| 藤真くんはバスケ部で、しかもレギュラーらしい。 強豪校だから練習もきつくて、けれどその後の居残り練習は必至だとか。 部員数が神奈川一の多さかもしれないとも言っていた。 「チームメイトの名前、覚えられるの?」 聞いてみたら彼は苦笑する。 「全員はまず無理。同学年でもやっぱり全員は難しいですね」 「何か、部活の仲間って『友達』って感覚と近いと思ってたんだけど」 「ポジションが被っていないと、確かに友人で間違いないかもしれないですよ。実際、1年のときからつるんでる奴ら居ますし。けど、ポジションが被ったら間違いなくライバルですね。馴れ合いってのは難しいですよ」 強豪校ならでは、と言うことなのかな... 「さんは、高校時代部活は?」 「部活はやらなかった。その代わりの図書委員」 「図書委員、ですか。本が好きなんですか?」 藤真くんが何やら興味を持った。 「うん、本は好き。だけど、それだけじゃないんだよ、図書委員って」 そう言うと益々興味を持った視線を向けてくる。 「何があるんです?」 「図書館って、テスト期間中、勉強しに来る生徒で一杯にならない?」 そういうと彼は苦笑して 「基本、図書室を利用しない生徒なんです」 と言う。 「そうなの?」 「入学して、数えるくらいしか行ってないですね」 「あら、そうなの...」 「すみません。えっと、それでテスト期間中?」 話を促してくれた。 「えっと、テスト期間中。そうそう。テスト期間中は勉強しに来る生徒が溢れるの。ウチ、公立だったから校舎に冷暖房なかったんだけど、図書室は冷暖房が入ってて、それ目当てに。テスト前は基本的に飽和状態。図書室の自習スペースの確保は至難の業だったわー」 「そんなに?」 藤真くんが驚く。 「藤真くんの学校って私立?」 「そうですね」 「じゃあ、冷暖房完備?」 「ボロいからそんなに効かないですけど。一応、冷暖房設備はありますよ」 苦笑して彼が答えた。 私立って設備投資結構頻繁なんだと思ってたけど... 高校時代、無駄に私立高校の設備に敵対心を持っていたけど、それは間違いだったらしい。 「そうなんだ...あ、で。わが母校は公立高校。冷暖房設備がある図書室は人気スポットなんだけど。図書委員は司書室を使えるの」 「司書室?」 「図書館には常駐している司書の先生いない?」 そう聞いてみると、彼は苦笑した。 ああ、そうか。図書館利用頻度が少ないから知らないのかも... 「いたのよ、私の学校には。その部屋を使わせてもらえてたの。結構便利だったよ。図書委員同士仲良かったから、軽い部活みたいな感じだったし」 「なるほど」 本当に納得してくれたのか不明だけど、藤真くんは納得してくれた。 そして、今度は彼からの質問。 わたしのバイトについて何か興味があったようだ。 シフトのこととか。 しかし、彼は部活で忙しいからそんなことをしている暇は無いのだろう。 私は高校のときからバイトはしていたし、そういうものだと思っていたけど、彼にはそんなバイトのアレコレは新鮮なことだったらしい。 少しだけお姉さんぶれて嬉しかった。 藤真くんとは、電車で一緒になったら話をするようになった。 私の地元がこっちじゃないこともあって、話題は豊富だった。 何せ、大学に入ってからこっちの観光をしていないのだ。 「しないんですか、観光」 そう聞かれて苦笑した。 「うーん、見事にタイミングを逸した感じ。夏休みに入ったら帰省前にプラプラするわ」 「じゃあ、オレ、時間があったら案内しますよ」 藤真くんはそう言ってくれた。 |
桜風
12.11.7
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