xxx 1






初めて見たときは女の子のようだった。

けど、今では立派に男の子。

コートの中にいる彼には華があって、たくさんの視線を集めても淡々としている。

クールでカッコイイ、カッコつけすぎでいけすかないとか色々言われているけど、それはかなり誤解をしている。

あいつはクールでもなければ、カッコ付けでもない。それがあいつの自然体。でも、それはあいつの一面に過ぎない。


そいつの名前は流川楓。


湘北高校に入学してから、やっぱりと言うかさすがというか...

流川楓は何でかモテモテだった。

楓のクラスは1年10組。

私は9組。ついでに席は廊下側。

廊下から聞こえる誰かさんに対するざわめきのお陰で今日も昼寝が出来ません。


私と楓の出会いは、幼稚園の頃。

4歳だったかな?

彼は、幼稚園には通っていなかった。少し、体が弱かったから親が心配して外に出さなかったらしい。

楓の家は大きなお邸で華道の家元をやっている。

母が昔流川家に習いに来ていたので、私も習わされることになった。

小さいうちからそういう事は身に着けるように、ということだ。

お陰で着物は着慣れているし、お華の腕前も中々のものだ。

楓を初めて見たとき女の子だと思っていた。

だって、振袖を着ていたから。

後で聞いた話によると、女の子の格好をして過ごすのは魔よけのまじないとなるらしい。

だから、体の弱かった楓は病気という魔から逃れるために女の子の格好で過ごしていた。

華道の家元で、私と同じ年なんているはずもなく、そして楓も同じ状態だったから私たちは自然と仲良くなった。

まあ、楓が男の子だって聞いたときには子供心に騙された!って思ったけど...


そんなこんなで私と楓の友情は10年以上続いている。

でも、同じ学校に通うのは高校が初めて。

小学校も中学校も学区が違ってたから、幼馴染でありながら同じ学校に通うことがない、一緒に過ごした時間が極端に短い奇妙なものとなっている。

そもそも、これって本当に幼馴染と言うのだろうか??


「おう」

「うぃー」

朝会うと挨拶を交わす。

既に半分夢の中だと言うのに、楓は私の教室の前を通るとき必ず声を掛けてくる律義者。

ただ、その「おう」が挨拶とは思えず、寧ろ寝言の類に思われているらしく、周りは意外と何も言ってこない。

うわ、寝ぼけキャラって便利...


ある日、屋上でサボっていたら楓がやってきた。

その場でごろんと寝転ぶ。

少しして、3年生かな?がやってきた。

そして、楓を蹴っ飛ばす。

あーあー...

楓はムクッと起き上がり、

「1年10組流川楓。何人たりとも俺の眠りを妨げることは許さん」

と言って3年を蹴っ飛ばした。

楓は寝起き最悪と聞いた。

毎朝早く起きて公園で練習をしているそうだ。

そして、夜も体育館に残って練習をする。

休みのときは体育館が使えなかったら、やはり外でリングが見えなくなるまでずっと練習。

楓にとってバスケは空気と同じようなもので、有って当たり前だし、そして、それがなければ生きていけないのではないかと思うくらいバスケが生活の中心になっている。

そんな楓の唯一の趣味は『寝ること』であり、それを邪魔されれば怒るのだ。

まあ、こんな屋上で堂々と寝ている新入生は目をつけられても仕方ないと思うけど...

私みたいにコソコソしておけばいいのに、と少しだけ思う。

しかし、眼下の楓はあっという間に上級生をねじ伏せた。

そして、遅れてやってきた赤毛の同級生、私と同じ和光中の桜木がやってきた。

なにやら揉めはじめる。

頭から血を流した楓だが、更に人がやって来てややこしくなっている。

うわー、出て行きづらい。

親切にもハンカチを貸してくれるという女の子に冷たい態度を取った楓に桜木が切れて、収集がつかないかと思われたが、どうにかこうにか、桜木が振られて話が纏まったようで。

そうなれば降りていっても大丈夫かと思って貯水タンクから降りた。

こそこそと出て行こうとしたのに、水戸に見つかってしまい、

「あれ?じゃないか」

と声を掛けられる。

「おす」

「んー?ああ、か」

「どもス」

「お前、此処でサボってたのか?真面目に授業受けろよ」

「そっちもね。じゃあ」

そう言って屋上を後にする。

階段を駆け下りて、

「楓!」

フラフラ歩く楓の姿を見つけた。

...か」

「病院行っとく?保健室で我慢する?てか、頭から血が出てるの、どう言い訳するの?」

「...寝ながら歩いてたら階段からこけた」

「まあ、楓なら有りかもね、それ」

本当にそうなりそうで、ちょっと可笑しかった。

「お前、さっき居たのか?」

「うん、貯水タンクのところにね。楓も今度からそこまで上がってきなよ」

「めんどくせぇ」

そう言って微かに笑う。

「だよねー。で、どっちにする?病院?保健室?」

「...保健室に行ってみる」

そう言うから

「ほら、これ充てときな」

とハンカチを渡した。

「わりぃな」

そう言って私の手のハンカチを受け取り、傷口に充てる。

「じゃあ、私は教室に戻るから」

「ああ、ハンカチは新しいの買って返す」

「可愛いのよろしく」

「似合わねぇだろ、そんなの」

そう言って楓は保健室へと向かっていった。


さて、次は数学。

口うるさいおっちゃんの授業だ。










桜風
07.8.3


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