| やはり誰かに自転車を漕いでもらうのは楽で良いわ。 なんて言ってもその漕いでくれてるのが楓で、何とも簡単に自転車を走らせるから私は軽いんだと思ってしまう。 「軽いっしょ?」 調子に乗って聞いてみると 「どあほう。重いに決まってんだろ」 という返事が。 ムカついたんで頭を叩いてやった。 しかし、その日を境に私の平穏な日常は脆くも崩れ去っていった。 翌日、修理済みの自転車を機嫌良く漕いで学校へ向かう。 自転車を置いて校舎に入った頃から何となく周りの雰囲気に違和感を抱く。 「はよー」 クラスメイトに声を掛けても皆ちょっとよそよそしい。 何だ? 自分の机に荷物を置いて、いつもつるんでる子のところに行く。 「おはよー」 「うん...」 そう言って彼女たちは私から去っていった? 何だ、何だ?? ワケのわからないまま自分の席について鞄から少しのノートと教科書を取り出して机の中にしまう。 チクッと小さな痛みを感じて反射で手を引く。見てみると私の指先から赤い血が流れていた。 慎重に机の中のものを出してみると、ノートにカッターの刃が挟まっていた。 うわーお、古典的。 廊下から「おう」と声がした。「うぃー」といつもの返事をしてそのままカッターの刃の除去を行う。 窓の側で、少しだけ気配が残っていたけど、私が顔を上げなかったらそのまま去っていった。 あーあ。失敗したかな?? こんな幼稚で過激なことをする人間の知り合いは居ない。 まあ、思い当たるとすれば、昨日の楓との下校を誰かに目撃されたのかも。 そうだよね、少し早かったもんね... はあ、と溜息を吐く。 高校生になってアンタたち何やってんの!? 誰か分からない犯人に向かってそう同情した。 それから数日陰湿ないじめらしきものが続いた。 それは、私と犯人意外に悟られることのない秘かなものだった。 しかし最近はどうも様子がおかしい。 取り敢えず、クラスでハブにされているのは一目瞭然。というか、誰でも気付く。 それは別に構わない。 けどね。身の危険を感じるそれってどうなの? 階段を下りてるときにわざとぶつかられたり、突然水の入ったバケツが空から降ってきたり。 こういうのって、できれば水だけにしていただきたいのですよ。 物が頭に当たると凄く危険でしょう? 校内で、私に話しかけてくるのは、朝、挨拶だかなんだか分かんない楓の一言と、そして。 「よー!」 同じ和光中出身の桜木軍団だけだった。 「よっス!」 「何だか最近凄い噂聞いたぞ」 「10組の流川?」 あの日以来、楓と私が付き合ってるという的外れな噂が実しやかに囁かれている。 「何だよ、お前知ってんのか!?」 大楠が驚いて聞いてくる。 「まあ、一応。ウチの教室に態々珍獣よろしく私を見に来る人たちが居るから」 そう言うと、水戸が溜息を吐く。 「大丈夫なのか?」 鋭い視線でそう聞いてくる水戸と目を合わせられなくて視線を逸らした。 「まあ、人の噂も75日ってね」 「流川は何も言ってこないのか?」 「知らないじゃない?バスケ命っぽい人だし。まあ、騒ぐと助長しそうだから、大人しく嵐が去るのを待つことにする。心配してくれてアリガト」 そう言ってその場を去った。 弱ってるときに人の優しさは一際沁みますねぇ... そんな日常を送っていたある日。 「ちょっと、。アンタに話があるんだけど」 とえーと、たぶん3年?の先輩たちからお誘いが。 「私は無いので。失礼します」 そう言って帰ろうとしたら 「あたしたちはアンタに話があるっつてんだろ!?」 って髪を引っ張られてそのまま校舎裏へ連れて行かれた。 うわ、ベタな... 「アンタ、凄いムカつくんだけど」 突然そう言われた。 「別に、センパイ方に好かれようと思って生活して無いので私はそれで構わないんですけど...」 そう言うと頬に衝撃が来る。 不意打ちのために口の中を切った。 鉄の臭いが口の中に広がる。 「それがナマイキっつってんでしょ!!」 「楓と別れろよ」 そんなことを言いながら叩いてくる。イテェよ! それに別れるも何も。そもそも私と楓は付き合ってもないんですけど! でも、それを言うと目の前の彼女たちが喜ぶのは目に見えてる。 だから、絶対に言ってやらない。 そして、今気が付いた。 彼女たちの後ろに男子の制服が見える。 ああ、この人って確か。 この間私がごめんなさいした人だ。 ちっせー男。 思わず鼻で笑う。 その男の目を見て。 それに気付いたのか、そいつは私の前にやってきて髪を掴んで 「だから、あの時俺の女になってりゃ良かったんだよ」 と言って笑う。 「はっ!お断りして正解でしたよ、センパイ。こんな女の人の後ろで突っ立ってるだけの男に全く興味が湧きませんので」 そう言うと彼は激昂して手を振り翳した。 衝撃に備えて歯を食いしばり、目を瞑る。 「何やってんだ、アンタら」 聞き覚えのある声がして顔を上げるとそこには無表情に怒った流川楓が居た。 |
桜風
07.8.20
ブラウザバックでお戻りください