| 幼い頃から憧れていた。 一緒にいたくて必死に後ろを着いて歩いていた。 久しぶりに再会した彼女は何だか頼りなく感じる反面、綺麗になったことに少なからず戸惑いを覚えた。 そして、俺が彼女へ向ける想いが変わっていることに気付く。 どうしようもなく焦りを感じてしまう自分に気付き、更に子供だということを実感してしまう。 たったひとつの年の差がこんなに大きなものだと気付かされて、打ちのめされることも少なくない。 「すまない」 初めてではない言葉を口にする。 俺の目の前の女子は目に涙を溜めて微笑み、走っていった。 そんな表情を見る度に、胸が痛む。 が、他に好きな人が居るのに付き合うことなんて俺には出来ないし、それは彼女たちに対しても失礼だ。 少しだけ、情け無い思いを抱いて体育館へと戻る。 校舎裏から出てきたところに、神と清田が居た。 「どうした、お前たち。ん?何だ、それは?」 清田の手に見慣れないものがある。 「ああ、これっスか?さっきさんが持ってきてくれたんスよ。差し入れって。いやー、気が利く人っスね!!」 デレっとした表情の清田を軽くはたく。何か、ムカツク... 揃って体育館へ向かう途中、神が 「牧さん、さっきさんも牧さんが来たほうから走ってきたんですよ。信長とぶつかって。怪我はなさそうだったんですけど...」 神の言葉に思わず眉間に皺が寄るのが分かる。 姉さんが? ...もしかして、聞かれた? 別に、何も後ろめたいことなんてしていないのに、どうしてか落ち着かない。 「帰ったら聞いてみるさ」 「ええ、ぶつかった相手が信長ですからね。華奢なさんが怪我してなきゃいいですけど...」 その後、残った部員と練習をして姉さんからの差し入れも皆で分けた。 かなりの量あったため、残ったものは清田が持って変えると駄々をこねた末に持って帰ることになった。 「付き合うか?」 シュート練習を始めるという神に声を掛けると 「そうですね、お願いできますか?」 と珍しい返事がある。 他の部員が帰ってからシュート練習が始まった。 俺がブロックに入って、神はそれを避けてのシュート。 相変わらずの綺麗なシュートフォームに溜息が漏れる。 「牧さん」 不意に声を掛けられた。 「何だ?」 「さん、見たのかもしれませんね」 そう言ってボールを放つ。 「何をだ?」 「さっき、校舎の裏。俺が預かった手紙の返事をしに行ったんですよね?」 「ああ、まあ。そうだが...」 「ということは、さんはその現場を目撃してしまったんじゃないですか?牧さんが戻ってくる時間から考えて、そういうタイミングだったような気がするんですよね」 そんなことを言う。 しかし、 「そうだとしても、姉さんには関係の無いことだろう?」 神にそう言えば、何か物言いたそうに溜息を吐く。 「何だ?」 「何でもありませんよ」 「そうは見えないんだが?」 食い下がると、神はまた溜息を吐く。 「さんに会ったとき、俺、練習を見に来ないかって誘ったんですよ。でも、断られました。牧さんの名前を出したら、一瞬表情が強張ったし」 「俺は、お前が何を言いたいのかさっぱり分からん。はっきりってもらえると助かるんだが...?」 いい加減、神との問答にも飽きた。何が言いたいのかさっぱり分からん。 「さんは、牧さんのことをどう思っているんでしょうね?」 そう言ったきり、神は姉さんの名前を口にすることはなかった。 俺が一番知りたい疑問を俺にぶつけるな。 神の練習にも付き合ったため、家に帰る時間はいつもより遅くなった。 姉さんも流石に夕食は済ませたらしい。 部屋に荷物を置いて、シャワーでも、と思ったとき神の言葉が頭を過ぎる。 『さんは、牧さんのことをどう思っているんでしょうね?』 「知るか!」 吐き捨てるようにそう言って部屋を出た。 姉さんの部屋の前で足が止まる。 そういえば、差し入れの礼を言っていない。 部屋のドアをノックして声を掛ける。 返事が無いけど部屋の明かりが漏れているから起きているのだろう。 そう思ってドアを開けるとベッドの上に姉さんが寝ていた。 本を読む途中に眠ってしまったのか、指が本の間に挟まっている。 「なんだ、寝てるのか...」 まだ夏とは言え、少しずつ夜は冷え始めた。 このままでは風邪を引きかねない。 「布団も掛けないで」 本人の許可なしに部屋に入り込むのは良くないと思いつつも、姉さんが寝ているベッドの側に立つ。 姉さんを抱えて掛け布団を剥ぐ。 髪から香る微かなシャンプーの匂いに少しだけ眩暈を覚える。 ぷっくりとしたみずみずしい唇。少し赤みの射した健康的な頬。目を瞑っている睫毛は長く、陶器のような滑らかな肌。 もっと触れたいという衝動を押さえ、姉さんの手から本を抜いて栞を挟んで閉じる。布団を掛けてベッドから離れた。 「おやすみ」 声を掛けて電気を消して部屋を出た。 「はぁ...」と溜息と共に、ドアに背をつけてズルズルと崩れて頭を抱える。 流石の俺でも、あれ以上は持たない。 「はぁ」ともう一度溜息を吐く。 情けない... |
襲っちゃえ、牧さん(←いけません...)
神さんは周りを見てそう。冷静に。
そして、清田がまたしても気の毒ポジション。
まあ、1年の宿命として受けとってくれたまえ(笑)
桜風
07.1.29
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