがちに「うん」と言ってお弁当を鞄の中にしまった。


お昼時間に宗の机に移動して、椅子はすぐ目の前の席の人のを借りて。

いっせーのーで開ける。

あたしはもう慣れたけど、目の前の宗は唖然としていた。

ご飯のところに、ハートマークがあるんだ。

毎日、何かしらハート。今日はとりそぼろだから茶色いハート。これはお父さんに作るのにハートを入れているから、ついでにあたしも入れてくれているとか。

どうでもいいけど、まさか宗のにも入れてるとはねぇ...

「これ、もしかしていつもなの?」

おずおずと聞いてくる。

「うん。お父さんのお弁当の方が凄いけどね」

笑いながら答えると「ホントに相変わらずだ...」と宗が呟いた。


「やっぱりおばさんの料理の味は懐かしいなー」

お弁当をつつきながら宗が言う。

「だろうね。あたしもたぶん宗のお母さんのご飯食べたらそう思うんだろうね」

!呼び出し!!」

教室の入り口のクラスメイトが呼んでくれた。

何だろう?

「食べててね」

そう言って立ち上がり、教室の入り口へと向かう。

それは、時々ある呼び出しで。バスケ部に憧れる女の子たちからのプレゼントや手紙を預かるものだった。凄く面倒くさいマネージャーの仕事。

「宗、これ」

今日のは宗宛てだった。同じ教室に居るんだからあたしを呼び出さずに直接宗に渡せばいいのに...

「俺、いらないよ」

「あたしこそ要らない」

そう言って机の上に置いた。

面倒くさそうに宗がそれを鞄の中に無造作に入れる。

「モテるね...」

「正直、あんまり嬉しくないんだけどな」

と呟く。

「そんなもん?モテたいって思ってる人からしてみれば、宗は贅沢だよ〜?」

「変わってほしいくらいだよ、そういう人とは」

宗がそんな言い方をするのが何となく珍しいと思った。

大抵人当たりがいいのに、此処まであからさまに面倒くさいと強調するなんて。

あまりこの話題を長引かせない方が良いと思ってそれを終わらせた。

ふと、あたしの弁当を見るとおかずが増えてる。

「増えてる」

「ああ、うん。あげるよ」

そう言って微笑む宗はいつもどおりだった。機嫌は直ったのかな??

「口に合わなかったの?」

「そうじゃないよ。、それ好きだっただろう?」

宗の言葉に頷き、

「じゃあ、遠慮なく」

と箸をのばす。

「お弁当、洗って返すね」

殆ど食べ終わっていた宗が言う。

「いいよ。家で洗う。お母さん、宗にお弁当作れるのが楽しいみたいだからまたあると思うけど、良かったら食べてあげて」

「よろこんで」

宗はにこりと微笑んだ。

「ただ、お弁当がある日は朝のうちに連絡くれると助かるな。時々コンビニに寄ってきてるからさ」

「了解」

そう言うと「よろしくおねがいします」と頭を下げたから「こちらこそ」とあたしも頭を下げた。


放課後、部活に出ていると「神は?」と先輩に聞かれた。

「呼び出しがあったので少し遅くなるかもしれません」と答えたら「またか...」と呆れた表情で呟かれていた。

うん、ホントに「またか...」って感じだな。

「牧さんって呼び出しとかあります?」

そばを通った牧さんに聞いた。

「ん?まあ、あったな」

「過去形ですか?」

「部活に専念したいと断り続けたら、減ったぞ」

そうあっさり答えてくれた。

「でも、今でも時々あるのも事実だよなー」

とこっそり近づいてきた武藤さんが茶化す。

「モテモテですねぇ」

「今の神ほどじゃないぞ」

そんな話題で盛り上がっていると宗がやってきた。

「すみません、遅くなりました」

「早くアップしろよ」

慣れたもので先輩たちはそのことについて何も言わない。

不思議だなーって思って宗を見上げるとにこりと笑う。

やっぱり不思議だと思った。









桜風
12.2.8


ブラウザバックでお戻りください