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昨日の帰りに自転車の前輪がパンクした。

ツイテナイ。

それでも、バイトには行かなくてはならなくて、パンクしている自転車を無理に漕いでバイト先へ。

そして、やっぱり無理に漕いで家に帰った。

朝、お母さんに自転車の修理をお願いして家を出る。

いつもの時間に出たから余裕で遅刻。

まあ、気にしない。


昼休憩に、先輩に声を掛けられて放課後に体育館の裏へ行く羽目になった。

体育館の裏って、あんま碌な事がない。

行ってみると声を掛けてきた先輩ではない男の人が立っている。

何だ、コイツ...

例によって例の如く。

私は何だか勘違いされやすいらしく、品行方正ではない先輩に好かれやすいという統計が出ている。

私はいたって真面目だと思っているのだが、その先輩たちにしてみれば似た者の匂いがするようだ...

そりゃ、時々授業をサボったり、遅刻をしても大して気にしないし...

「でさ、。俺と付き合わねぇ?」

でさって何さ!?何、その接頭語!!

「あー、先輩。悪いんですけど...」

凄く面倒くさい。

「何でだよ」

少し苛立ちを含んだ声を出す目の前の先輩に

「いや。面倒くさそうだから」

と今の心境を告げた。

「な!?」

と言って彼は怒りで顔を真っ赤にして向かってきた。私の腕を取ろうと手を伸ばす。

その手を掴んで捻り上げたら「いてててて!!」と悲鳴のような声を上げた。

「じゃあ、これで」

手を離しても彼は蹲って肩を抑えている。

体育館の角を曲がると、楓が居た。一瞬心臓が飛び出るかと思った。

「よっす!」

と冷静を装って一言。

「おう」

久しぶりの会話はそれだけで終わらせた。

何となく、楓に見られていたのかもしれないって思うと少しだけ居心地が悪くてすぐにその場を去っていきたかった。


最近、楓と話をしていない。

姿すら、殆ど見てない気がする。

私にもクラスに友達が出来て、その友達と話をしていることが多いから朝も自分の席に居ないし、華道のお稽古に行っても私が帰るまでに楓は帰ってこない。

中学のときまでは、週に1回の習い事の日は楓は帰ってくるのが早かったと思う。

だから、いつも話をしてたし、こんなに話さない時間が長かったことはない。


駐輪場まで行って、自分の自転車がないことを思い出す。

遅いよ、私!!

今日はバイトがないし、暇だし。

仕方ないから待っておこうって思った。


駐輪場へ行くのに必ず通る校舎の出入り口がある。

その前に座ってボーっとしてたら意識が段々落ちていく。

気持ちよく意識を手放しかけたところで何かが聞こえて、頭に衝撃が走る。

「いっ!」

頭を抑えながら目を開く。目の前には私の待ち人でこの衝撃を与えた犯人の流川楓。

「信じらんない!か弱い女の子の頭を鞄で叩く?!」

「何が、『か弱い女の子』だ。どあほう」

どあほうとか言いやがったな!?

「お姫様はカッコイイ王子様のキスで目覚めると言うのに。私は誰かさんの鞄で頭を叩かれての目覚め...」

そう言いながら深い溜息を吐いた。別に王子のキスで目覚めたいとか思ったことないけど、でも頭を叩かれて起きたいとも思ったことはない。

突然楓の顔が私の目の前に現れ、信じられないことにそれが近づいてくる。

「うわぁ!!」

と叫びながら楓から距離を取る。

「ななな、何する気よ!!」

「何だよ、キスしてほしかったんだろ」

しれっとそんなことを言う。

「エロい!スケベ!!変態!!!」

みなさーん!流川楓親衛隊のみなさーん!本当のコイツはこんなですよーーー!!

声を大にして訴えたい...

「まあ、そもそもはお姫様ってガラじゃねぇもんな」

「楓だって王子ってガラじゃないでしょ!!」

指さしてそう言うと

「顔が赤いぞ」

と何だか小馬鹿にした声でそう言う。ムカつく〜!!

「うっさい!流川楓は無口でクールとか言ってるやつらに今のアナタを見せやりたいわ!」

「で、お前は何で此処で寝てたんだよ」

と突然楓が話を変えた。

「ん?ああ、楓を待ってたの」と言って時計を見たらそれほど時間が経っておらず、「意外と早いんだね、今日は」と笑いながら見上げてた。

「それ...」

と私の時計を見ながら楓が呟く。

「ん?ああ、この時計?先生が高校の入学祝にくれたの」

「ふーん」と言って楓は少しの間私の時計を眺めていた。羨ましいんだー?



「で、さ。話を戻すんだけど。もう帰るんだよね?」

「ああ」

「後ろ乗っけて帰って。駅まででいいから」

うわぁ、私って結構控えめな性格ね!!

「お前のは?」

「昨日の帰りにパンクしてさ。今日はお母さんに自転車屋さんに出してもらってるはずだから、今日は電車だったんだよ」

そう言うと

「今日は早いし、家まで送ってやるよ」

と楓にしてはすごーく気の利いたことを言ってきた。

「お?意外に気が利くねぇ、流川君!」

そう言うと楓は深い溜息を吐いて、すたこらと駐輪場へ向かっていった。

おおう!置いてけぼりか!?

私は慌てて楓の背中を追いかけた。










桜風
07.8.17


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