| 幼い頃から憧れていた。 一緒にいたくて必死に後ろを着いて歩いていた。 久しぶりに再会した彼女は何だか頼りなく感じる反面、綺麗になったことに少なからず戸惑いを覚えた。 そして、俺が彼女へ向ける想いが変わっていることに気付く。 どうしようもなく焦りを感じてしまう自分に気付き、更に子供だということを実感してしまう。 たったひとつの年の差がこんなに大きなものだと気付かされて、打ちのめされることも少なくない。 広島に向かう日の朝、姉さんが玄関で見送ってくれた。 「なるべくゆっくり帰っておいで」 これは、きっと上に行ってこいということだと思う。 だから、 「まあ、決勝が終わるまで帰って来れないからな。試合があるし」 と返事をして玄関を出た。 少しでも姉さんに近づきたい。 何をしたら良いのか分からないなら、今の自分にできることをするしかないんだ。 そして、今の俺に出来ることはただひとつ。 IHで実力を出し切ること。 IH決勝前日。 ミーティングが終わって部屋に戻り携帯を見てみると、メッセージを受信したとある。 開けてみると姉さんから。 『明日の試合、頑張ってね』 その一言を読んだ途端、俺は部屋を出て携帯を弄っていた。 『もしもし?』 「姉さん」 どうしようもなく声が聞きたくて電話を掛けた。姉さんの声は驚きがにじみ出ている。 『あ、紳一。どうしたの?明日に備えて早く寝なくても大丈夫?』 「ああ、大丈夫だ。どうしたんだよ、いきなりメールって」 『いやいや。何だか『頑張って』って言っておきたくてね。言ったとおりになったね』 言ったとおり...?何だったっけ?? 「...何が?」 結局思いつかないため、聞いてみると 『ほら、紳一。広島に行く日の朝に決勝戦の日も試合があるって言ってたじゃない?』 という返事があり、思い出す。 「ああ、言ったな」 『だから、そのとおりになったね』 「まあ、そうだな」 そんな会話をしているところに 「牧さーん!」と清田が俺を呼びに来る。 心の中で舌打ちをして「ああ、今行く」と返事をした。 「悪い、呼び出された」 姉さんにそう言うと苦笑混じりに 『みたいだね。じゃあ、明日。頑張ってね。...応援してるから』 と言われる。 「ああ、ありがとう」 例え社交辞令でも『応援してる』と言われたら頑張らないわけにはいかない。 結局試合には負けてしまったが、今の実力は出し切れたと思う。 俺個人としてはベスト5に選ばれた。 ただ、少しだけ気になっていることがある。 試合中、チラッと見えた観客の中に姉さんが居たような... もしかしたら、俺は自分が思っている以上に姉さんに会いたいという気持ちが募っていたのかと少しだけ呆れる。 いつまでもあの人の後ろを歩いているようで、何だか情けない。 取り敢えず、姉さんへの土産には何を買って帰ろう。 広島名物...しゃもじ? 要らないと言われそうだから、取り敢えず広島銘菓でも買って帰ろう。 しかし。こんなに早く家に帰りたいと思ったことなんて無いな... |
試合中、牧さんはヒロインに気付きました。
でも、態々広島まで来ているはずが無いと思って見なかったことに。
ああ、勿体ない(笑)
桜風
07.1.23
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