| 体が大きくて物静か。学校では品行方正・成績優秀で通っているらしい。 落ち着いたその物腰は既に社会人のような雰囲気を醸し出している。 バスケのことしか頭にないっぽいくせに、周りを良く見ているし面倒見もいい。 そんな彼は年下の男の子。 8月に入ってすぐに紳一は広島へ向かった。 今年のIHは広島であるらしい。 「なるべくゆっくり帰っておいで」 そう見送ると 「まあ、決勝が終わるまで帰って来れないからな。試合があるし」 と自信満々のコメントを返事代わりにして大きなスポーツバッグを肩に掛けて玄関を出て行った。 部屋に帰ってネットで決勝戦の予定日を見てみる。そして、自分のバイトの予定も。 決勝戦の日の前日は昼のシフト。 そして、翌日は夜。 これはもう、行くしかないよね?! 「というわけなんですけど。留守にしても大丈夫でしょうか?」 それでも居候の身としては、家主に意向を確認しておかなければらない。 「いいよ。ホテルも手配してあげよう」 「いえ、あの。そこまでは...」 「いやいや。ちゃんは私たちの代わりに紳一を応援してくれると嬉しいよ」 「でも、紳一、くんに言うつもりは無いんですけど」 あたしの言葉に叔父さんは首を傾げたけど、 「いいんだよ。だから、帰ってきたら試合のことを教えてくれるかな?」 「ええ、それは勿論」 「私もあの子の試合を見に行ったこと無いから、皆さんが褒めてくださるけど何が何だかわからないのよね」 溜息交じりで叔母さんがそう言う。 確かに叔父さん夫婦は何だかんだで忙しくて家を空けていることもしばしばだ。 という訳で許可も下りたし、決勝のみ広島で観戦することにした。 前日、バイトが終わって広島に向かった。ホテルに着いてチェックインする。 激励のメールでも送ってみると1時間くらいして電話が鳴る。 「もしもし?」 『姉さん』 「あ、紳一。どうしたの?明日に備えて早く寝なくても大丈夫?」 『ああ、大丈夫だ。どうしたんだよ、いきなりメールって』 「いやいや。何だか『頑張って』って言っておきたくてね。言ったとおりになったね」 少し考えた後に 『...何が?』 と聞き返す。 「ほら、紳一。広島に行く日の朝に決勝戦の日も試合があるって言ってたじゃない?」 『ああ、言ったな』 「だから、そのとおりになったね」 『まあ、そうだな』 そして、電話をしているところに『牧さーん!』と聞き覚えのある声が割り込んできた。 紳一は短く息を吐いて、 『ああ、今行く』 とその声に返事をし、 『悪い、呼び出された』 「みたいだね。じゃあ、明日。頑張ってね。...応援してるから」 『ああ、ありがとう』 そう言って紳一は電話を切り、無機質な電子音が聞こえるだけになった。 ホテルは決勝の会場の側だから迷わずに行けるし、決勝の時間はそんなに早くない。 あたしもゆっくり夜を過ごすことにした。 翌日、少し早くに会場へ向かうと結構人が多いことに驚く。 会場周辺の会話の中で『牧』とか名前を聞くと、紳一って本当に凄いんだって改めて感心してしまう。 試合は、結局負けて全国2位となった。 それでも、凄い成績だと思うし、何より紳一はベスト5にも選ばれた。 本当に、紳一の凄さを改めて実感する。 ただ、ひとりで何でも出来て、そして、周囲の期待に応えれて。 そんな紳一は何だか嫌だと思った。 それは多分、ただの嫉妬。 皆に期待されてそれに応えられる紳一は、あたしにとっても自慢の従弟だし、誇らしく思う。 その反面。 昔はあたしの後をついてきていたその紳一が、今ではあたしの遥か前を歩いているようで、どうしようもなく寂しく感じた。 |
IHが広島。
きっと決勝はグリーン●リーナですよね。
近いところにホテルあるんですよ〜(笑)
そして、またしても(?)間の悪い清田信長。
頑張れ!(笑)
桜風
07.1.22
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