| 幼い頃から憧れていた。 一緒にいたくて必死に後ろを着いて歩いていた。 久しぶりに再会した彼女は何だか頼りなく感じる反面、綺麗になったことに少なからず戸惑いを覚えた。 そして、俺が彼女へ向ける想いが変わっていることに気付く。 どうしようもなく焦りを感じてしまう自分に気付き、更に子供だということを実感してしまう。 たったひとつの年の差がこんなに大きなものだと気付かされて、打ちのめされることも少なくない。 部活最後の休みの日を目の前にして、俺は少しだけ考えた。 そして、意を決して姉さんを水族館へと誘った。 どこがいいのか分からず、俺が海が好きだから誘ってみればOKの返事がもらえる。 翌朝、部屋に誘いに行けば、部屋から出てきた姉さんに思わず絶句してしまう。 いつも家の中では動きやすい格好でいるから、今日のような格好は見たことが無い。第一、平日は俺の方が先に家を出て、帰るのも俺の方が遅いんだから姉さんのこんな格好なんて見ることがあるはずがないだろう? 「ちょ、どうしたの?体の調子悪いの?」 俺が反応できなくなっていると、姉さんは慌てて腕を掴んでくる。 「い、いや。行こうか」 こんなことで、折角のデートをふいにしてたまるか。 家を出てから姉さんの歩調が遅れる。俺からしてみれば、よくあんなヒールのあるサンダルなんて履けるものだと感心してしまう。 俺もなるべく遅く歩くようにしていたんだが、それでもまだ早いらしい。 パタパタと小走りして追いかけてくる姉さんが大変そうで、 「手、繋ごう」 と姉さんの手を取った。 これなら、確実に姉さんの歩調に合わせることができる。 「これならはぐれずに済むだろう?」 しかし、前に1度手を取ったことがあるが。 姉さんの手は華奢で、少しでも力を加えると壊れてしまうんじゃないかと少しだけ怖い。 それに、こんなに小さかったかと思う。 これは体だけでも俺が成長したという証拠なんだろうな。 まだまだ成長が足りないのは分かっている。早く追いつきたい、そんな逸る気持ちに俺の心は支配されている。 電車に乗れば人が多い。俺たちと同じく夏休みの学生が大半だ。 こういうときも、自分の恵まれた体格に感謝する。 人に潰されることがない。窮屈なことは窮屈だし、不快に思うこともあるが、少なくとも、今は姉さんを守ることが出来る。 目的地の駅で降りてあとは歩いて水族館へ。 昨日もこの近くに来たけど、今日もいい波が来ている。 「え、紳一。いい波って?」 声が漏れていたらしい。姉さんは驚いた顔で俺を見上げる。 「俺の趣味はサーフィンなんだ。と言っても時間がないから殆ど出来ないから趣味とは言えないだろうけど」 そう答えると、姉さんの目はこれ以上に無いくらい広がる。 「何、その趣味。あ、だから黒いの?」 「それは、もとから。子供のときからそうだっただろう?」 「う、確かに。え、波に乗れるの?ジョニーさん...」 「ジョニーって誰だよ。まあ、乗れるよ」 「うわー、見たい!」と姉さんがはしゃぐから「じゃあ、今度見せてやるよ」と答えておいた。 水族館でも人は結構いた。 「デートスポットだからね」 と笑いながら姉さんがそう言う。 もしかしたら、この間寝言で名前を呼んでいた男とも来た事があるのかもしれない。そう思うと凄く、悔しい気持ちになる。 そして、姉さんがまたその男のことを思い出して悲しくならないかと心配になる。 が、今の姉さんの表情を見たらそんなこと全くなくて、全然そんな感じがしないから俺も気にしないことにした。 水族館の大型水槽の前で魚を指差しながら確認する姿は、幼い少女のようで思わず顔が緩む。 良く考えてみれば、姉さんとは1つしか違わないから、学校の、クラスの女子と何の変わりも無いはずなのに、何故こんなにも距離を感じるのだろうか。 俺が大学に上がればこの隔たりは感じなくなるのだろうか...? 「紳一、どうしたの?」 大型水槽の前ではしゃいでいたはずの姉さんがいつの間にか側に戻ってきて俺を見上げる。 「あ、いや。何でもない」 「紳一が水族館に行きたいって言ったんだよ?楽しくない?」 心配そうに上目遣いで聞いてくる。 そんな表情をされたら心がざわりと騒ぐ。 一度目を瞑り、心を鎮めて 「いや。楽しいよ。次は、熱帯魚あたりに行こうか」 再び手を取り、場所を移動する。 アシカショーやイルカショーを見て食事をして、姉さんの希望で帰る前に土産物売り場へ向かった。 俺はその外で待っていると、少しして、店から姉さんが出てきた。 「持とうか?」 少し大きな袋を持って戻ってきた姉さんに聞くと一瞬驚いた表情をして 「ううん、大丈夫。ありがとう」 と微笑む。 来た時と同じく、電車に揺られ余り遅く無い時間に帰宅した。 「楽しかったよー。ありがとう」 サンダルを脱ぎながら姉さんがそう言う。 「いや、俺の方こそ。ありがとう」 わがままを聞いてくれてありがとう。 姉さんは家に上がるとすぐに森村さんを探した。 彼女に、さっき買ったどこにでもありそうな定番の土産を渡す。 森村さんは驚き、姉さんに礼を言っていた。 そんな2人の光景横目で見ながら俺は自室へ向かった。 部屋のドアに手を掛けると 「紳一、待って」 と姉さんが声を掛けてきた。 「何?」 「これ、プレゼント。全国2位おめでとう。で、こっちがベスト5おめでとう」 そう言ってさっきの土産袋ではなく、自分が持っていたバッグから何かを取り出して渡してくる。 受けとってみると、確か、『全国2位おめでとう』がバスタオル。『ベスト5おめでとう』が、スポーツタオル。 両方ともあの水族館のマスコットのイラスト付だ。 こんな可愛らしい物を俺が持っていたら皆に笑われるだろうとも思ったが、それでも姉さんから貰ったものという、単純な理由で、凄く嬉しかったりもする。 「可愛いでしょ?即買いしちゃった。学校で使うの恥ずかしかったら、家で使ってもいいだろうし。良かったら貰って」 そう言ってはにかむ。 「ありがとう。使わせてもらうよ」 礼を言って部屋に入る。 早速明日から使わせてもらおう。清田辺りが何か言いそうだが、そんなのどうだっていい。 |
牧さんの趣味は波乗りらしいです(笑)
なにやら黒板カード(一億冊売れた記念の企画だったらしいのですが、私は未入手)で明かされたとか...
牧さんのサーファー姿...
だから色が黒いのね!(笑)
桜風
07.1.25
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