| 部活動が始まって、変なやつに絡まれたりしてるけど、それなりの生活を送っている。 やっと部活が終わったあとも残って体育館で練習することが出来るようになった。それが一番嬉しいことだ。 中学のときの先輩は、相変わらず元気で。元気すぎる気もするけど、あの人らしいと思った。 陵南との練習試合で負けてしまった。 仙道という選手に。 次は必ずあいつに勝つ。そう思って練習量を増やしていった。 部活が終わったあとも納得がいくまでれんしゅうをするようになったから、が稽古に来る日も、俺が帰ったときにはは居なくて。 学校でも声を掛けようと思ってもあいつは友人たちと楽しそうにしているから、その邪魔はしないほうがいいだろうって思って結局声を掛けてない。 中学のときは、一応が稽古に来る日はあまり遅くならないようにしていたから今までこんなに話をしなかったことはないから少しだけ落ち着かなかった。 でも、それ以上に勝ちたい気持ちのほうが優っていたから、練習に打ち込んでいた。 放課後、部活中の休憩時間に、少し体育館を出ると、その裏から声がした。 聞きなれた女の声と、全然知らない男の声。 「あー、先輩。悪いんですけど...」 凄く面倒くさそうにそう言ったのは女の方。 「何でだよ」 少し苛立ちを含んだ男の声に 「いや。面倒くさそうだから」 とあっけらかんと答えた女。 「な!?」 そう言って足音がしたけど、すぐに「いてててて!!」と悲鳴に近い男の訴えが聞こえる。 「じゃあ、これで」 そう言って女はその場を去ってこちらに向かってきた。 俺に気付くとその女、つまりは 「よっす!」 と一言。 「おう」 と俺も返す。 何事もなかったかのように去っていくの背中を見送った。久しぶりの会話がそれだけだった。 は護身術を習っていたから、こういう相手に強いってのはわかってたからそういうのには全く驚かなかったけど、断ることに慣れてるアイツは俺の知らないだと思ってしまった。 体育館の中からキャプテンの集合の声が聞こえて体育館に戻った。 数ヶ月前までは知らないことが当たり前で、俺の知らないの一面を知ることが少なからず楽しかった。 けど、さっきのには驚いた。 驚いたと言うよりも、混乱した。そんな感じだ。 そのまま部活はいつもどおりだったけど、それが終わったあと、どうも集中できなかったからいつもよりも早く切り上げた。 チャリ置き場に向かう途中、校舎の影から足が見えた。誰かが階段に座って足を伸ばしているんだろう。 それでも、この時間まで残ってる生徒は少なく、珍しいと思う。 何だ...? 近づいてみると、それは紛れもなくで、図太い神経ゆえか寝ている。 俺は溜息を吐いて、 「おい」 と言いながら鞄を軽くの頭にぶつけた。 「いっ!」 顔を歪めて俺の鞄が当たった頭を抑えながら目を開く。 「信じらんない!か弱い女の子の頭を鞄で叩く?!」 「何が、『か弱い女の子』だ。どあほう」 「お姫様はカッコイイ王子様のキスで目覚めると言うのに。私は誰かさんの鞄で頭を叩かれての目覚め...」 そう言いながらは深い溜息を吐いた。 そんなことを言うなら、と思って膝をついてに顔を近づけてみると、 「うわぁ!!」 と叫びながら凄い勢いでは後ずさる。 「ななな、何する気よ!!」 「何だよ、キスしてほしかったんだろ」 「エロい!スケベ!!変態!!!」 顔を真っ赤にしてそう叫ぶ。 「まあ、そもそもはお姫様ってガラじゃねぇもんな」 「楓だって王子ってガラじゃないでしょ!!」 指さしてそう言うは未だ顔が赤い。 「顔が赤いぞ」 「うっさい!流川楓は無口でクールとか言ってるやつらに今のアナタを見せやりたいわ!」 ムキになってそう言ってるが何だか哀れに思えて、 「で、お前は何で此処で寝てたんだよ」 と話を変えた。 「ん?ああ、楓を待ってたの」と言って時計を見たは「意外と早いんだね、今日は」と笑いながら見上げてきた。 のつけている時計を見て、初めて気がついた。 「それ...」 「ん?ああ、この時計?先生が高校の入学祝にくれたの」 と言って嬉しそうに笑った。 俺も同じものをお袋から貰った。まあ、俺のはメンズだけど。 「で、さ。話を戻すんだけど。もう帰るんだよね?」 「ああ」 「後ろ乗っけて帰って。駅まででいいから」 そんなことを言い出す。 「お前のは?」 もチャリ通だ。 「昨日の帰りにパンクしてさ。今日はお母さんに自転車屋さんに出してもらってるはずだから、今日は電車だったんだよ」 そう言う。 なるほど... 「今日は早いし、家まで送ってやるよ」 そう言うと、 「お?意外に気が利くねぇ、流川君!」 とか言った。 途中で捨てて帰ってやろうか... そう思ったけど、やめておいてやることにした。 |
桜風
07.8.13
ブラウザバックでお戻りください