君の隣で 17





他校、しかも、ある意味ライバル校の校内をプラプラ歩くのはそれなりに緊張するものだな、と思いつつおばさんから聞いたのクラスに向かった。

あいつ、文化祭の日程は確かに連絡してきたけど、自分のクラスが何をやるかとか、何組だとかそういうの言わずに電話を切りやがった。

もっかい電話して、と思ったけど部活と文化祭準備で忙しいだろう。

だから、電話に出たほうに聞こうと思って電話をしたらおばさんが出たからおばさんに聞いた。


のクラスを覗くとアイツの姿がない。

神でも居れば声を掛けやすいのに、と思っていたら「いらっしゃいませー」と声を掛けられて、仕方なく教室に足を踏み入れた。

文化祭ならこの程度だな、というメニューからとりあえずコーヒーを選んだ。

持ってきてくれた子に

ってこのクラスだよね?」

と聞いてみる。

すると、彼女は眉を上げて、そして溜息をつく。

「またですか?」

「『また』?」

「さっきも、かっこいい他校の男子に絡まれてました。神君が助け舟を出していましたけど」

『かっこいい他校の男子』?誰だ、それ...

「背が高いからバスケ部とかバレー部かもしれませんけど」

「そうなんだ?」

背が高いからバスケ部かバレー部というのは些か短絡的にも思えるが、実際そういう人材を欲するのがバスケ部であり、バレー部である。

ウチもデカイの揃ってるし...

「たぶん、神君と同じくらいあったかな?あ、さっきから私『神君』って言ってますけど、ご存じないですよね?」

「や、神宗一郎。バスケ部の1年でしょ?俺も他所の学校のバスケ部だから」

そういうと「あ、道理で背が高いと思いました」と言われた。

神と同じクラスなら、俺はそんなに背が高いと思われるはずないのに...

そんなことを思って、ふと自分がどうにもいじけているようで、かっこ悪いから今のなし、と自分に言い聞かせた。


コーヒーを飲み干してまた校内をプラプラ歩く。

にちょっかいを出してたのはきっと仙道だ。

あの神と同じくらいのタッパならあいつくらいだろう。にちょっかいを出していたって言ってたし...

から聞き出せたとは全く思えないが、じゃあ、あいつはどうやってこの学校の文化祭のことを知ったのだろうか。

階段を下りているとの声が聞こえてきた。

俺、すげぇ...

そう思いながら、知らず少しだけ歩調が速くなり、階段を降りる。

踊り場から階段下の廊下を見ると仙道の頭が見えた。

ん?頭??

そのすぐ後にドン、と軽い音がして仙道がよろめく。

あいつ...!

階段を駆け下りようとしたらがそのまま仙道の鳩尾に重そうな一発を入れた。

ちょっと足が竦んでしまい、駆け下りることが出来ない。

その代わり、別の足音が遠ざかった。

「宗!」

軽い足音が遠ざかる。

ゆっくり階段を下りて、腹を押さえて蹲っている仙道の目の前に屈んだ。

「お前、相当バカだな」

そう声を掛けると唸っていた仙道が顔を上げた。

「あれ?藤真さん」

泣かせんな」

「覗きですか?」

「見えたんだよ。...お前、焦りすぎ」

「で、失敗しちゃいました」

情けなく笑う仙道の顔は、悪ふざけでってワケじゃないのはわかった。

ま、だからって許されることかどうかは別物だけど。


「じゃ、適当に立ち直っとけ」

情けなく笑っている仙道を置いて俺はを追いかけてみた。

正直、校内がどんな風になってるかなんて頭に入ってない。

一瞬、迷子になったらどうしようかと考えたが、そんときゃバスケ部員を見つけて案内してもらえばいいと思った。

ウチよりは少ないはずだけど、それなりに人数揃ってるんだから。

階段を下りたところで黒い塊があって驚いた。

?」

声を掛けると、膝を抱えて俯いていたはゆっくりと顔を上げる。

その顔は涙で濡れていて、鼻の頭も赤い。お世辞にも可愛いといえない。

けど、ちょっとだけ悔しかった。

「藤真、先輩?」

「おう。せっかくこの俺様が来てやったのに、お前教室に居ないんだもんな」

肩を竦めて、少しおどけて言うと「ごめんなさい」としょんぼりした。

「何かあったのか?」

何があったのかは知っている。それでも、話すきっかけはこれしかないだろう。

「宗が..仙道が...」

そう言ってまた俯いて丸くなる。

丸くなっているの隣に腰を下ろす。

「うん、ヤなことがあったか?」

「ヤなこと...はい、ヤな事と言うか、悲しいことです」

「何が悲しかったんだ?」

「宗が...」

ああ、そっちか。

そう思っているとはゆっくりと先ほどの出来事を話す。

は、仙道にキスされたことよりも、それを神に見られて、尚且つ何も言わずに背を向けられたことが悲しかったと言うのだ。

それは、つまり...

「それが悲しかった理由は、お前ももうわかってるんだろう?」

けど、は俺が言った言葉に首を傾げる。

腹立つなぁ...

「はっきりとお前の中で答えは出ている。見つけれていないかもしれないけど」

「藤真先輩はわかるんですか?」

「勿論。俺様を誰だと思っているんだ?」

そう返すと縋るような表情を浮かべては「教えてください」と言った。

「やだ」

「意地悪!」

「そうだよ。俺は、簡単に答えを教えてやるようなお優しい先輩だったか?」

は首を横に振る。

「生意気なやつめ」

そう言っての頭を小突いて俺は立ち上がる。

「藤真先輩?」

「仙道のことは許してやれとは言わないけど、挨拶を返すくらいはしてやれよ」

アイツの気持ちもわからなくもないからなぁ...









桜風
12.4.11


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