| 決勝リーグ最終戦の帰りにより道をして帰ることにした。 今年もIHに出場できる。だが、地区大会は優勝できなかった。 今年こそ、と思っていたのに海南大附属高校が優勝した。 IHは毎年どこかの都道府県で行われる。 会場が毎年違うからそれはそれで楽しみだ。 そういえば、お土産を買って帰ろう。 何となくそう思った。 会場近くのファミレスに入る。 「いらっしゃいま..せ?」 なぜか疑問系の挨拶。 そちらに視線を向けて驚いた。 「さん?!」 「わ、巨人の国!」 何だか凄い単語を彼女は口走った。 そして、オレは振り返る。 巨人の国の奴らがニヤニヤしている。 「ちわー」 口々に挨拶をした。 彼女は呆気に取られていたけど、気を取り直して 「お席にご案内します」 と仕事を始める。 「おいおい、藤真さん。知ってたんじゃないんですかー?」 高野が言う。 「知るわけ無いだろう!」 てか、知ってたら絶対にお前らと一緒にこねーよ! 彼女はメニューを持ってきて「本当に皆大きいですねー」と感心していた。 そして、オレを見る。 「藤真くんが、謙遜する気持ちがよく分かった」 「無駄に目立つからやなんですよ」 そう返したら彼女は苦笑し、皆は文句を口にする。 彼女は笑い、「ご注文が決まりましたら、そちらのボタンを押してください」と言って席から離れていく。 「アレが噂のちゃん」 「お前、いつの間に『ちゃん』呼びだ」 てか、1回話しただけで名前を覚えてるとか... 「あの人が、イマドキ超珍しい素直すぎるお嬢さんか」 「何か、お前ら帰れ」 そう言うと「やだー」とか「オレは楽しくちゃんを観察する」とか好き勝手言う。 全員がガッツリ重いものを注文した。 それらを持ってきたのはさんじゃなかったけど、その後、お冷のお替りを持ってきてくれたのが彼女だった。 「わー、さすが男子高校生。胃袋の仕様が違うね」 テーブルの上には、空いた皿が広げてある。 「ちょっと待っててね。お皿下げるから」 お構いなく、というのは少し変な気がして「はい」と返事をした。 「おい、藤真が『はい』と言ったぞ」 「うるせー」 さんが居なくなってこいつらがまた騒ぐ。 まあ、本人の前で騒がないからまだマシか... 「そういえば、この間のとき、試合だったんでしょ?」 「ああ、はい」 あの後、あいつらが五月蝿かったからそそくさと店を後にした。 さんがバイトしている店を偶然知ることが出来たし、あそこなら大会とか、練習試合の帰りとか寄り易い。 漏れなくあいつらがついてくるけど... 「結果は?」 「IH出場は決まりました」 優勝できなかったことまでは言わなくて良いだろう。てか、言いたくない。 「ホント?凄いねー、おめでとう。ところで、IHって毎年開催県が違うんだよね。今年はどこ?」 今年の開催県を話すとさんは興味があるような表情をした。 「観光とかできるの?」 「それはたぶんスケジュール的に無理だと思いますけど、お土産買って帰りますよ」 「ホント?ありがとう」 彼女の笑顔はどこかいたずらっ子のようだった。 オレは試合中負傷した。 そのまま、チームは敗退し、短い夏が終わった。 医務室を後にし、チームに合流するべく、スタンドに向かう。 付き添いをしていた花形が「あ、」と呟く。 促されるようにして、オレは顔を上げた。 「..さん」 「怪我、大丈夫?」 「え、ああ。まあ...それよりも、どうしてここに?」 彼女はイタズラをして怒られた子供のようにシュンとした。 「地元なの」 「へ?」 間抜けの声が漏れる。 「私の、地元。この間藤真くんにIH開催県だって聞いて、藤真くんの応援がてらに帰ってきてたの」 「あ、そう..なんですか」 だから、観光できるのかと聞いたのかもしれない。 「すみません、せっかく応援するために帰ってきてたのに...」 かっこつけたかった。かっこいいところ見てもらいたかった。 「ううん、それは..ぜんぜん」 彼女は俯いた。 「藤真、そろそろ...」 花形が促してくれて助かった。 今、どうして良いか分からなかったから... 「じゃあ、さん。また...」 「あ、うん。怪我、早く治ると良いね」 「若いから大丈夫です」 そう言うと彼女は少しだけ笑った。 「羨ましいことで」と。 「オレ、わかったわ」 零した言葉に「何をだ?」と花形が問う。 「どうしたかったか」 「...そうか」 ここに居たのか花形で良かったよちょっとだけ思った。 |
桜風
12.11.14
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