| 幼い頃から憧れていた。 一緒にいたくて必死に後ろを着いて歩いていた。 久しぶりに再会した彼女は何だか頼りなく感じる反面、綺麗になったことに少なからず戸惑いを覚えた。 そして、俺が彼女へ向ける想いが変わっていることに気付く。 どうしようもなく焦りを感じてしまう自分に気付き、更に子供だということを実感してしまう。 たったひとつの年の差がこんなに大きなものだと気付かされて、打ちのめされることも少なくない 家に帰ると誰の靴もなく、俺が最初に帰宅したことが分かる。 そういえば、姉さんは今日はバイトだとか言っていたな... 姉さんがウチに来てからというもの、独りで家の中に居るということが減った。 今まで個食も家の中で独りという生活も当たり前に思っていたが、あの人がそれを変えた。 良い事だとか悪い事だとか言うつもりはない。 ただ、俺にとってそれは楽しいものだったのは、確かだ。 以前話してたけど、自活を目標にしているのかもしれない。 だったらバイトをするのは当然だろうし、それについて俺がどうこう言うのも筋違いだろうから黙っているけど。 ずっとこの家に居れば良いと思う。 食事を済ませて風呂に入って時計を見れば12時。 いつもバイトは5時間くらいと言っていたから、そろそろ帰ってくるはずだ。 俺ももう夏休みに入るし、少しくらい夜更かしして待っていようとテレビをつけて監督から借りたバスケの予選のビデオを見ていたが、3本見たところで時計を見ればあっさり2時前。 流石に遅すぎる。 携帯に電話をしても出てこない。 姉さんだって子供じゃないんだし、色々あるとは思うけど。 何の連絡もなしにこの時間はどう考えてもおかしい。 財布を引っつかんで家を飛び出した。 走って駅近くの公園に差し掛かる。 ブランコに人が座っていて、それが姉さんだと気付いたときには思わず息を吐く。 「ったく。無防備というか...今何時だと思っているんだよ」 途絶えることなく文句が口から湧いてくる。 「姉さん」 声を掛けても返事が無い。 体を揺らすとガクリと崩れてブランコから落ちそうになるのを受け止めて支えた。 どうしたんだ!? 顔を覗くと、目を瞑っている。 そしてその足元には未成年者が口にしてはいけない液体が入っていたはずの空き缶が転がっていた。 「何をやってんだか」 散らかしてある空き缶を集めて側においてあるコンビニのビニール袋に入れて持つ。 そして 「姉さん、負ぶさって」 腰を落として背中を向ける。 寝惚けている感じの姉さんは「うん」と返事をして俺の背中に体を預ける。 思ったよりも軽い。 「全く。酒が飲みたいなら家に帰って飲めばいいだろう?」 起きているとも寝ているとも判じれない姉さんに文句を言うと 「忠義...」 と知らない男の名前を呟く。 そして、すこし温いものがぽたりと俺の肩に落ちた。 それが何かと考えるまでもなく、俺は奥歯を噛み締めた。 何があったかなんて、予想の域を超えないし、それ以上詳しく知りたいと思わない。 でも、俺だったらこの人を泣かせることは選ばない。 「俺にしとけよ」 届かない想いを口にして、少しだけ後悔した。 姉さんをそのままベッドに寝かしつけた。 翌朝、いつもどおりに起きてみると誰もいない。 姉さんはまだ寝ているようだ。 ソファに座って昨日の続きを見ていると人の気配がした。 「起きたか」 声を掛けると 「おはよー。学校は?」 と聞いてくる。 「世に言う夏休みというやつだ」 答えると一瞬眉を顰めて無言で頷いた。 そして、時計を見て突然走り出した。 正しくは2歩で足が止まったから『走り出した』というのとは違うと思うが... 「何処行くんだ?」 「学校」 学校...? 「今日は土曜だが?学校は無いだろう。大人しく家に居ろよ。どうせ二日酔いにでもなってるんじゃないか?」 青い顔をしている姉さんを見れば誰だってそう思うだろうな。 姉さんはリビングのテーブルについて顔を突っ伏す。 「紳一ぃ、水頂戴...」 溜息を吐いて冷蔵庫へ向かう。考えて飲めよな。 冷蔵庫から良く冷えた水を取り出して透明なコップに注ぐ。 姉さんの前にそれを置くと彼女は一気飲みした。 そんな飲み方したら... 予想通りに彼女は「くー!」と言いながら頭を軽く叩いている。 「何やってるんだか」と溜息混じりにそう言って姉さんの目の前に座った。 「叔父さんと叔母さんは?」 いつもどおりに話しかけてくる。 昨日、流した涙も忘れてしまったかのようにいつもどおりの姉さん。 「昨日から旅行だってさ。俺も午後から部活あるから大人しく寝てろよ」 「あー、そっか。全国間際だもんね」 ちょっと前に決まったことだし、決勝を見に来ていたから姉さんが知ってるのも当然だけど、覚えていてくれたのが、正直嬉しい。 「そう。その大事な時期に従姉の面倒を見てるってことだ」 照れ隠しにそう言うと 「お世話様!」 少し怒った口調で返された... 「どういたしまして」 そんな分かりやすい姉さんが可愛くて、余裕ぶってみた。 本当は今の俺の心は色んな感情が渦巻いていて余裕なんてものは一片も無いというのに... |
ヒロインが口にした人物の名前は、私が最近気になっている人の名前(笑)
ステキなんですよ、彼(苦笑)
それはともかく。
牧さん辛い片想い。
でも、そんな感じを醸し出さないところがオトナですかね?
桜風
07.1.19
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