告白





体が大きくて物静か。学校では品行方正・成績優秀で通っているらしい。

落ち着いたその物腰は既に社会人のような雰囲気を醸し出している。

バスケのことしか頭にないっぽいくせに、周りを良く見ているし面倒見もいい。


そんな彼は年下の男の子。



今日のバイトは日勤だったから終わった時間にはまだ日があった。

9月に入れば、高校生はまた学校が始まり、紳一も冬の大会に向けて部活動に勤しんでいる。

きっと大学から引く手数多だろうから、受験勉強をする必要はないだろうし、バスケに専念できるんだろうな。

あたしの今の時期といえば、あたふたしていた...


バイト先でかなりの量の差し入れを購入。

部員は数えるのが大変だし、減っていくから一々覚えていないと紳一が言っていた。

実際、新入生は半数以上辞めてしまったらしいし、大学受験を目の前にして3年も殆どが引退したらしい。

取り敢えず、これくらい買っておけばいいかと適当に当たりをつけて海南大附属高校へ向かった。

適当にそこ行く生徒にバスケ部の体育館を聞いて歩いた。

途中で迷って校舎の周辺をグルグルする。

「だから私立って!」

全く関係ないことを自分が迷った原因にして元居た場所を求めて彷徨った。

ふと、人の声が聞こえた。

その人に道を聞けばいいや、と思って近づくと。そこには紳一と、可愛らしい女の子が立っている。

「うわ」

思わず声が漏れて慌てて自分の手を口に当てる。

何、この雰囲気。

一応身に覚えありますよ...

予想通り、

「牧先輩、あの...好きです。付き合ってください」

と告白が始まる。

その言葉を聞いてあたしの心臓がドクン、と跳ねた。


何だか居た堪れなくなって只管そこから遠ざかるように走った。

しかし、あたしの勢いは長くは続かずに大きな衝撃と共に尻餅をついて止まった。

「うわ、すみません!!」

「信長!何やってるんだよ。あれ...?」

聞き覚えのある声に顔を上げると、以前紳一が連れてきたお友達の、

「神くん、清田くん」

名前を呼ぶと、二人は顔を見合わせて

「お久しぶりです」

と口々に答えた。

「何で俺の名前知ってるんですか?」

興味津々に声を掛けてきたのは清田くん。

「試合、何回か見に行ったから。ほら、紹介とかあったでしょ?」

「なるほどー」と満足そうに頷く清田くん。

「あの、えーと。さん、でしたよね?牧さんを探してるんですか?」

紳一の名前を聞いて、また心臓が跳ねる。

「いや、別に紳一が居なくても良いんだけど。これ、差し入れに持ってきたの。甘いのダメな人が居るかもしれないし、足りなかったらごめんね」

「大丈夫っスよ。もうあんまり残ってませんから。ありがとうございます!!」

「ありがとうございます。...見て行きますか?牧さん、今ちょっと外していますけど、もう少ししたら戻ってくると思いますよ」

神くんの申し出を丁重に断って家に向かった。


家に帰って溜息を吐く。

何であたしは逃げるようにして帰ってきてるんだろう?

紳一は、バスケやってるときは確かにカッコイイと思うし。たぶん、あの調子なら学校でも周りの面倒も苦なく見れるんだと思う。

年齢以上に落ち着いている彼の雰囲気に憧れる同級生だって居るだろうし。


夕食を食べ終わった後、ベッドの上でレポートの課題になっている本を読みながらゴロゴロしていた。

ふと、あたしの部屋の前で人の気配が止まる。

きっとこれは紳一。

今日も叔父さん叔母さん共に遅いし、森村さんはとっくの昔に帰った。

どうしたものかと迷った挙句、狸寝入りを決め込んだ。

ノックをした後、「姉さん」と声を掛けてくる。返事がないのに紳一はドアを開けてきた。

「なんだ、寝てるのか...」

そう言って更に部屋に入ってくる。

「布団も掛けないで」

と言ってあたしを軽々と抱えて掛け布団を剥ぐ。

あたしの心臓はさっきから忙しなく鼓動を打ち付けている。

どうか、紳一には聞こえませんように。

只管それだけを祈って目を瞑ったまま抱えられていた。

あたしの手から本を抜いて閉じる。布団を丁寧に掛けて紳一はベッドから離れていった。

「おやすみ」

という耳に心地良い音が聞こえ、部屋は暗くなりドアが静かに閉じられた。


「何やってんだろう...」

紳一を目の前にして逃げるように狸寝入りをしてしまった自分に心底呆れてしまった。


牧さんはモてると思います。
前髪を下ろすようにしてから特に(←拘るなぁ(笑)
神さんもモテそうだけど、牧さんはあまりにも女の影がなさ過ぎてモテそう。
そんな感じ。


桜風
07.1.26


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