海沿いを走る電車、3両目 6





藤真くんはバスケ部で、しかもレギュラーらしい。

強豪校だから練習もきつくて、けれどその後の居残り練習は必至だとか。

部員数が神奈川一の多さかもしれないとも言っていた。

「チームメイトの名前、覚えられるの?」

聞いてみたら彼は苦笑する。

「全員はまず無理。同学年でもやっぱり全員は難しいですね」

「何か、部活の仲間って『友達』って感覚と近いと思ってたんだけど」

「ポジションが被っていないと、確かに友人で間違いないかもしれないですよ。実際、1年のときからつるんでる奴ら居ますし。けど、ポジションが被ったら間違いなくライバルですね。馴れ合いってのは難しいですよ」

強豪校ならでは、と言うことなのかな...

さんは、高校時代部活は?」

「部活はやらなかった。その代わりの図書委員」

「図書委員、ですか。本が好きなんですか?」

藤真くんが何やら興味を持った。

「うん、本は好き。だけど、それだけじゃないんだよ、図書委員って」

そう言うと益々興味を持った視線を向けてくる。

「何があるんです?」

「図書館って、テスト期間中、勉強しに来る生徒で一杯にならない?」

そういうと彼は苦笑して

「基本、図書室を利用しない生徒なんです」

と言う。

「そうなの?」

「入学して、数えるくらいしか行ってないですね」

「あら、そうなの...」

「すみません。えっと、それでテスト期間中?」

話を促してくれた。

「えっと、テスト期間中。そうそう。テスト期間中は勉強しに来る生徒が溢れるの。ウチ、公立だったから校舎に冷暖房なかったんだけど、図書室は冷暖房が入ってて、それ目当てに。テスト前は基本的に飽和状態。図書室の自習スペースの確保は至難の業だったわー」

「そんなに?」

藤真くんが驚く。

「藤真くんの学校って私立?」

「そうですね」

「じゃあ、冷暖房完備?」

「ボロいからそんなに効かないですけど。一応、冷暖房設備はありますよ」

苦笑して彼が答えた。

私立って設備投資結構頻繁なんだと思ってたけど...

高校時代、無駄に私立高校の設備に敵対心を持っていたけど、それは間違いだったらしい。

「そうなんだ...あ、で。わが母校は公立高校。冷暖房設備がある図書室は人気スポットなんだけど。図書委員は司書室を使えるの」

「司書室?」

「図書館には常駐している司書の先生いない?」

そう聞いてみると、彼は苦笑した。

ああ、そうか。図書館利用頻度が少ないから知らないのかも...

「いたのよ、私の学校には。その部屋を使わせてもらえてたの。結構便利だったよ。図書委員同士仲良かったから、軽い部活みたいな感じだったし」

「なるほど」

本当に納得してくれたのか不明だけど、藤真くんは納得してくれた。


そして、今度は彼からの質問。

わたしのバイトについて何か興味があったようだ。

シフトのこととか。

しかし、彼は部活で忙しいからそんなことをしている暇は無いのだろう。

私は高校のときからバイトはしていたし、そういうものだと思っていたけど、彼にはそんなバイトのアレコレは新鮮なことだったらしい。

少しだけお姉さんぶれて嬉しかった。



藤真くんとは、電車で一緒になったら話をするようになった。

私の地元がこっちじゃないこともあって、話題は豊富だった。

何せ、大学に入ってからこっちの観光をしていないのだ。

「しないんですか、観光」

そう聞かれて苦笑した。

「うーん、見事にタイミングを逸した感じ。夏休みに入ったら帰省前にプラプラするわ」

「じゃあ、オレ、時間があったら案内しますよ」

藤真くんはそう言ってくれた。









桜風
12.11.7


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