| インターハイへの出場を遂げたチームが国体の代表チームになるという伝統だった。 だから、部員達は勿論のこと、マネージャーであるあたしも忙しい。 思わず口から「ひぃ〜」と悲鳴が漏れてしまう。 「大丈夫?」 ひょこっと顔を覗かせた宗が心配そうな顔をする。 「ちょっといっぱいいっぱい」 正直に言うと「俺に手伝えることある?」と聞いてきた。 「あ、そこは特に。宗は宗で大変だもんね」 そう返したら宗は苦笑して「まだ気力は大丈夫みたいだね」と言った。 毎日ぐっすり眠っている。 けど、心は充実している。 うん。毎日充実しているんだ。 毎日悲鳴を上げるように忙しいけど、それを見てくれていて、声を掛けてもらえる。 マネージャーは体力勝負だけど、あたしだって中学時代は選手として部活に打ち込んでいたんだし。 上手くはなかったけど、それなりにそれなりだったんだ。 家に帰るとお母さんが心配そうにしながら、 「今日、藤真君から電話があったわよ」 と言った。 玄関先で靴を脱いでるところの話だ。 「なんだろ...」 たぶん、大して急ぎの用事じゃないと思う。 「最近部活で忙しいみたいだから、ちょっと連絡が難しいかも、とは話しておいたけど...」 「わかった。お風呂入って、ご飯食べて気力があったら電話する。ダメだったら、また掛かってきたときにお母さん聞いてて」 そんな会話をしたのは覚えている。 覚えているが、気がつくと朝だった。 さすがにお母さんが心配して、今日は学校を休むように言って、さっさと学校に連絡を入れ始めた。 まあ、学校に行けば部活に出てしまうだろうし。同じクラスに宗が居るから授業のことは心配ないけど。 部活の方が気になる。 明日部活に出たら洗濯物がどっさりだったらどうしよう。 それなら、今日無理を押して行っておきたい... そんなことを考えていても体に疲労はたまっていたらしく、結局ほぼ一日寝て過ごした。 お陰でかなり元気になった。 夜になって電話が鳴った。 「あら、藤真君かしら?」 夕飯の支度をしているお母さんが言うから出てみるとまさに藤真先輩だった。 『お、今日は早いんだな』 「学校休んだんです」 『なんだ、風邪か?気をつけろよ』 そんな風に心配されてなんだかちょっと怖い。 「ところで、ご用事は?」 そう促すと 『お前のところの文化祭っていつだ?』 と聞かれた。 「11月頭だった気がします」 『じゃあ、まだ先か...』 「来たいんですか?」 『よくわかったな、連絡しろよ』 そう一方的に言って通話が切られた。 「あら、藤真君はもう良いの?」 ひょっこり顔を覗かせてきたお母さんが言う。 「うん、文化祭の日にちを教えて欲しかったみたい」 「そうなの。で、いつなの?」 「11月頭」 「お母さんも楽しみだわー」 そんなことを言いながらお母さんは台所に戻っていく。 いつもあたしが帰宅するくらいの時間にインターホンが鳴った。 出てみると、宗で「あ、元気そう」と言って笑う。 「あ、うん。風邪とかじゃなかったんだけどね」 玄関での立ち話も何だから、と言って宗をリビングに招き入れた。 お母さんが喜んで世話を焼く。 「宗ちゃん、一人暮らしなら、お夕飯の心配要らないわよね。食べてってー」 そう言って、今晩のカレーを大盛りでお皿に盛る。 「いただきます」と言って宗はそれをぺろりと食べた。 今日の授業の話とか聞いて、そして、一番聞きたかった事を聞いた。 「1年で手分けしたよ。いつもはが居てくれるから甘えてるけど、マネージャーが居なかったらがしてくれてる仕事は1年が分担するようになってるみたいだしね」 そうか、マネージャーが居なくても回るものは回るもんな。 それはそれで寂しいな、と思うあたしはちょっと贅沢だよなー... |
桜風
12.3.28
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